京都競馬天皇賞・春最終戦 事前見解
週末の京都競馬の日曜メインレースは伝統の一戦天皇賞(春)です。個人的に春天は長丁場のG1ということもあって、大逃げアリ、直線のたたき合いアリの様々な見所がある、一番楽しみにしているレースであります。そんな数々のドラマが繰り広げられた今の京都競馬場で春天が行われるのが今年をもって最後となりますが、非常に残念なことに、今もなお続くコロナ禍の影響によって無観客による開催が決定しました。それでもレース自体は今も変わりなく開催されるわけであって、そんな競馬が今も無事に続いている現実があるのも関係者の方々の多大なる努力があってのことです。テレビ越しでも競馬を楽しめている毎日に感謝をしつつ、3年後の今頃、新生京都競馬場で満員のスタンドの下、天皇賞を観戦できる瞬間を楽しみに待ちましょう。
それでは、今年の天皇賞(春)の各馬の考察参ります。
(評価順にA~G 目安:A鉄板軸候補~C連軸候補~E押さえ~F軽視 ~G消し候補)
G メロディーレーン そもそも春天に牝馬が参戦することが珍しいのだが、これまでの長い天皇賞春の歴史の中で、牝馬の総成績は(1,2,2,65)と壊滅的。勝ち馬は1953年の出走馬であり、最後に馬券に絡んだ年が1955年と60年以上前の出来事。それどころか、最後に牝馬が掲示板に乗ったのが1965年であり、なんと50年以上も牝馬の着外がひたすら続いている状況。300kg台前半という馬体重ながら菊花賞5着など様々な前例を覆し続けている本馬だが、さすがに最長距離のG1であるこの舞台では厳しすぎる。
G シルヴァンシャー ディープインパクト×アゼリという超良血馬で、昨年京都大賞典3着と長距離適性を見せてきた状態で、この春天が今年初出走。しかし長期休み明けという過程は、この春天に限っては相当相性が悪く、近10年で今回が年明け1戦目の馬は1頭たりとも馬券になっていない。更に、鞍上M.デムーロ騎手は春天5回出走で1度も3着以内がない。昨年エタリオウで後方待機して届かず4着は記憶に新しい。悪条件の重なる今回は好走確率が相当に低い。
Fモズベッロ 日経新春杯勝利、日経賞2着と2000m以上の中距離レースで腕を上げてきた台風の目となり得る4歳馬。しかし血統的にも3000m超えの長距離が向くとは考えにくく、脚質的にも末脚に頼る面があるので、春天との相性は悪いタイプ。京都成績3勝と絶好枠1番枠でどこまで浮上できるかがカギだが、ここまでの長距離戦になると、コース適性はあまり関係はなく、1番枠も先行タイプならでは活かせる利ではあるので、この馬にとってはあまり意味は無く…
Fキセキ 前走阪神大賞典で絶望的な大出遅れをかましてしまい、道中ヤケクソ気味にマクリつつ先頭に立つも直線ではいとも簡単に力尽きてしまい敗退。日に日にこの出遅れ癖はひどくなっているようで、振り返れば昨年有馬記念でも出遅れてしまい後からリカバーするものの5着。かつて一昨年秋~昨年春にこの馬を輝かせた逃げの手がすっかり鳴りを潜めてしまい、この馬の今の状態ではその当時と同じ競馬をすることは難しくなっている。今回は武豊Jに乗り替わりとなるが、何度も天皇盾を手に入れた名手をもってしてもこの癖を完全に矯正させることは難しく、素質を高く評価されながら現状は非常に脆さを同居させている状態。且つ春天参戦は6歳である今年が初参戦なので、長距離適性があるとはみなされていないようで、菊花賞勝利の実績があったとしても当時の条件は豪雨による極悪馬場なのでそれが今回の好走に直結するとは考えづらい。
