どんな時にも希望はあるらしいのでヱヴァQを解説する⑥(終)
前回までのあらすじ
カヲル「やめようシンジ君...!」アスカ「やめろ!バカガキ!」
↓
シンジ君「嫌です。」
さて、長く続いた解説記事も最後となった。今回の記事で、次回予告を含め「Q」のシーン解説は全て終了となる。無論、前々回くらいから話を出していた4.5の投稿もできるだけ早くしたい。
では、今回の解説に入る。最初のカットはこちら。
カヲルやアスカの忠告を聞かず、リリスとMark.06に刺さっていた2本の槍を引き抜いてしまったエヴァ第13号機とシンジ君。
引き抜いたことでリリスの骸・同時に綾波とよく似た頭部も膨張して爆発し、血が溢れ出る。
その血の海に浮かぶ人型の何か。そう、これは、
先ほど封印状態にあったエヴァMark.06である。「破」でカシウスの槍を投擲した時と外装に変化はないが、色調がやや明るくなっていないだろうか?
「破」では月光のせいでよく見えなかったが、「Q」予告カットや、リボルテックヤマグチのMark.06の色は(特に青色部分は)もっと暗めな色調だったはずだ。
実は上画像の色だったのか、それとも自律型に改造された時に若干の色味変更があったのか。謎である。
英語アナウンス訳「血液型(まぁここは普通にパターンでよいだろう):青 警告 第十二の使徒と確認された」
この赤い粒々みたいなのが第十二の使徒だ。
アスカの改二号機にもあのアナウンスはいったようで、左腕をパージし、
マリの投下した三番コンテナ――ガトリングガンに換装する。
ここの水しぶきが本当にリアルで、制作の方々を尊敬してやまない。
第十二の使徒に操られ、軟体動物のように体を動かすMark.06の頭を、
不意にMark.09が切り落とす。これが、命令であると。
その瞬間、胴体・頭部の両方から、
ケーブルのような、光ファイバーまとめたものみたいな黒いひものような物体が現れる。これが第十二の使徒である。2本に分かれた使徒は複雑に動きながら上昇し、
このように第13号機を球状に包み込む。やがて完全な球になると同時に黒い部分が赤く変色。
それに目がけて改2号機が左腕のガトリングガンを連射する。
しかし焼け石に水だ。マリの言葉によれば、この球全体がコアであり、アスカの放つ弾丸は無駄玉である。しかし、光ファイバーのまとまりが、集まると急に全てコアになるという。これは、コアを破壊されれば消滅する使徒にとって致命的な性質ではないだろうか。しかもアスカの攻撃をまともに受けるあたり、ATフィールドもあるかどうか疑問だ。
いずれにせよ、普通の使徒ではないように思われる。
そんな中、第十二の使徒の外見がどんどん変化し、人の顔のようになっていく。髪型も顔の形も、綾波にそっくりだ。
これも一見謎の多い描写である。しかし、旧劇の「Air/まごころを君に」終盤の描写で、リリスが巨大な綾波レイになっていることを考えると、そこまで不自然でもない。やはり「人類補完計画」に関わっているとしか思えない。
一方その頃。球体の中の第13号機では、シンジ君が焦っている中、カヲルが少し苦しそうに(私にはそう見えた)声を絞り出す。
第一の使徒アダムである渚カヲルが、第十三の使徒に堕とされる。
堕とされる?
