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中学校で習った因数分解をビジネスに活用するには?

前回の記事に引き続き、因数分解について書きます。

今回は因数分解をビジネスの世界に応用する方法についてお話しします。

数学の公式が、実際の利益計算やコスト分析にどのように役立つかを解説していきます。

ビジネスにおける因数分解の重要性を理解することで、今後の意思決定に役立つ洞察を得られるでしょう。


ビジネスでの応用

ビジネスの世界では、利益の増減やコストの変動を計算する際に因数分解を使って問題をシンプルに考えることがあります。

例えば、ある年の利益を次の年の利益と比較する際、平方差の公式を使って「増減の差」を計算すれば、成長予測などを分析できます。


利益の増減の計算

まず、利益の増減を「平方差の公式」を使って分析します。

例として、2022年の利益が500、2023年の利益が625だとします。

もう一度、平方差の公式を以下に示します。

a² - b² = (a + b)(a - b)

2022年と2023年の利益を ab に置き換えると

  • 2022年の利益:a = 500

  • 2023年の利益:b = 625

2023年と2022年の利益の差を平方差の公式に基づいて計算します。

625² - 500² = (625 + 500)(625 - 500)

625² - 500² = 1,125 × 125 = 140,625

計算結果により、2023年と2022年の利益の増加幅(差)は140,625という結果が得られます。


「140,625」は何を表しているのか?

平方差の公式を使った結果として得られる数値(140,625)は、「利益の差」ではなく、利益の2乗の差に該当します。

では、この数値は何を表すのでしょうか?

実は、利益の「2乗の差」は、単純な「利益の差」とは異なる性質を持ちます。

具体的には、この2乗の差は、利益を「面積」として捉えた場合の変化量を表します。

利益の単純な差(625 - 500 = 125) は、実際に利益がどれだけ増加したかを示す数値です。

利益の2乗の差(140,625) は、「平方」を使って、より複雑な変化(例えば、成長の加速度や増加の度合い)を解析するときに役立つ指標です。


利益を「面積」で考えてみる

利益を「面積」として捉えた場合、次のように考えられます。

500² は、1辺が500の正方形の面積です。これは、2022年の利益の2乗を表します。

625² は、1辺が625の正方形の面積です。これは、2023年の利益の2乗を表します。

この2つの「面積」の差を計算すると、140,625 という数値が得られます。これが、利益の単純な差(125)とは異なる点です。

筆者作成

• 緑の正方形は、2022年の利益500²を表しています。
• オレンジの長方形部分は、両者の差である「成長部分」を示しています


因数分解のビジネスへの活用

では、面積の変化がわかったところで、ビジネスに役立つのでしょうか?

たしかに、利益の「2乗(面積)」の変化は、ビジネスにおいて直接的に使われる指標ではないかもしれません。

しかし、数学的な考え方やモデルを利用する際に役立ちます。

以下に、具体的な応用やビジネスにおける考え方を説明します。


競合他社との単純な比較

利益の「単純な差(125)」は、2023年と2022年の利益の「増加額」を示すだけです。

では、競合他社が2022年の利益が1,000、2023年の利益が1,250の場合、どちらが成長性があるといえるのでしょうか


自社
2022年:500の利益
2023年:625の利益

(625 - 500)÷ 500 = 25%

競合他社
2022年:1,000の利益
2023年:1,250の利益

(1,250 - 1,000)÷ 1,000 = 25%


計算すると、両社とも 25%の成長率です。

この場合、単純な成長率だけ見ても、どちらが成長性が高いか判断するのは難しいです。


2乗(面積)の差を使った比較

ここで、2乗の差を使って成長の「勢い」を比較してみましょう。

2乗の差は、単に成長率を見るだけでなく、成長の「加速度」や「勢い」を捉えるために有効です。


自社の利益の2乗の差

自社の利益の2乗の差を平方差の公式で計算します。

625² - 500² = (625 + 500) × (625 - 500)

625² - 500² = 1125 × 125 = 140,625


競合他社の利益の2乗の差

競合他社の利益の2乗の差を同じように計算します。

1250² - 1000² = (1250 + 1000) × (1250 - 1000)

1250² - 1000² = 2250 × 250 = 562,500


自社の2乗の差は140,625で、競合他社の2乗の差は562,500です。

競合他社の2乗の差(面積)が自社の約4倍となっており、これは「成長の勢い」が大きいことを示しています。

この結果は、競合他社が同じ成長率(25%)であっても、成長のインパクトが自社よりも強力である可能性を示唆しています。

 2乗の差を使えば、単なる成長率の比較だけでは見えない「成長の勢い」や「市場に与える影響力」を評価できます。

筆者作成

ビジネスは線ではなく面で考える

因数分解の考え方をビジネスに応用し、「面積」で物事を捉えれば、以下のような分析や洞察が可能になります。

1. 成長の規模とスピードの可視化

面積を使うことで、単なる増加額や成長率だけでは捉えられない、成長の規模やその変化の「勢い」を可視化できます。

たとえば、利益の変化を面積(平方)で捉えると、利益の増加が単なる数字の差以上に、どれだけのインパクトを与えているか、より直感的に理解できるようになります。

多くの分析は、単純に「売上や利益が増えたのか?」としう視点で判断しています。

ただ、実際には点と点を結ぶ線ではなく、成長のスピードや影響力は、面積の変化として捉えるほうが適切だと考えます。


2. 競合他社との比較

面積の比較は、競合他社と自社の成長の違いをよりわかりやすく視覚化できます。

単なる成長率の比較では、規模の違いや成長の勢いが見えにくいですが、面積として捉えれば、競合他社との成長の「ギャップ」が明確になります。

同じ成長率であっても、規模が異なると市場への影響は違います。

面積で捉えると、どの程度の規模感で成長が起きているかが分かり、競争優位性を測る材料として活用できます。


3. 複雑な要因をシンプルに分析

因数分解の考え方は、複雑な要因を分解して分析することに役立ちます。

たとえば、企業の利益の変動を単純な「増減」だけでなく、その成長の要因(売上、コスト、効率性など)を個別に分解し、どの要素が大きく変動しているのかを見つけることが可能です。

コスト削減や売上増加の効果を分解し、それぞれが全体の収益や利益にどのように寄与しているかを定量的に分析できます。


4. リスクとチャンスの見極め

面積で利益や成長を捉えることで、企業の成長が直線的か、急速に加速しているかなど、リスクやチャンスを見極める指標として使えます。

急激に成長している企業は、将来に大きなチャンスがある一方、急成長によるリスク(資源の枯渇や競争の激化)も高くなります。

面積が大きくなる(成長が加速する)ことで、市場シェアの急拡大やリソースへの負担など、リスクを可視化できます。


まとめ

一般的なビジネス分析では、単純な増加額や増加率で十分だと思います。

また、他社や過去のデータと比較すれば、企業の成長性は把握できます。

したがって、単純な増加率を計算し、過去の実績や他社と比較するのはビジネスにおいて基本の分析です。

しかし、2乗の差(平方差)を使えば、単なる成長率などではなく「加速度」などを測定できます。

このため、その成長の「勢い」を理解すると、将来のリスクやチャンスを見極めることができると考えます。

もちろん、今回のケースのように分析は単純ではありません。

ただ、中学校で学んだ因数分解がビジネスにも有効活用できることを皆さんにも知って欲しいと思います。

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Kei | MBA| 元銀行員
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