一級電気工事施工管理技術検定の攻略に向けて

 一級電気工事施工管理技術検定を受験するにあたって、独学でできるだけコストを掛けずに、合格を目指す方針や対策、勉強方法について解説することにしました。
 これから資格取得を目指す方にとって、有益な情報となればありがたいです。

※第二次検定対策記事の公開と共に、一部内容を再編しました。


はじめに

自己紹介

 はじめまして。

 恐らくこの記事を読みに来られた方の多くは、必要に迫られて資格を取得したい工事請負側の建設業の立場の方が多いのではないかと思います。

 僕自身は電気工事自体が本業でなく、経験が浅いことを認めざるを得ません。でも、きちんとキャリアプランを作ったうえで上で学習プランを立て、試験の傾向を調査し効率よく取り組んだ結果、僕のようなよわよわプレイヤーでも取得できたのは大きな自信になりました。

 試験対策というのは、難しい問題を解くことに非ず、目標までの時間配分やエネルギー配分を含めたプロセス管理が重要であり、多くの人はその俯瞰した視点が欠けているがために、取れるべくして取れるはずの試験に失敗していると考えられます。
 そこで、自分が試験に向かった際の手法をベースに、検定試験をゲームのように見立て、攻略法という形で伝えることにしました。何故、ゲームかというと、自信を客観視するのに可視化しやすい概念だと考えたからです。

 結果としてはそれがうまくいき、職場でも同僚や上司、建設工事がメインの他部署の方々、一部SNSの方から、主に効率の良い方法で学習や資格取得に際しての助言を求められるようになりました。
 その後もポツポツと受験指導をしてきましたが、気づけば相談も多岐にわたっており、またその内容も今回の令和3年度の試験改正に伴い修正する必要も出てきたので、一連の内容としてまとめようと思っていたところでしたので思い切って記事として執筆することに致しました。



資格取得の行動計画

資格の概要

 電気工事施工管理技術検定は、電気工事の現場で、工程管理や施工に際しての作業の管理、安全管理や品質管理を担う電気工事施工管理技士として工事の監督を行うための資格です。
 同種の資格である建築工事施工管理技士、土木工事施工管理技士等をご存じの場合は、その電気工事バージョンというイメージで間違いないかと思います。

 この資格は一級と二級に分かれており、二級では一般建設業の電気工事現場における主任技術者として工事管理業務に従事することができます。一級では更に特定建設業の営業所の主任技術者になることができます。

 また、一級の場合は、監理技術者講習を受講することで、外注総額4000万円以上となる工事を発注者から直接請け負う場合に監理技術者として従事することができるようになります。

 なお、令和3年度から電気工事施工管理技術検定の内容が一部修正され、第一次検定(旧学科試験)、第二次検定(旧実技試験)に名称が変更され、第一次検定では旧実技試験の一部が、第二次検定では旧学科試験の一部が出題されるようになりました。

 また、人材の枯渇という実情を反映し、新資格が創設されました。各技術検定の第一次検定合格者を新たに施工管理技士補として認定されることになりました。施工管理技士補は、監理技術者の指導の下、現場で専任の監理業務の補佐を行えるようになり、監理技術者は兼務が可能になるというものです。

 一方で、試験自体は難化しています。第一次検定、第二次検定とも出題範囲が広がっており、監理技術者になるための難易度が上がっていると考えられます。

経営者側から見たときの価値

 経営者側から見たときの今回の改正の影響を考えてみましょう。
 これまでは監理技術者が工事の本数だけ必要でした。しかし、現在は一人いれば、技士補を配置するだけで現場を任せられるため、実質的に人材の獲得コストが下がったという見方ができるでしょう。
 企業内での取得促進については第一次検定まででも考査対象に加えることができ、取得を促しやすくなった点は大きいと思います。

 調査時点でのお話になりますが、電験三種よりも転職市場では高年棒が期待できるようです。制度が変更になった現在、転職市場でどの程度有効なのかは今後の展開を見守る必要がありそうですが、年俸制や転職用のスキルアップを目的とした戦略であれば、人員の確保が難しくなっている監理技術者まで目指すのが得策であると考えられます。
 採用~数年の間に第一次検定、3~5年間の実務経験を積んだ後に第二次検定、昇格もしくは転職といったルートをイメージするのが良いと思います。