このシーンを解説するべく、私は風呂の中で散々考えた。散々考えたのだが、一パターンにまとめることは出来なかった。
私の考えた考察には2パターンある。以下で解説する。
まず、「Q」終盤でのセリフで明らかになるが、ゲンドウは間違いなくカヲルを消そうとしていた。それは間違いないだろう。そう考えると、第13号機を覚醒させた時に、何らかの方法でカヲルを始末しようとしていたはずだ。
すると、ゲンドウがDSSチョーカーの存在を知っていたかどうかで解釈が分かれる。ただ共通して私が考えるのは、ゲンドウの手によってカヲルが第十三の使徒に堕とされたのだということだ。
①:知っていた場合...カヲルを第十三の使徒に堕とす理由がよくわからなくなる。覚醒した、つまり神格化を検知した時点でDSSチョーカーは対象を死亡させる。それを知っていたとすれば、わざわざ特別な措置を下さなくても、第13号機を覚醒に導くだけでカヲルを処理できたはずである。
②:知らなかった場合...これだと、シンジ君を奪還する必要性と絡めて、ある程度の解釈が可能だ。 即ち、カヲルが第一の使徒アダムという、特別な存在から、存在はしないが4~12までの使徒と同列の存在である第十三の使徒に堕とされること。そしてシンジ君の奪還。
この二つの事柄を組み合わせればこうなる。
まず、仮説だが、「特別な使徒」のままカヲルを排除した場合、第13号機の覚醒はその時点で止まってしまうのだろう。しかし、カヲルを「特別ではない使徒」に堕とし、そこにシンジ君もいることで、たとえカヲルを排除しても覚醒状態が続くように仕向けたのではないだろうか。と、推察できる。
ともかく、内部の第13号機の肩部装甲が外れ、赤いブロックで新たな装甲?のようななにかが形成されていく。
※誤字脱字確認時追記:この赤いブロックは、「Q」映像特典のSCRIPTでは翼が生えていくと記されていた。
英語アナウンス訳「パターン青 DSSチョーカーから検出 第十三の使徒の兆候の可能性」
興味深いのは、第十二の使徒の時は「Confirmed」なのに、第十三の使徒は「Possible」となっていることだ。
マリの発言からも分かるように、第十三の使徒は本来「存在しないはずの」使徒であるという。
これは、「序」でゲンドウが、第五の使徒殲滅後の時点で、「いかなる手段を用いても、我々はあと8体の使徒を倒さねばならん」と発言し、この時点で残存する使徒は第三、六~十二でぴったり8体となることから、当初もゲンドウは第十三の使徒の存在を、或いは存在させる方法を知らなかったのだろう。
そしてシーンが別の場所に切り替わる。
ゼーレの7人(7基)と、中心に立つゲンドウ。
死海文書の契約改定。
どこにあるのか明示されていない電源室で、冬月がモノリスの電源を落としていく。
ゲンドウの一人語りは続く。その間、どのモノリスからも声が聞こえてくることはない。
活動を停止したモノリスを背景に、ゲンドウがモノリス01に語り掛ける。新劇では名が出てくることはついぞなかったが、TV版では01はキール・ローレンツだった。
01「我らの願いは、すでに叶った。よい。全てこれでよい。 人類の補完。安らかな魂の浄化を願う」
そして、電源が落とされ、最高のタイミングで劇伴(From Beethoven 9 =3EM27=)が流れる。
近々執筆する4.5と、多少とも内容はかぶってしまうが、14年間の大まかな流れを、劇中の描写に極力忠実に考察しつつ解説したい。
まず、シンジ君によってニア―サードインパクトが起こされた後、恐らく時価予告通りに初号機と彼は封印された。
そして、マリやカヲルの手で、残りの第十一の使徒が倒される。
その後、Mark.06はNERVに運用される。「自律型に改造され、リリンに利用された」とカヲルが話しているので、これはほぼ間違いないだろう。次回予告を信じるならば、ドグマに降下するMark.06のカットがあるので、そのまま降下してリリスと対面したとする。
ここからは仮説だが、私はドグマに降下した時点でMark.06が第十二の使徒をすでに内包していたと考える。
TV版・旧劇で多く描かれたゲンドウとゼーレの対立は、恐らく新劇でもあったのだろうと思われる。今回、私の思う新劇での対立の原因はMark.06と、その中の第十二の使徒だろう。
この使徒を倒すことが、人類補完計画遂行のための欠かせない要素だ。
ゲンドウは、このMark.06をわざとドグマに接触させ、サードインパクトを起こしたのではないだろうか。
「人類を別の完全な生物に進化させる」ことが人類補完計画である。そして、ゼーレの計画とゲンドウの計画が対立していたと仮定すると、関係者以外の全ての人類を滅亡させることで円滑な計画遂行をゲンドウは阻止しようとしたのではないだろうか。
じゃぁ滅亡したという証拠は?