F ユーキャンスマイル 昨年はダイヤモンドS勝ちからの直行で5着、そして今年は阪神大賞典勝ちからの参戦とパワーアップして帰ってきた状況。しかしこの馬の最大のウィークポイントはこの馬がキングカメハメハ産駒ということであることで、キングカメハメハ産駒は春天総成績のべ14回出走で一度も3着以内に入ったことがなく、過去トゥザグローリー、ローズキングダム、レーヴミストラル、ミッキーロケットなど諸々その相性の悪さに跳ね返されてきた。これは偶然ではなく、キンカメは長距離はNGなんだと割り切らなければいけない事実なのである。では前走の阪神大賞典や昨年のダイヤモンドSはなんだったんだという意見があると思うが、阪神大賞典は中距離戦らしく上がり勝負になりやすいレース形態であるので、上がりを持つこの馬ならこの条件は得意中の得意。昨年ダイヤモンドSも上がり3F33秒台が出ているあたり、同じように瞬発力勝負のレースだった。春天はそれらのレースと異なり3200mを常にスピードを持続させながら走りきるスタミナが要求されるパターンになりやすく、キンカメ産駒は総じてこのスタミナという部分が最大の弱点となっている。この馬の本来の守備範囲は、超ハイレベルレース昨年の秋の天皇賞で上がり最速小差の4着に来たように、直線の長い2000~2400mのコースであり、狙うタイミングはここではない。
Dスティッフェリオ 個人的には有馬記念でも本命にしてきた、個性的な逃げ馬が春天にもやってきたというところだが、今回はそもそも逃げるのかどうかが微妙なところで… 鞍上は初騎乗の北村友Jという訳だが、先行させるパターンは多いものの、腹を括った逃げ切りはどうなのかという印象。後述するがほとんどの各馬はスタミナ勝負に持ち込みたいわけで、そのためには一昔前までの春天では必ず発生していた大逃げや先頭が目まぐるしく変わりまくる乱ペースが必要。この馬にはオールカマーで見せた追っつけて後続に脚を使わせるスロー逃げもできれば、有馬記念で一撃を賭けた(実質2番手)大逃げもできる、あらゆる逃げの手を打てる自在の能力がある。もし大逃げのような形がハマるとするなら、ステイゴールド産駒らしく3000m程度の長距離もスタミナを持続させることができ、かつてビートブラックが見せたような大差逃げ切り一発もあるのではないかと楽しみにさせてくれる存在である。
Dミライヘノツバサ 前走ダイヤモンドSで全くのノーマークながら勝利し、一気に今回の注目馬の一角に上り詰めた訳であるが、元々クラシックにも出走し、4歳時AJCC3着、日経賞2着という実績があるバリバリの重賞クラスの馬。屈腱炎を発症し1年以上棒に振ってしまったが、この当時はもしこの後順調に行ってたとするならどこまで成長していたのかと思わせる充実振りだった。故障による長期離脱の末7歳で掴んだ重賞タイトルであるが、このダイヤモンドSの内容が相当なハイレベルで、3分31秒2というタイムは同レースでの近10年の記録の中で2番目に速い時計。またペースを詳しく見ると、初めの1Fを除く全てのラップで1F辺りのラップが13秒を切っており、4角にさしかかるまではむしろ11秒台をマークするほどのペース。その分ラスト上がり3Fは37秒台と相応にかかっているが、このようなラップの推移は非常にスタミナを問われる中身になっていて、実は17年以前の春天のレース内容によく見られる傾向となっている。このレースを中団10番手から差しきって勝っているのでフロック勝ちでは全くない強い勝ち方であり、今回も上がり勝負に持ち込ませない純粋スタミナ勝負の下であれば、一気に上位候補にのし上がれる。
C.メイショウテンゲン ダイヤモンドSではミライヘノツバサと僅差の2着、阪神大賞典では3着、更に言うと年明け前のステイヤーSで4着と3000mオーバーの重賞をたて続けに好走し、無尽蔵のスタミナを証明して見せた。上がりの末脚を問わない消耗戦になったら、実力を出し切りさえすればこの馬の右に出る者はいなく、とにかく同じペースで何キロも走り続けそうな脚力が武器。ただこの馬、クラシックで露呈したポジションを取れないという点が最大の弱点であり、これは先行力が問われる春天では致命的。菊花賞からある程度改善はされてきたが、いかんせん気性が幼く、馬がどのくらいレースを理解しているのかどうかという要素から問題となってしまう。また菊花賞12着という戦績もネックで、近10年でどんな穴馬でも3着以内に来た馬は11年ヒルノダムール、昨年のグローリーヴェイズを除き全て、菊花賞に出走していたら必ず3着以内に好走している。この馬は菊花賞以降の急激な成長力でこのデータを打ち消す力はあると思うが、全幅の信頼を置けるところまで行けるかどうか。勝ちに行くならみんながアッと驚く先行策をうつべし。