電気系資格のキャリアプラン

 多くの人は、当面は同じ会社に在籍し、関連する資格を取得しつつ自己研鑽に励むものと思います。残念ながら僕はやや外側のコースを走っていますが、今回の記事は皆さんの目線で書いております。
 キャリアプランを設計するにあたり、まず同じ電気系の資格を比較してみます。電気系の資格としては電気工事士や電験三種などがあります。電気工事士の二次試験における実技は、安全な施工や品質の管理よりは、作業スピード、時間管理の方が重要でやや競技性の高い試験条件ですし、電験三種は理論問題や計算問題など学術的知識が試される試験です。

 各試験が何を重視しているかを大雑把に表すと、

 電気工事士・・・・・・・・技術
 電気主任技術者・・・・・・知識
 電気工事施工管理技士・・・経験

 といった感じです。
キャリアプランを立てるためには、これらをどのような順序で取得するか、というキャリアパス(ある一定の地位に就くまでの経路のこと)について予め検討しておく必要があります。

 第一種電気工事士を先に取得していると、実務経験報告書が免除されます。実務経験年数がどうしても足りない場合は、第一種電気工事士を先に取得することで、取得期間を短縮することができます。
 また、第三種電気主任技術者(電験三種)を所有していて、5年間の電気の実務にあたっている場合は第一種電気工事士を申請により取得することができます。
 これらを総合したキャリアパスとして、

電験三種取得→5年経過→第一種電工取得→電気工事施工管理技士

 の順で取得すれば、2回の試験で電気系資格を三つ網羅することができますし、実務経験が極端に少なくても無駄なく電気工事施工管理技士を取得することができます。

 とはいえ、先に述べたように電験三種はこの中では最も難易度が高いです。現場における技術的要求という面から見ると、電工については概ね第二種電気工事士(+認定電気工事士)があれば十分ですし、学習的ステップアップとして見ても、実務経験を積み電気工事施工管理、経験を生かして技術研鑽、総合的な能力を高めて電験三種取得、5年後に第一種電気工事士申請というのが最も学習効率が高く合理的なキャリアパスだと私は思います。

(第二種電気工事士→)実務経験→電気工事施工管理技士→
   (監理技術者講習→)電験三種取得→5年経過→第一種電工取得

 総合的に見ると、電気工事施工管理技士は経験を生かしてスコアに繋げられるという点で、業務と並行して学習できるため、取得しやすい資格であり習得の最初のステップに向いているといえます。
 他業種の内容も含まれているため、建設工事の現場での自身の役割の理解度が飛躍的に上がります。

というわけで、この資格は電機系職種で経験を積んだ人向けであり、この記事の役割としては、
 ・実務経験はあるのに、忙しすぎて試験に間に合わない!
 ・転職を有利にしたく、業務と並行して効率よく取得するんや!
 ・新人なのでわからないことが多い!おせーて!
といった方向けになるかと思います。

資格取得は大事な時間を消費します。

自分の適性や職種、業種に応じてなるべく効率の良いキャリアパスを選択し、プランを組み立てると良いでしょう。

試験の傾向と対策

検定試験の傾向

 まずは、試験の傾向について調査しましょう。
 僕が一級電気工事施工管理技術検定を受験したとき、建築工事や土木工事の施工管理技術検定に比べ電気工事施工管理技術検定はマイナーで余りにも試験に関しての情報が少なかったと思います。
 もちろん、いくつかの団体や協会の主催する勉強会や講習会等はあったのですが、会社がいつでも経費を支給してくれるわけではないし、かといって自腹で参加するには結構高額で懐も痛むし、ということを考慮すると独学で頑張らざるを得ないというのが実情でした。
 そこで、最初に試験の出題分野やその傾向について調査することにしました。

 試験の特徴ですが、まずこの検定試験は受験資格の審査が一番厳しいといえます。一般に、受験資格や資格証の発効条件として実務経験が問われるのはよくありますが、往々にして就職後の所属期間を問われることが殆どです。しかし、この技術検定では実際に担当した工事について正確に日単位で期間を算定して受験条件を満たさなければなりません。
 また、二次検定では実務経験を題材とした出題があり十分な経験がない場合、二次検定の設問に対する回答が困難だからです。
 過去に、虚偽の経歴により実務経験を満たさない状況で不正取得をした例があったため、現在は非常に厳しい審査が為されているようです。
 当たり前ですが、実務経験だけは自分で積むしかないのです。しかしながら、経験を十分に積んでいる方ならば、計画を立てしっかり取り組めば、決 して合格できない資格ではありません。
 経験記述に記載するための内容は、自身の経験に基づく内容のものが必要ですが、問われる内容は概ね決まっています。記述式ですが、予め想定される質問に対して回答を用意しておく就職面接対策スタイルが効果的です。