これは「Q」でのカヲルの解説シーン、そしてシンエヴァのアバンタイトル映像で映った旧パリ市街。これらの描写から、ヴィレとゲンドウ・冬月、そしてエヴァパイロット以外の生き残りはいないと考えることは容易だ。貴方も真っ赤なマンションに突き刺さるエヴァ(?)の腕を見ただろう。
ともかく、NERVによってMark.06は改造された。それはつまり、ゼーレの計画を、14年の間にゲンドウが捻じ曲げたのだと推測される。
今回はこのくらいにしておく。4.5で書くことがなくなってしまう。
そしてさらにシーンは切り替わる。
第13号機は目が大きくなり、「破」での覚醒初号機の目と類似したものになる。胴体の赤い外装部も発光を始めた。
そして、それまで第13号機を包んでいた第十二の使徒が、胎児のように変形し体を丸めたあと、突如縮小。
第13号機の口腔内に収まるほどのサイズになると、それをかみ砕いた。劇中では一瞬なので分かりにくいが、上画像のように新劇での使徒殲滅時の演出である虹と十字架がバッチリ現れている。
画面の振動から伝わるエネルギーの増大が極値に達し、第13号機は覚醒。
マリのセリフから、「Q」でもう何度目か分からない新単語が出て来る。
「アダムスの生き残り」
前回か前々回か、Mark.09が「アダムスの器」について解説した時、器ということはMark.09はアダムスの一体の体から作られたのではないか、といった話をしたと思う。
それが、今度はアダムスの「生き残り」と来た。生き残りであるという事は、体だけでなく魂も存在しているのだろう。また、ダブルエントリーシステムであるということから、第13号機にはアダムスの魂が2つ封入されていると推測できる。
ADAMS? との文字列の後に現れたのはこの4体の光の巨人。1体の魂がカヲル、もう1体が後述のもの、そして残りの2体の魂が第13号機に使われたとすれば、一応数は合う。
そして、肩から翼を生やし、2つの天使の輪を発生させ、ドグマから飛び立つ第13号機。「疑似シン化第3+形態(推定)」だ。推定も含めて正式な呼称だ。
シンジ君も第13号機を操縦できないまま、上へと引っ張られていく。
シャフトを全て内部から破壊し、謎の逆三角形型構造物の上に出る第13号機。
訳が分からず困惑したまま見上げるシンジ君。
ニアサードの時より、カラフルかつ広範囲な輪っかが出現する。
輪っかに向かって、黒き月(私の推測。第13号機がジオフロント直上に上昇したとすれば、地下から出てきたのはジオフロント・そしてこの構造物の大きさからさらにその地下にある黒き月だと思われる)が上昇していく。
そして、その上昇に巻き込まれて、
無数のエヴァ(?)が吹き飛ばされる。
カヲルは言う。「フォースインパクト。その始まりの儀式だよ」と。 フォースインパクトが始まるのだ。
そして、カヲルの首のDSSチョーカーから、結晶のようなものが出て来る。
首輪の変化にシンジ君が焦り、何とかしようとするが、二人の間に透明な壁があり、それを阻む。だが、そんなことを知らずに、
AAAヴンダーが第13号機の腰部に突っ込み、ATフィールドで抑え込もうとする。
「曲射弾」によって第13号機を攻撃。
どうやらこれは、前方にATフィールドを展開し、それで弾丸を反射してぶつけるようだ。爆発の規模からして全弾命中の威力は相当なものである。
ただ、目の前の第13号機にそのまま弾丸を発射せず、あえてフィールドで反射してから命中させる理由が謎である。フィールドで抑え込んでいるから、直接の攻撃はできないのか、曲射弾がそもそもエヴァ攻撃のためのものなのか、謎は残る。
しかし、そのヴィレの意思を阻止するように、1本の天使の輪っかを発生させたMark.09が使徒ビームを浴びせる。
攻撃がばっちり中央部に命中したことで、第13号機の抑え込みが上手くいかなくなり、
