中抜きとハンプティダンプティ
最近やたらとどこでも「中抜き」という言葉が使われるようになった。電通が、オリンピックで、とか皆さんも一度は聞いたことがあるのではないだろうか?
ところで「中抜き」の意味をご存知だろうか?
「ピンハネ」と同じ意味?
間違いだ。
「中抜き」は「中間業者抜きの意味」であって「ピンハネ」とは真逆の意味なのだ。しかし、日常で中抜きという言葉が使われるのは「中間業者がお金を抜いている」みたいな意味、つまり「ピンハネ」の親戚として使われているように思う。
ネット上の記事を見るに2016〜2017は中抜き=中間業者抜きというのが優勢であった。
https://wisdom.nec.com/ja/business/2016082601/index.html
真逆の意味で使われるようになった背景
この個別の事象に対して言えることは、そもそも「中抜き」という言葉が優しくない言葉であったというのが言えると思う。中間業者「が」抜くのか、中間業者「を」抜くのか、という二者択一が想像出来る言葉であって、『中間業者「を」抜く』という意味合いで取るという合理性はない。そういう意味で難しい言葉であったのが一つの背景だろう。
そしていまひとつには(いまひとつもポケモンのせいで変なニュアンスが付着してる気がする、しらんけど)言葉には本質的になんの意味もないというのがあるだろう。
不思議の国のアリスで有名なルイス・キャロルは著作でこう言っている。
「『黒』という言葉で『白』を意味すると規定すれば、その規定を受け入れざるをえない」 ―――ルイス・キャロル
今回の自体もまさしくこのまんまと言ったところだろう。中抜きという中間業者を抜くという意味の言葉を、中間業者にお金を抜かれるという意味で使えば、その意味の言葉になるのだ。
中抜き=X
中間業者抜き=白
中間業者がお金を抜く=黒
とすると
「白」という意味の「X」という言葉を、「黒」という意味で使えば「X」という言葉は「黒」という意味になる。と言ったところだろうか
(ルイス・キャロルと同じ白黒の使い方のほうがわかりやすいんだろうけど、中間業者がお金を抜くのはどう考えても黒だろうということで、この白黒にした)
「言葉はわしが意味させようとしたものを意味する」 ―――ハンプティ・ダンプティ
結局言葉なんてものそれ自体にはなんの合理性もなく強さもなにもない。結局使う人によってどんな意味にもなりうる無価値なものである。だからこそ言語能力がクソ高くてもコミュ力0ということもあるわけである。
余談
これは多分意味合いとして本筋とは異なるのだが、最近だとCHIMPOという言葉がとてもおもしろいと思った。ヘンリー王子の新しい役職名だ。「chief impact officer」略してCHIMPO。この言葉ににやっとしてしまうことこそ言葉に本質的意味がないということの証な気もする