 次に、学科試験ですが、電験三種と同様の理論問題や計算問題も出題されますが、選択問題は回避することも可能なため、難易度が極端に高いわけではありません。また、電気工事以外の関連分野からの出題範囲があり、多くの分野から幅広く出題されるイメージです。

 試験の特徴を把握したところで、まずは試験対策を考えていきましょう。

試験の概要

 まずは試験の概要を確認しましょう。
 この試験は、6月に第一次検定が実施され、11月に第二次検定が実施されます。一次試験では午前の部と午後の部に分かれており、二次試験では午後の部のみとなっています。出題範囲は以下のとおりです。

 第一次検定では全92問出題され、選択式含む60問に回答、合格ラインは60%以上の得点となっていますので、36問に正答できれば突破可能です。全出題の4割を押さえておけば合格できるというのは心理的ハードルが低くて良いですね。
 最低合格ラインは6割(60問中36問正答)ですが、実際には必須問題もありますし、選択問題を都合よく選択できるとも限りません。と、いうわけで全体目標スコアとしては約7割(60問中42問正答)を目指すことにしましょう。
 この表では既に各部門別の目標スコアと修得率が掲載されていますが、これはこの後の各部門別出題分析後に確定します。現時点では仮のものだと思っていてください。
 試験時間は第一次試験(午前の部)が2時間30分、第一次試験(午後の部)が2時間、第二次検定が3時間となっており、時間的には十分余裕があります。

部門別の出題率調査

 さて、全体目標スコアは約7割(60問中42問正答)としましたが、この試験は部門別に出題傾向が大きく異なります。
 例えば、理論問題は計算問題が多く、問題ごと同じ出題が出るケースは少ないですが、解法を身に着けていれば確実に回答できます。
 また、法規問題は法令自体に変化がほぼなく、出題ポイントも再出題率も非常に高いです。こういった問題は条文やその趣旨も踏まえて理解しておくことで高得点に結びつけることができます。
 こういった出題の特徴を持つ分野は学習時間に対して得点のばらつきが少なく安定的に得点しやすいと考えられます。安定した得点源を作っておくと、選択問題で得点のばらつきが大きくなっても、最終スコアが安定します。
 逆に、ばらつきが大きい分野は、再出題率の高い問題を習得するまでは順調にスコアが上がりますが、目標点数を上げるほど要する労力が大きくなっていきます。
 そこで、過去問でカバーする範囲と、ある程度基礎を身に付け応用問題にも対応できる範囲とで切り分けて効率よく学習することを意識しましょう。

電気工学部門の傾向と対策

 まずは電気工学部門のH19~H29年の11年間の出題傾向を調査してみましょう。
 電気工学部門は15問中10問選択式の出題で、詳しくは下表のとおりです。

 この分析は、同一の知識でもって解ける内容について、同一の問題と定義しています。類似問題も含めて、概ね問の番号毎に出題傾向が決まっているのがわかりますでしょうか。
 例えば問6に関しては、三相誘導電動機についてだけ詳しくなっておけば必ず取得できるということになります。逆に、出題傾向がバラバラな問7は過去問を勉強しても新しい問題が出題される可能性が高く、取得が難しいということです。
 また、問9は汽力発電と水力発電だけで出題範囲の8割をカバーしており、この2問を頭に叩き込むだけで目標スコアの期待値である7割を超えることができます。優先順位を考えたとき原子力発電については後回しで構わないと考えられます。
 出題回数の多い問題は今後も再出題される確率、出題頻度が高いと考えられるため、優先的に習得しましょう。また、出題回数を閾値にして、習得範囲を決定しましょう。

 このようにして、出題回数を元に問の単位で捨て問について検討していき、目標スコアまでの習得計画を立てます。
 ここで、他部門との調整も行います。電気工学分野は、計算問題も解きやすく、記述問題も過去問を加工しない形での再出題率が高いため、得点に結びつきやすいです。部門別目標スコアは平均より高めの8点、習得率53%としましょう。
 取得率というのは11年間の全出題に対して、ランダムで過去問が出題された場合に8点以上を取るために必要な正答数の割合になります。
 簡単に言うと上記のリストからランダムで100問抽出したとき、53問以上回答できればよいということです。
 それでは、他の分野も同様に確認してみましょう。