第13号機はヴンダーから離脱する。
このシーンで、浮遊する瓦礫が目の前を通過する瞬間の風を切る音が非常にリアルだ。最高の演出である。
主機の出力が低下するヴンダーに、さらにビームを浴びせるMark.09。
「アダムスの器はヴンダー本来の主」ここで、新たな情報だ。
先述の仮説で私はアダムスの器=アダムスの体の部分だと話した。
これを踏まえて先のセリフを考えると、ヴンダーにはアダムスの魂が封入されているのではないだろうか。それをヴィレが奪ったか、建造主が封入したかし、ヴンダーをその器としたのだろう。
だが、恐らく別系統でMark.09が、その魂の器=体を使って建造されたのだと推測される。
Mark.09は、頭頂部付近の切れ長の物も合わせて12の目を持つ新たな頭部を出現させ、もう一度使徒ビームを撃ちこんだ後ヴンダーに接触。余談だが、この頭部はヴンダーの艦橋部分と似通っている。
同時に、体の色も紺と暗いオレンジに変化。ちなみにこの形態の正式名称は、「第1のアダムスの器(移行中間形態)ゼーレ仕様」である。
次回予告のシーンに従うならアダムスとは計4体のアダム(というか光の巨人)のはずであり、第1のアダムスの器ということは第2~第4までが当然存在するはずだが、先述のように第13号機内部にはアダムスの魂が2つ封入されていると推測され、第13号機も2体分の器なのだろう。
残る一つは魂がカヲルとなっているはず(TV版ではアダムの魂に人間の肉体が与えられたのがカヲル)だが、器については不明だ。
まとめると、
第1のアダムスの器=Mark.09 魂=ヴンダー(と推測) 残り2つのアダムスの器・魂=第13号機(マリの発言よりほぼ断定) 最後1つのアダムスの魂=カヲル 器=不明
となる。大分わかってきただろう。
ようやく上まで登ってきたマリとアスカ。何だかこのカットの2機の覗き方が目を和ませる。
マリはシンジ君を、アスカはヴンダーを助けるとして、2人は行動を開始する。
そんな中、ヴンダーの戦闘艦橋に現れるゼーレのマーク。
Mark.09ことアダムスの器は両足をゼリー状に変化させ、主機に侵食、ヴンダーのコントロールを奪い始める。
翼の先端を大地に擦りつけるヴンダー目がけて、改2号機が思い切りジャンプ――間一髪、改2号機は翼に立つ。そして、
走りつつ、遠距離のアダムスの器に見事命中させる。このあたり、アスカの技量がひしひしと伝わる名シーンだ。
英語アナウンス訳「アンチATフィールドを中和するAPRカスタム(弾のことだろうか?) 効果なし」
アダムスの器はすぐに体制を立て直し、赤い球状の使徒ビームを放つが、
アスカは華麗にそれをかわす。
かわしたビームの威力はこれだ。さっきヴンダーの食らったビームとは明らかに威力が違う。
アスカは飛びつつ、叫ぶ。
モードチェンジ・コード777。
言うと同時、「破」でのマリと同様、背中の拘束具がパージされ、改2号機が「獣化第二形態(第1種)」に変貌する。
改2号機はそのままアダムスの器に取り付き、攻撃を試みる。
このシーンのアヤナミレイの顔と、LCLの気泡から、衝撃・ダメージ等がパイロットにも伝わっていると推測される。
すると、シンジ君奪還の際頭部を吹っ飛ばされたのを意に介していなかった様子に疑問符が付く。頭にダメージが入れば、シンジ君やアスカのように相当な痛みを感じ、しばらく行動不能になってもおかしくない。
にも関わらず、まるで何もなかったかのようにブースターに点火したのは、この描写を考えると中々疑問が残る。
アダムスの器に振り払われた改2号機は、ヴンダーの装甲盤に着地し、その直後、改2号機の体はますます獣化。尻尾が生え、両足・右腕がより獣の脚のようになっていく。
追い打ちのように改2号機に放たれた使徒ビームを改2号機がかみ砕く。
