地銀がやばい理由は中期経営計画を見れば分かる
地銀の中期経営計画は、その銀行の未来を占う鍵となります。
しかし、中には非現実的な計画を立てる銀行も存在し、そのような銀行は危機が迫っている可能性が高いと考えます。
本記事では、地銀が掲げる戦略の問題点を解説します。
計画の質についても触れながら、地銀の現状と未来の展望を深掘りしていきます。
中期経営計画とは
中期経営計画は、企業や組織が中期的な視点で設定する経営戦略です。
一般的には3年から5年の期間を対象とします。計画では、企業の目指す方向性や達成すべき具体的な目標、それを実現するための戦略が定められます。
中期経営計画の作成には、外部環境の分析(市場のトレンド、競合の動向、経済状況など)や内部資源の評価(財務状況、人材など)が重要です。
企業は自社の強みを生かしつつ、市場の変化に柔軟に対応できる戦略を策定します。
中期経営計画は投資家や従業員など、ステークホルダーへの明確なメッセージとしても機能します。
地銀の中期経営計画の分析
銀行と一般の事業会社が作成する中期経営計画は、基本的な構造や目的において共通点は多く、違いが明確なわけではありません。
ただ、いくつかの点で業種特有の違いは存在します。以下にその主な違いを挙げてみます。
規制の影響
銀行は厳格な金融規制によって事業運営が左右されるため、中期経営計画には規制対応が重要な要素として含まれます。
リスク管理
銀行の中期経営計画では、信用リスク、市場リスク、流動性リスクといった金融リスクの管理が中核的な部分を占めます。
公共性
銀行の中期計画には、その公共性と経済システムにおける中心的な役割を考慮し、コーポレートガバナンスの強化が含まれます。
共通する地方銀行の経営戦略
では、地銀の中期経営計画はどうでしょうか。
地銀の中期経営計画は、共通の戦略構造を有しています。
基本的には、以下の構造となっています。
いずれの地銀も、顧客基盤となる「地域経済への貢献」が柱にあります。
法人向けの戦略は新規先開拓や、既存取引先のメイン化を中心に貸出金の増強、さらに手数料収入を増やすためコンサルティング業務に力を入れることが記載されています。
個人に対しては、パーソナライズされた商品の提案による、利息収入と手数料収入の増加を掲げています。
ただ、これらの戦略を実現するためには人材が必要です。
人材は増やすのではなく、いまの人材を育成するために、DXによる生産性改善がメインシナリオです。
また、補足戦略としてESGへの対応(持続可能な経営)や、リスク管理の強化も中期経営計画に記載されています。
私のような普通のビジネスパーソンでも描けるくらい、地銀の戦略構造は、共通しており、非常に単純です。
正直、読んでも全く面白くありませんし、内容はとても薄っぺらいです。
地銀の戦略:類似の検証
地銀の中期経営計画は、ほぼ同じ内容です。
では、中期経営計画を実際に確認してみましょう。
伊予銀行、滋賀銀行、肥後銀行という営業エリアが異なる地銀の中期経営計画を比較してみます。
地方銀行の中期経営計画は読んでも、全くおもしろくありませんが、一応ダウンロードファイルを添付しておきます。
1.地域経済への貢献
どの銀行も「地域経済の持続的成長・貢献」の重要性を強調しています。
伊予銀行
滋賀銀行
肥後銀行
また、いずれの地銀も以下の点を強調しているのが分かります。
2.DX
金融業界でデジタル化が進んでいるため、テクノロジー活用による効率化や顧客サービス向上を図る戦略の採用をアピールしています。
3.人的資本
従業員の価値を向上させるため、研修プログラムの充実、エンゲージメント向上の施策、ダイバーシティ促進の働きやすい環境整備を強調しています。
4.顧客中心のアプローチ
顧客ニーズの理解を強調し、顧客満足度とロイヤリティ向上のため、サービスや商品のカスタマイズをアピールしています。
5.事業拡大
新規事業への展開、既存サービスの強化、または戦略的な協力関係やパートナーシップを通じた事業拡大の戦略が記載されています。
中身を確認して頂くと分かると思いますが、主要な営業エリアが違うだけで、戦略の根本は同じです。
国有化された「じもとHD」の計画
この文脈で、先日国有化された「じもとHD」の中期経営計画を見てみましょう。
ここから先は
よろしければサポートお願いします。 いただいたサポートは小児がんの娘の治療費に使わせていただきます。