電気設備部門の傾向と対策

 電気設備部門は、32問中14問選択式の出題です。詳しくは下表のとおりです。

 見てわかると思いますが、この分野は再出題2回以上の出題回数のものが約60問あり、そこに的を絞って学習すれば、それだけで習得率50%を狙えます。
 ここで注目したいのは、専門性が高すぎて敬遠されがちな後半の問題です。電車線、道路トンネル、光ファイバーなど特定の問題だけ出題率が高く設定されています。これらの問題だけでも しっかり押さえておくと、手堅く得点できるでしょう。
 選択式のため過剰に勉強しても最終的には捨てることになります。この部門の勉強は程々にして他に集中しましょう。部門別目標スコアは12点、習得率38%としましょう。

関連分野の傾向と対策

 関連分野は、8問中5問選択式の出題です。詳しくは下表のとおりです。

 関連分野は再出題率がやや低く、再出題問題だけを勉強しても平均4.7問、運の悪い年だと2問しかカバーできていません。
 関連分野はハイスコアを狙うよりは、カテゴリを絞って回答できるようにしておくのが得策です。特に土木については出題範囲が広いため、土木知識がある人は有利でしょう。
 注目すべきは問49問50の機械設備の問題です。この部門の中でも空調設備と給排水設備は再出題率が高いため、確実に回答できるようになっておきましょう。
 また、問55鉄筋コンクリート構造については、再出題は少ないものの関連出題が多いです。難易度の高い内容は多くないので、基本的なことを身に付けておきましょう。
 鉄道の軌道構造もそこそこ再出題率は高いのですが、難問奇問が多いため捨て問にするのが無難です。
 ここは、無理に得点を狙いに行かず部門別目標スコアは2点、習得率25%としましょう。

施工管理法部門の傾向と対策

 施工管理法部門は必須問題となっています。午前の部で2問、午後の部で6問中6問、7問の中7問、9問中6問選択式の出題です。なお、6問中6問は50%以上の得点が求められます。詳しくは下表のとおりです。

 施工管理法は後半の選択問題以外は必須回答となっています。合格基準に直結する足切り問題もあるため、施工管理法の安定度を高めることが合格への近道です。
 足切り問題は令和2年度までの問68~76から出題されると考えられ、
 令和3年度は問68施工計画書、問69仮設計画、問72進捗度曲線、問71・73アロー型ネットワーク工程表、問75品質管理についての記述、品質管理に用いられる図表が出題されています。
 令和4年度は問68・69施工計画書、問70各種申請書類、問72工程管理、問71・73アロー型ネットワーク工程表、問75品質管理に用いられる図表、品質管理に用いられる管理図が出題されています。
部門別目標スコアは12点、習得率57%としますが、可能な限り押さえましょう。

法規部門の傾向と対策

 法規部門は必須問題となっています。13問中10問選択式の出題です。
 詳しくは下表のとおりです。

 敬遠されがちな法規問題ですが、再出題回数が非常に高いです。つまり、覚える内容に比較しての出題率が高いのです。回答が一意に定まりやすいのも特徴で、実際、多くの資格を取得している人は法規問題を得点源としている人もいます。
 現に、再出題26問を習得するだけで61%を習得できてしまいます。
 ここは部門別目標スコアは高めに設定して9点、習得率68%とします。

 このような計画を立てておくことによって効率よく勉強することができるようになります。

全体スコア目標

改めて部門別スコア目標と習得率を再確認してみましょう。

 電気工学  8問 53%
 電気設備 12問 38%
 関連分野  2問 25%
 施工管理法11問(うち必須問題4問) 57%
 法規    9問 69%
------------------------
 全体   42問 70%

 全体スコア目標も予定通りの70%になっています。
 今回は再出題率を軸に学習目標を立てましたが、周期性も重要です。再出題の周期性も確認しましたが、5年間で再出題されている問題が多いもののランダムチョイスに近く周期性までは確認できませんでした。
 なお、再出題経過年数を比較すると、どの年度で確認しても過去5年間からコンスタントに再出題されている傾向が見られます。よって、5年間の問題について70%解けるようになっておけば合格圏内を狙えるでしょう。