この形態が「獣化第4形態(第2種)」である。公式の設定画では、右前脚・両後脚がかなり短くなり、相対的に頭部・胴体が大きく見えて、本当に異形である。(どことなく左腕のガトリングガンも短くなっている気がする。)
改2号機はジャンプ。途中で使徒ビームを拳でいなし、そのままアダムスの器にかみつく。
改2号機のエントリープラグ内は真っ赤に発光し、アスカの眼帯の中も青く光る。
アバンタイトル直前にもアスカの眼帯が一瞬光っていた。青く。
「破」で、3号機の内部にアスカが取り込まれる直前、プラグの先端も青く光っている。
第九の使徒も青く光っていることを考えると、アスカの左目に第九の使徒・或いはその影響が残っていると考えるのが妥当だ。
アスカは首の部分を噛みちぎり、プラグ挿入口を露出させる。
アヤナミレイ「こんな時、アヤナミレイならどうするの?」
アスカ「知るか!アンタはどうしたいの!」
アヤナミレイを「綾波レイ」ではなく「アヤナミレイ」として扱うアスカ。優しさが垣間見える。アヤナミレイのプラグが排出された後、アスカは弾丸を撃ちこむ。
アダムスの器は活動停止するが、
全身がコアであるため、すぐに復活して改2号機に噛みつく。
プラグ内のモニターに再び「省電力モード」の表示が現れ、アスカはやむなくプラグを排出し、自爆のカウントを開始させる。
次第に電子音は早まり、修復された右頭部をかみ砕かれた改2号機は全身を発光させ、
自爆。改2号機ごと、アダムスの器も殲滅された。
アダムスの器が第一の使徒アダムと同一であるならば、使徒殲滅時に現れる虹と十字架が、このシーンでも確認できることに不思議はない。
アダムスの器からの影響を脱したヴンダーは緊急発進し、第13号機の追撃を試みるも、主機が完全回復せず、使徒ビームのダメージもあり、到底可能ではなかった。
悔しそうに呟くミサトさん。どこかでシンジ君の事をまだ大事に思っているのかもしれない。視聴者やシンジ君にはよく伝わらないが。
シーンは切り替わり。
依然として黒き月はガフの扉へと接近し、フォースインパクトの進行は止まっていない。
カヲルの死を予期したシンジ君は、ただ泣きじゃくるしかない。
そんな彼に、カヲルは優しく語り掛ける。その間にも、DSSチョーカーから出た結晶がより細長くなっていく。
ガフの扉を閉じるというカヲル。
人々の魂を、ガフの扉によってガフの部屋に還すことが、人類補完計画の内容だ。
その扉を閉めるということは、ゼーレやゲンドウの人類補完計画を阻止するという事だ。
そして第13号機が、ロンギヌスの槍を腹に突き刺す。
シンジ君がその痛みに苦しむ中でも、カヲルは話すのを止めない。
このカット。何で槍を突き刺すんだとか、もろもろの疑問を無視して、本当に疑似シン化した第13号機が美しい。
槍を突き刺し、現れる紫の点滅する光。
カヲルは、こんな時だというのに、死を前にして安らかな顔だ。
有名なセリフ。そして。
泣きじゃくるシンジ君を前に、カヲルはDSSチョーカーによって絶命する。
この31分前。
冬月のセリフにこうある。「31手先で君の詰みだ」
シンジ君は本当にこうなってしまった。
心を落ち着かせて、戦闘に臨まなかったからだろうか。
もし偶然でないとすれば、冬月はあらゆる意味で嫌な役を引き受けていたことになる。そうでないと願いたい。
カヲルの死によって、目は覚醒前の目に戻り、4つの内2つが光を失った。
しかし、ガフの扉はまだ閉じない。
シンジ君がゼーレの保険となることで、カヲルがたとえ死んでも、覚醒状態を維持してガフの扉を開いたままにし、フォースインパクトの続行させるつもりだったのだろう。
強い言葉をかけるマリ。
第13号機の中を知らないからこそ、マリはこんなことが言える。
中のシンジ君は、到底誰かのことなど考えられない。目の前で、自分の最大の理解者が死んだのだ。「破」での覚醒時、シンジ君は周囲のことを考えなかった。
