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地方創生はまやかし:「べき乗の法則」から考えれば、地方は衰退する以外にない

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〜2月11日 11:30

本記事をご覧いただきありがとうございます。

「地方創生」という言葉が世の中に登場してから、すでに数十年が経過しています。

2014年頃に政府が本格的に「地方創生」という旗印を掲げ、移住支援や地域活性化を促進する補助金の投入を進めてきました。

しかし、地方から都市部へと流出する人口の勢いはいまだ止まる気配を見せません。

気がつけば「地方創生」という言葉だけがひとり歩きし、実態はスローガン倒れになっている地域が多いのではないでしょうか。

こうした地方衰退の構造を理解するうえで大きなヒントとなるのが、「冪乗の法則(べき乗則)」です。

自然界や社会現象のさまざまなデータを観察すると「少数の大きな要素が全体の大部分を占め、多数の小さな要素が残りを占める」という分布パターンが繰り返し確認されます。

たとえば地震の規模分布(グーテンベルグ・リヒター則)や企業の売上高上位ランキング、さらには都市の人口分布(ジップの法則)まで、あらゆる現象に「べき乗則」が当てはまることがわかっています。

本記事では、べき乗則の観点から「なぜ都市に人口が集中し、地方が衰退していく構造が生まれるのか」を解説します。

また、具体的な地方創生政策や統計データ、成功事例などにも言及しながら、「このままでは地方は衰退する以外にない」という厳しい現実と、少しでも打開するための処方箋を探ってみました。

できるだけ数学が苦手な方でもイメージしやすいよう、数式は最小限にとどめてわかりやすくまとめました。

ぜひ最後までお読みいただき、今後の日本の将来像を考える一助にしていただければ幸いです。

※なお、こちらの内容は私が大学院で研究したテーマの一部を引用しておりますので有料記事としています。


1. なぜ地方創生はうまくいかないのか?

1-1. 地方創生の現状:スローガン倒れの実態

まず、総務省が公表している人口移動報告(住民基本台帳ベース)を見ると、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)への転入超過は依然として続いています。

2020年以降は新型コロナウイルス感染症の流行を機に「テレワークが普及し、地方回帰が進むのでは?」という期待が若干高まりました。

ところが、蓋を開けてみれば都市圏への人口流入は止まっていません。むしろ、地方部からの若年層の流出は続いている状況です。

地方には、高齢化が顕著に進む地域や、雇用の受け皿が乏しいエリアも少なくありません。

地方が抱える社会保障費の負担や、公的インフラの維持コストは都市部と比べて高くなります。

「人口が少ないからこそ、1人あたりの負担が増える」という負の循環が生じるため、結果的に若年層の流出を招いているのが現状です。


1-2. 「集積の経済」と「スケール効果」

経済学の用語で「集積の経済」や「スケール効果」という用語があります。

これは、ある特定地域に企業や人材がまとまって集まることで、互いのシナジー(相乗効果)が生じ、より高い生産性を生む現象です。

たとえば都市部では、ビジネスの機会や情報交換が活発なので、起業する際にも利点が多く、大企業の本社が集中しやすいというメリットがあります。

アメリカのシリコンバレーなどはその典型でしょう。

集積の経済
企業や人材が近い距離に集まるほどコスト削減やイノベーション創出が進みやすい

スケール効果
事業規模が拡大するほど、一単位あたりの生産コストや運営コストが下がる

これらは都市が発展を続ける原動力でもあり、反対に地方が停滞する要因とも言えます。

つまり「集積の経済」が働く都市のほうが優位に立ちやすい構造は、自然界のべき乗則と本質的に似通った特徴を持っています。


2. べき乗則(冪乗の法則)とは何か?

2-1. べき乗則の基本:大きいものがより大きく、小さいものが多数散在する

べき乗則(Power Law)は、自然界で頻繁に現れる分布パターンの一つです。

たとえば、以下のような現象において観察されます。
• 地震のマグニチュード
• 台風の勢力
• 企業の売上ランキング
• 個人資産の分布
• 都市の人口分布

この分布の特徴は「少数の極端に大きな要素が全体の大部分を占め、多数の小さな要素が残りを占める」という点にあります。

一般に、べき乗則に従う分布は以下の数式で表されます。

$$
P(x) = C \times x^{-\alpha}
$$

$${x}$$:規模や大きさを示す変数
$${P(x)}$$:規模が$${x}$$の要素が持つ確率分布、または影響度
$${c}$$:定数
$${\alpha}$$:べき指数
※$${ \alpha > 0}$$の場合、大きい要素への偏りが強くなる 

この数式から分かるように、 $${x}$$が大きくなるほど、発生頻度(確率)が急激に減少することを示しています。

一方で「ごく少数の飛び抜けた存在」が全体に圧倒的な影響を与えるという特性があります。


2-2. 地震の規模分布:グーテンベルグ・リヒター則

べき乗則の代表的な例として、地震の規模と発生頻度の関係を示す「グーテンベルグ・リヒター則(Gutenberg-Richter law)」があります。

これは、マグニチュード( $${M}$$)が 1 上がるごとに、その地震の発生頻度が約 10 分の 1 に減少するという経験則です。

この関係は以下の数式で表されます。

$$
N(M) = 10^{-bM}
$$

$${N(M)}$$:マグニチュード 以上の地震の年間発生回数
$${b}$$:定数(通常$${b≒1}$$ 前後)

この数式が示すように、
大規模地震は非常にまれにしか発生しない
小規模地震は頻繁に発生する

という特性が見られます。

まさに「少数の大きな要素が全体を大きく左右し、多数の小さな要素が残りを埋める」べき乗則の典型例といえます。

筆者作成

2-3. ジップの法則:都市人口の分布

社会現象におけるべき乗則の事例として、「ジップの法則(Zipf’s Law)」があります。

これは、都市の人口分布に見られる法則であり、少数の巨大都市が圧倒的に人口を抱え、それ以外の小規模都市が多数存在するという構造を示します。

都市の人口分布は以下のようなべき乗則に従います。

$$
N(P) = k \times P^{-\alpha}
$$

$${P}$$:都市の人口規模
$${N(P)}$$:人口規模が の都市の数
$${k,\alpha}$$:定数
$${ \alpha > 0}$$の場合、大都市ほど数が少なくなる傾向が強い

日本の例で考えると、
東京や横浜、大阪といったメガシティの数は極端に少ない
一方で、地方中核都市や人口数万人以下の都市は多数存在する

という人口分布の特徴が見て取れます。

このように、「少数の大都市が人口・経済力を独占し、多数の地方都市が相対的に小規模な影響力を持つ」という構造こそが、地方創生の困難さを示す根本的な要因であることがわかります。


3. べき乗則から読む:地方衰退の構造的原因

3-1. 「大きいところはより大きく」なる力学

べき乗則を通じて見えてくるのは、都市部に集中し始めた人口や資本はさらに加速度的に都市を肥大化させ、地方を相対的に衰退させるという力学です。

これを経済学的には「マタイ効果(豊かな者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる)」と呼ぶこともあります。

要するに、一度優位に立った者(都市)は、さらにスケールメリットと集積の経済を享受し、後発者(地方)は苦戦を強いられる構図が固定化しやすいというものです。

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