キーワード学習

 また、更に詳しく調べていくと、この手の資格には珍しく、時代背景を出題に反映するというような内容の出題がほぼ見られません。そのためか完全に新規の問題は非常に少ないです。
 法改正により出題できない問題が増えた場合や、新技術により解説の内容が変更となった場合がほとんどであろうと思います。
 これは予め出題範囲の中で問うべき部分が決定していて、出題の仕方に変化をつけることにより、同じ内容を問うていると考えることができます。こういった出題方式の場合は、先に正答肢(誤った内容)が作られ、後からそれ以外の選択肢を埋めていく形で問題が作られるため、正当選択肢のキーワード抽出が効果的です。
 例えば試験の際に2択まで絞り込むことができた場合は、選択肢内にキーワードが含まれたほうを回答することで正答率が上がります。

 それでは、大筋の出題傾向とスコア目標ができたところで、学習プランを建てることにしましょう。

学習プランの立て方

過去問への取り組み方

 どの資格試験にも言えますが、過去問は非常に貴重です。ある試験に対して、自分の実力がどうであったかを測れるのは過去問くらいです。相当に精度の高い模擬試験があれば、それでも十分なのですが、大学受験などでもない限りそのようなサービスは存在しません。
 よって、直近の過去問を消費してしまうと、あとから自分の実力を測る術がなくなってしまうのです。

 そこで、5年分を検証データ、更に7年分を訓練データとして分割し、訓練データで勉強したものを、定期的に検証データで確認するという手法を取ることをおすすめします。
 周期性の確認の際に、5年以内から出題されていると確認したため心情的には直近の年度を訓練データにしたいところですが、社会情勢のトレンドが出題に反映されていないタイプの試験ですし、R3R4など直近の試験の方が検証データには向いていますのでそこから連続した5年間を検証データとするほうが理にかなっているでしょう。

 今回は単純に、例えば、令和4年度受験を想定する場合、平成29年~令和3年までの5年分を検証データ、平成22年~平成28年までの7年間を訓練データとしてみましょう。
 訓練データをある程度勉強して、訓練データでは得点できるようになってから、検証データ(例えば平成28年度の試験)を受けたとき、思ったよりも点数が取れなかった場所、変わった出題で面食らった場所、想像以上に高いスコアが取れた場所などが出てくるでしょう。思ったよりも取れた場所は、しっかりと理解できている場所です。多少遠回しな問いかけにも十分に対応して問題に回答できていると言えますし、逆に、思ったよりも取れなかった場所は、実は訓練データの出題に対して過剰に適合してしまっています。これは学習不足か理解のポイント、キーワード選択をミスっていると考えられます。検証データの出題を過去の出題と比較してみましょう。

 実は、前段までで提示した分析結果も平成29年までのものに限っています。これは、できるだけ法改正以後の年度の出題を検証データとして扱おうという意図によるものです。
 出題の意図を把握できれば、急に出題が様変わりしても困ることはありません。このように過去問を効果的に活用していきましょう。

学習目標とスケジュール管理

 学習時間の目安は人によって違うと思うのですが、今回は短めに、仮に100時間程度の余暇を学習時間に充てられると仮定してスケジュールを組むことにします。
 週に4~8時間の連続した時間、毎日30分程度の小刻みな時間があると考えます。おおむね一週間に9時間の学習時間が得られると考えられ、約12週が目標期間となります。
 試験のおおよそ3か月前から取り組めばギリギリという感じでしょうか。実際には毎週末を確実に確保できるわけではないと思うので、実期間は4か月16週と仮定しましょう。

学習要領(1週目~6周目)

 最初の週は訓練データの週の試験を一通り解いていきましょう。簡単に解けるものを◎、じっくり考えて解けるものを〇、解説を聞いて納得できるものを△、全然わからなかったものを×とマーキングしていきます。また、解説を確認した際には、どの部分が問われているかのキーワードをアンダーライン等でマーキングします。初週は特に時間を要すると思いますので、解答時間を気にせず解いてみてください。
 このとき、×が多い場合は困惑すると思いますが、先の出題傾向を確認してから学習を進めますのでこの時点では気にせず解いていきましょう。
 一通り解いた時点で部門別のスコア目標と比較します。例えば以下のような感じになったとしましょう。