今回は、周囲の事を考えられないのだ。渚カヲル。たとえ使徒でも、打算的にシンジ君と接触したとしても、どんな事情が裏にあったとしても、シンジ君にとってはかけがえのない理解者だった。
そして、マリの手で、シンジ君は第13号機から、何よりカヲルから離れ去る。
ここの演出が最高だ。単純にプラグ排出のシーンだけ映すのではなく、カヲルから離れていく描写まで。
もう涙なしには見られない。
シンジ君を失ったことで第13号機は完全に覚醒状態が終了。ガフの扉が閉まっていく。
ガフの扉に引き寄せられた黒き月(推定)、そしてエヴァ(?)が次々に落下し、青空が戻る。上画像で、いかに巨大なものが地下に埋まっていたかよくわかる。
恐らく、カヲルが第十三の使徒に堕とされたことと、シンジ君がマリの手で強制排出されたこと以外はほぼゼーレのシナリオ通りだったのだろう。
だが結果として第13号機は覚醒し、ゼーレの少年=渚カヲルを排除することができた。
ゲンドウによれば、「今は」これでいいそうだ。
シーンは変わり、エヴァ改2・8号機が回収される。改2号機はあの爆発でよく残っているパーツがあるものだと、私は初見で驚いた。また、8号機の包帯の巻き方と出血の仕方から、両腕を欠損したように見えるが、実は胴体の前で両腕をクロスし包帯を巻かれているので、欠損はしていない。
※直接的にはカヲルが半分、マリが半分である。
ミサトさんは悔しそうにな表情を崩さない。
エヴァ2体の破損のせいか、アスカを回収できていないせいか、それとも
シンジ君をあの時引き留めておけなかった責任を感じているのか。真偽のほどは定かではない。14年の間に何があったかを考察するより難しい、ミサトさんの心中である。
ヴンダーは、そのまま宙域を離脱。
一方、第13号機から射出されたプラグ内。
シンジ君がうずくまっているところに、
アスカがやってくる。アスカでもプラグの扉を開けるのはかなり大変だったようだ。
助けてくれないんだ、と言うがUS作戦でバッチリ助けている。しかもさっき最大の理解者を失ったシンジ君にこれは酷な言い方だ。
シンジ君は答えるどころか、さらに外界を拒絶してしまう。
アスカはそんなシンジ君を放っておいて、一人で立ち去ろうとするが、途中で歩みを止め、
プラグ内に降り立ち、シンジ君を思い切り蹴とばす。
蹴とばしてからずっと、アスカは気が強いというより、面倒見のいいお母さんに見えてくる。言い方は厳しいが、シンジ君を慮っているのがひしひしと伝わってくる。
そんな所に、アヤナミレイがやってくる。このアスカのセリフが、前々回くらいで私がネタバレしたものだ。
何かの計測器?のようなものが付随しているコンパスを片手に、「Q」も残り6分というところでアスカが新単語を発する。
「L結界密度」。安直に当てはめるならリリスの結界だろうか。ただこの「結界密度」という単語は、主機点火作業開始直前にリツコも発している。
シンエヴァのアバンタイトルを見る限り、大地を赤く染めているのがL結界だろうと推測できるが、詳しい結界形成の過程は不明だ。
また、通常の人、つまりリリンは密度が高いと、そのエリア内に通常の装備では立ち入れないことも、
このシーンとシンエヴァのアバンタイトルで判明している。
すると、ヴィレのようにシンジ君の存在を疑う必要が出て来る。
アスカは恐らく第九の使徒と接触し、生還したことから使徒の持つ何らかの力を持っているはずだと推測でき、アヤナミレイも頭部ダメージを気にしなかったことだけではあるが、他の綾波タイプとも違う気がする。
しかしシンジ君は、ただ14年間眠っていただけである。
この謎を解くヒントは、「破」で疑似シン化第2形態になった際にありそうだが、深い考察はここではやめておく。
そしてアスカは、無理矢理ではあるがシンジ君と手をつなぎ、歩き出す。その時カセットプレイヤーを落としてしまうが、きっとアヤナミレイが拾ってくれているだろう。そう信じたい。