Cエタリオウ 1勝馬ながら、ダービー4着、菊花賞2着と実績を残し続けている実力馬。昨年の春天では2番人気に支持されながら、4着に敗退してしまった。ただし、メンバー内で生粋のステイヤーといったらステイゴールド産駒のこの馬であり、今年においても実績上位の立場であることは変わりない。最も昨年の敗因は騎乗とハッキリしており、スローの展開ながら3角まで離れた最後方でずっと控え続け、マクリだした頃には前との差は相当に開いて手遅れ。それでも3着と小差のところまで巻き返したのはこの馬の素質によるものであり、ステイヤー適性は1年たった今でも健在。前走の日経賞6着はこれまで慣れていない先行策で競馬をして僅差に敗れたものであり、この脚質転換がまさに今回を目標にしたものだと判断出来る。今回の鞍上は川田J。川田Jも春天では結果を残せていないが、春天相性最悪のM.デムーロJからの乗り替わりは少なからずプラスで、先行パターンが多いこの騎手の下なら脚質転換がドンピシャにはまる可能性アリ。2番枠という絶好枠を引いたのもあり、この枠を活かして先行させたら勝ち切りまである。
フィエールマン→土曜最終見解で結論は述べます。 昨年覇者かつ、今回の1番人気候補馬であるが、予想のカギを握るのがこの馬の取捨であると判断できる。この馬が勝った昨年の春天は、長距離戦ながら上がり3Fを34秒で走りきるような完全な末脚勝負に収まった内容であり、この馬らしいキレキレの末脚でグローリーヴェイズを除く他馬を突き放した。このレースもペースを分析すると、初めの1000mは1分を切るタイムで通過したが、1600~2000m付近すなわち1、2角通過のタイミングで1F13秒後半まで極端に緩む部分が発生しており、実質スローペースのようなレースとなっている。この遅くなったタイミングで中団で脚を溜めているので、無駄な体力を消費することなく最後の直線まで瞬発力を維持することができる。そして、フィエールマンがはじめてG1を制した3000mの菊花賞でもこのラップ推移が発生しており、このレースも1600m付近で1F13秒台後半まで緩む部分があるので、距離は別々ながら全く同じようなレース内容の下でこの馬は勝ちきったといえる。フィエールマンとしては、3000mを超える道中、中盤が緩むことによってペースが落ち着く展開を希望しており、その展開がかなうことによってラスト1000m程度の末脚勝負に持ち込むことを目論んでいる。このパターンのペースになってしまうと、おそらくどの馬もフィエールマンに勝つことはできない。よってフィエールマン以外の馬が浮上するためには、フィエールマンに有利ではない展開、すなわちレースの中盤を一切緩めず4角までハイペースで流していく展開に持ち込むしかないのである。現時点ではフィエールマンの走法、春天と菊花賞以外の戦績などを見るからに生粋のステイヤーとは言えないと考える。誰かしらが大逃げなどして乱ペースに持ち込んでスタミナ勝負に持ち込めれば、フィエールマンに隙が生まれる可能性があるのではないか。現状、こういうスタミナ決着をこの馬は経験していないので適性がどこまであるかはわからない。しかし、フィエールマンを負かしにいくならスタミナ勝負に持ち込む以外ないと見る。果たしてどの馬がペースを作るかどうか。それによってどの馬が浮上するか大きく変動すると思う。