       ◎ 〇 △ ×  目標 選択数 出題数
 電気工学  1 2 6 6  8  10  15

この分野は、△マークの出題を確実に選択・取得できれば目標スコアは超えています。ただし、先の分析における出題回数2回以上の問題が×に含まれていた場合はその設問は復習することにしましょう。

       ◎ 〇 △ ×  目標 選択数 出題数
 施工管理法 0 2 4 18 11 19  24

 この分野は、△まで入れても目標スコアに届いていませんので、学習目標の優先度を高くしましょう。出題回数2回以上の問題が×に含まれていた場合は復習することにしましょう。
また、令和2年度以前の問68~76(令和3年度以降の問58~63)には必須問題6問が含まれておりますので、これらは確実に習得しましょう。
 同じ日に全ての復習を進めるのは難しいので、平日の小さな時間で復習の内容を潰していきましょう。まず、アンダーライン部分を再確認、簡単な問題については解説を確認しておきます。そして、じっくり考える必要上がる問題は長時間取れる週末の時間に回しましょう。

 同じように、翌週も同じ方法で訓練データをこなしていきます。

       ◎ 〇 △ ×  目標 選択数 出題数
 電気工学  4 4 2 5  8  10  15

 回が進むごとに目標スコアの達成率が上がっていくと思います。とくに3回目以降は再出題率が高くなっていきますので、急激にスコアが伸びます

 12週しか時間がないのに、一回の試験に2週間も使っていいのかと驚かれるかもしれませんが、最初はそんなもんです。回が進むごとに再学習の時間が短くなっていきますので問題ありません。

学習要領(7週目)

 ということで、7週目は検証データでの勉強を行います。やることは大差ないのですが、模試であるというイメージを持って取り組みます。
 ここでスコアが目標に届いていない場合は、過去に再学習した重点目標となっている出題をいくつか落としているものと考えられます。一度の学習で身に付けられなかった問題は、じっくり取り組む必要があります。この週はそういった出題の再学習に充てましょう。

学習要領(8~10週目)

 再び訓練データでの勉強になりますが、ここでは毎週2回分、合計4か年分の問題を解くことにします。1~6週の倍速ですね。十分に時間があれば得点としては余裕のあるペースになるはずですが、どうでしょうか?
 ここで、見つけ出したいのはスピードアップの際に、注意ミスで得点を逃してしまうケースになります。解答速度を上げると、不注意やミスによる失点が顕在化します。
 僕はポイントとなる言い回しにマーキングしたりしています。
 どうしてこの手順が存在するかというと、施工管理法の応用問題は6問中3問以上正解という実質足切り問題が存在しており、この部分の得点は些細なミスも許されないからです。
 慣れてきたらマーキングだけでも構いません。
 内容的には過去問の再履修で対応できるのですが、小さなミスで得点を落とすわけにはいかないからということになります。

学習要領(11~12週目)

 さて、学習も終盤ですが、ここでは過去の試験問題のうち、△、×マークを付けた問題だけを再出題していきます。また、小刻みな時間で8~10週目の回答で、目標点数に届かなかった分野についてリトライすることにします。
 この時点で、効率よくキーワードをチェックしていたならば、キーワード学習の効果により出題の方法が異なっても、問う内容が同じであることに気づくと思います。要するにキーワードの含まれた文章が怪しいということがわかります。

学習要領(13週目~)

 さて、この学習プランは8~10週目までに大きめの山を終え、11~12週で仕上げとなっていますが、実期間は4週間の余裕があるはずです。
 この13週以降が確保できる場合は、模擬試験を繰り返しましょう。試験は出題対策以上に試験対策も重要です。適正な時間配分等が必要になるので、模擬試験では時間配分を意識しながら回答していきます。

試験前日まで

 丁度試験の前週までの学習計画を立てていたのであれば、試験前日まで余裕があると思います。ここでは、特に6~8週目でのミスの部分、キーワードを見直しましょう。
うっかり系のミスというのは、本人の性格のようなもので、本人が思っている以上に防ぐのが難しいものですので、どのようなミスをしたか、という記録が重要になってきます。
 ここでは、ミスの個所と単語記憶を結びつけることで対策を取りやすくし、またキーワードで解答を絞り込むことで、システム的にうっかりミスを減らす目論見となっています。