赤い大地を歩いていく3人。そして流れ始める宇多田ヒカルさんの「桜流し」。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」は、ここで終わる。
解説は、以上で終わりだ。
ここから先は、私個人のモノローグである。
筆者のモノローグ
この記事を書いているとき、作業BGM的な扱いで、新劇の三部作や、旧劇・TV版をずっと流していた。
また、公開当時から盛んに行われていた考察のことも思いだしていた。
エヴァは、どのシリーズも間違いなく「多義的で示唆的な」作品である。
ある人にとっては多くのロボアニメの一つ、ある人にとっては青春群像劇、ある人にとっては大人の葛藤を描いた作品、またある人にとっては悲劇と、必ず人によって見方が違うはずである。
そんな作品に、恐れ多くもこのような解説を加える。
それが本当に良いことなのだろうか?
解説と言って、考察はなるたけしないといって、私は結局多くの推察・考察を、描写に立脚しつつも主観的に展開してきた。
「Q」だけを解説したのも、示唆的な描写が他2作より圧倒的に多かったからだ。
結局私の行っていることは、私の視点を読者の方々に教える、ということにすぎないのだと思う。
だから、この記事の内容を批判することは当然構わない。またこの記事を読んで、参考になったのならそれほど私にとって幸いなことはない。
途中何度も、TV版最終回の、あの「学園エヴァ」の世界線でいい、それがいいと思った。
しかし。それでは、エヴァではないのだ。
使徒がいつ襲ってくるか分からない緊張感。消耗する、14歳の子どもたち。そんな彼らに重荷を背負わせるしかない大人たちの葛藤。そして、それらの背後に見え隠れする「人類補完計画」。
これがエヴァなのだ。私の希求する学園エヴァは、スピンオフ以上の扱いを受けることはできない。
先述した「多義的で示唆的な」作品。決して明るいとは言えない描写。
これだから、エヴァは大ヒットしたのだ。「機動戦士ガンダム」や、「マクロス」、「宇宙戦艦ヤマト」といった王道のアクション作品と肩を並べつつも、一線を画すエヴァ。
それも、恐らく今年で、また一区切りをつけることになる。
公開が延期となってしまった、
これが、物語の最終幕となる。
シンジ君は、アスカは、綾波は、ミサトさんは、リツコは、ゲンドウや冬月は、どうなってしまうのか。
だが、一つ確信できることはある。
「Everybody finds love in the end」(「桜流し」より)
最後には皆、愛を見つける。
その最後を、私は見届けたい。
また、こんな情勢下にはうってつけの言葉を、カヲルはシンジ君に向けて発している。
「希望は残っているよ、どんな時にもね」
あの時あえてこのカットを掲載しなかった。最後にこうして伝えたかった。
今はただ、状況収束と、シンエヴァの公開日決定の願うのみだ。
最後になったが、この記事に使っている写真は、手書きのもの以外全てYoutubeで5/3まで株式会社カラーが無料公開していた「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ三部作をスクショしたものだ。
解説を円滑に進める目的で引用し、スクショ内の映像の著作権は全て株式会社カラーのものである、という事を明記したい。
さて、4.5を除き、本編は本当にここまでだ。6つの記事を読んでくれた方々には本当に感謝してもしきれない。終始拙い文章であったが、皆さんの「エヴァライフ」の一助となれば幸いだ。
最後に、有名なセリフと、シンエヴァ予告に記載されていた言葉で、お別れしたい。
父に、ありがとう。
母に、さようなら。
そして、全ての子供達に
おめでとう。
さらば、
全てのエヴァンゲリオン。