「特別支援教育のさんすう〜一人ひとりの学びを支える〜」 小笠 毅
本書の整理
「量」から「数」への変化が算数の始まり
子どもたちは、「長い・短い(距離)」「大きい・小さい(面積)」「上・下(高さ)」といった「量」の比較から「数」の概念へと移行していく。そのため、小学1年生では「数についての感覚を豊かに」し、「数の意味や表し方について理解する」という目標が定められている。そのための学習内容として、作業的な操作を重視している。そのため、量を数として考えるための半抽象化のステップとして、ブロックを活用した1対1対応から数の学習が始まる。
数を数えるということ
数には集合の大きさを表す「集合数」とものの順番を表す「順番数」という2つの意味がある。日本語では、この2つの違いが曖昧であるため指導に工夫が求められる。また、日本語では読み方を複数持っている数があることにも留意が必要である。
0の意味
0は、「あったものがなくなる」と「あるべきところにない」といった2つの意味を持っている。「あったものがなくなる」は、具体物を使って0の概念を実感させることで身につけていく。「あるべきところにない」は、位取りの学習で出てくる0の役割に関連している。例えば、101などは「十の位に何もない」ことを示す。この場合の0は位置を保つために使われる記号であり、大きな数や小数の学習で重要な役割を果たす。
大きい数
半抽象化の中で大きな数を学ばせていくためには、タイルを使って位取りの学習を進めていく。例えば、1が10個集まるとくらいが変わるということをタイルを活用して学習していく。
たし算の話
たし算は、「合併」と「添加」の2つの意味を持っている。「合併」は、同じものを同時に動かして合体させることである。「添加」は、元あるものに付け加えることである。指導の手順として、まずは答えが5までのまとまりの足し算を横書きで学んでいく。次に、答えが9までの足し算を縦書きで学ぶ。そして、答えが10以上になる1桁のたし算を縦書きで学び・・・と繰り上がりの概念がわかるようにタイルを使って学習を進めていく。
ひき算話
ひき算は、「求残」と「求差」の2つの意味を持っている。日常生活では、「求残」の方がよく使われるので、「求残」をしっかり押さえてから求差に進む。指導の手順は、たし算と同様で縦書きに慣れていくように進めていく。また、ひき算の計算方法は3パターンに分かれる。1つ目は、一の位の計算で引けないときに十の位の数を借りてくるという「減加法」である。2つ目は、一の位の計算で引けないときにひく数とひかれる数を入れ替えて計算し、その答えを十の位からひくという「減減法」である。3つ目は、14-8という計算を、「8にあといくつ足すと14になる?」といった考え方で計算する「補加法」である。
かけ算の話
かけ算の意味は、同じ数を加えるという累加の簡潔な計算方法の表現である。そのため、かけ算を指導するときは(1あたり)×(いくつ分)=(全体の量)のイメージを自分で持てるように絵や具体物を用いて指導していくことが大切である。また、しばしば使われる「倍」という表現は子どもたちにとって理解しづらいものであることに留意しておく。
わり算の話
わり算は、「等分除」と「包含除」の2つの意味を持つ。「等分除」は、ある数を等分したときにできる一つ分の大きさを計算するもの。「包含除」は、ある数がもう一方の数のいくつ分か計算するもの。日常生活では、等分除の方を使っている経験が多いため、指導では等分除から始めてわり算の意味をしっかりと伝えていく必要がある。そして、わり算を指導する時は筆算を用いて指導する方が、多くの場合に応用することができる。また、商の見つけ方は、片手で被除数を隠すことで、除数で割れる数を探す「片手でポン」、商の位置がわかったら◯をしてマークする「最初に◯」、除数の一の位と丸の下の数を隠すことで仮商が十の位で立てられるようになる「両手でポン」の指導法を参考に楽しくわかりやすく指導する。
単位あたりの話
単位あたりの基礎は、小学校2・3年生のときに習うかけ算とわり算である。2つの計算の共通点は「1あたりの量」「いくつ分」「全体量」と、3つの要素があることである。この時の指導で重要な点として、かけ算を指導する際に、同数異加(異なる助数詞や単位をかけて計算する、異なる量をかけて答えを求めること)を説明をすること。わり算を指導する際に、ある数量がもう一方の数量のいくつ分であるかを求める場合(包含除)【(全体量)÷(1あたりの分)=(いくつ分)】と、ある数量を当分したときにできる1つ分の大きさを求める場合(等分除)【(全体量)÷(いくつ分)=(1あたりの分)】を説明することである。 前述の説明を行うための具体的な指導法として、以下の3つの用法を面積図を使って教えることが本書で示されている。
・ 単位あたり量 (速度) = 全体量 (距離) ÷ いくつ分 (時間)
・ 全体量(距離) = 単位あたり量(速度) × いくつ分(時間)
・ いくつ分(時間)= 全体量(距離)÷ 単位あたり量(速度)
さらに、家庭での反復が大切であり、感覚を使って日々の繰り返しの中で定着を図っていく。前述の3つの用法を習得するために、速さの学習から始め、面積図を活用して何算を活用するのか子ども自身で気づくことができるようになっていく。この単位あたり量の理解が深まることで、数学の見方や考え方が広がり、比例などの問題も解けるようになり、数学の目標達成に近づくことができます。
まとめ
子どもたちが「数」の概念を理解していく段階、各計算法の重要な意味についての理解を深めることができた。子どもたち一人ひとりの理解度に応じたきめ細やかな指導やどこにつまずきが生じているのか、しっかりと観察しその課題解決に向けた手立てを講じていく必要性を感じさせてもらえる一冊だった。
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