 あとは試験に挑むだけです。試験は学習内容以上に試験慣れが必要だったりします。今回のプランではタイトなスケジュールとなっており模擬試験形式が少なかったですし、そもそも仮に合格したとしても、この対策は試験に必要な部分しか学習しておらず、十分な知識を詰め込んでいるとは言えません。合格したとしても、今後に向けて習得していくべき知識もあるでしょう。ですので、失敗してもいいやくらいの気持ちで挑みましょう。

今後に向けて

・計画は、キャリアプラン、スコア目標、学習プランの順に立てよう
・出題傾向を分析し、部門別に目標正答率を設定しよう。
・過去問は、貴重なので、古めの過去問を訓練データとして学習を進め、直近の過去問を検証データとして学習成果をチェックしよう
・一通りしっかり解く時期(修得期間)、模擬試験(効果測定:勉強の効果を確認する試験)、短時間で解く訓練(錬成期間)、模擬試験(時間配分を確認する模擬試験)、復習に分けましょう

 僕はどの試験でも同じような対策をとっており、とくに過去問からの再出題率の高い試験はこの方法でいけると思います。再出題率が低い試験については、新規問題がトレンドからの出題なのか、基礎学習からの出題なのか、関連分野の問題が流用されているのかなどにより対応が変わり、時間配分を大きくとる必要なども出てきますが、以後の対応は変わりません。

 学習プランの組み立て方については、もっと様々な方法があろうかと思いますが、この方法が皆さんの勉強の参考になれば幸いです。

今後の攻略記事とnote記事の価格設定について

 当初、このnoteは無料記事で作成していましたが、第二次検定(旧実技試験)を公開するにあたり詳細すぎる内容を含んだ部分は有料記事とすることにしました。
 この記事は、学習プランの立て方と、個別問題の解説、二次試験への備えと、アチコチに取っ散らかった内容になっていました。文章量も4万文字以上を記述しており、一記事あたりの文章量的にも流石に分けたいなと思っていたところでした。(分けた今でも14,000文字近く、図表内の記述を含めると30,000文字前後ありますが)

 これは第二次検定は経験記述という課題が主要であり、個人的なメモや考察なども含めてプライベートな情報が含まれてしまうのと、合格基準が示されていないため、正解を導きやすい第一次検定と比べて、第二次検定はどうしても不確かな憶測の部分が多くなってしまいます
 流石に好き好んで身バレリスクも負いたいわけではないので、それを考慮してワンコイン程度の有料記事にしようかなと考えました。僕が守りたい個人情報と説明したい内容でバランスを取った結果この程度なら大丈夫かなと思っています。この方がより実情に即した記事を書けるかなと思います。

 あとは、要望に応じて個別の詳細解説を行った内容については、チャットなどで対応していた部分は整理されていませんし文章化されていません。再び筆を執るとなると時間も要します。どうしても実例に基づいた記述情報が欲しい人向けのプライベートな内容であったり、表向き言いづらいテクニックを使ったりもしているし、質疑に応じるなどサポートもしたいので価格設定することにしました。要するに個人情報的な内容は控えめに出したいというところで、妥当な価格設定だと思いますがどうでしょうか。

 以前の記事で第二次検定についての記述を見たことがある人は、内容について知っているはずですのでご理解頂けるかと思います。

 大雑把に価格設定を説明すると以下のイメージです。


資格取得の行動計画           無料(この記事)
試験の傾向と対策            無料(この記事)
学習プランの立て方           無料(この記事)


第一次検定(旧学科試験)の重要問題解説 無料?100円~?
第二次検定(旧実技試験・経験記述)   500円


 今回、僕が当初このnoteで言いたかったことは、資格取得の行動計画と学習プランの立て方です。9割はこの無料記事部分に集約されています。
 特に、資格取得の行動計画は、それだけで他の資格にも応用可能で、本一次試験も十分取得可能な内容となっているはずですし、その後、監理技術者補佐として実務経験を積めば、第二次検定の合格までロードマップを描けると思います。

 そんなわけで、第二次検定編はこちら。

 念のためもう一度書きますが、価格設定は個人情報を守るためのものです。冒頭でも述べましたが、世の中には無料の素晴らしい解説サイトや、有料の丁寧なサポートはいっぱいあると思いますので、適切なサポートを得たい場合はそちらを利用されるのが良いと思います。

 この記事が、これから受験する皆様への一助になればと思います。


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