どんな時にも希望はあるらしいのでヱヴァQを解説する①
皆さんこんばんは。新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、死者・感染者数は増え続けている。いつテレビを付けても、大体コロナウイルスについて報道している。そんな中、四月の初め、日本で緊急事態宣言が発令された。
緊急事態宣言。
その言葉を聞いて、このシーンを思い出す有識者の方は大勢いるだろう。正確には劇中では「非常事態宣言」だが、状況は同じだと思われる。つまり、今の世の中は、目の前に十隻の護衛艦を瞬殺した使徒が迫っているのと同じ状況なのである。
さて、話が脱線した。4月17日、私のタイムラインに、庵野秀明監督直筆のメッセージが流れてきた。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版「序」「破」「Q」をYoutubeで無料公開するというのである。
劇中の運命を仕組まれた子ども達と同い年である私は、この話に興奮を抑えることができなかった。TV版リアタイ勢には遠く及ばないが、私だってエヴァファンの端くれである。エヴァが大好きなのだ。
そして公開から三時間後、時間ができた私は「序」から一作ずつ見返した。どれも次回予告が本当にただの予告にしか過ぎないことを痛感させてくれる素晴らしい作品であり、シン・エヴァンゲリオン劇場版への思いは募る一方であった。
だが、ここで一つの疑問が生まれる。新劇場版第二作「破」で、ヒロインの一人である綾波レイを救うため、再びエヴァ初号機に乗った碇シンジ君は、自分の意思とは関係なくサードインパクトを引き起こしてしまう。E計画の主任責任者・赤木リツコは諦観し、シンジ君達エヴァパイロットを指揮する葛城ミサト大佐は「行きなさいシンジ君!」と背中を押す。初号機が疑似シン化形態へと変貌を遂げ、世界の終わりが始まる中、それは突如終わる。
視聴者が宇多田ヒカルの歌声で安心しきったところに、この少年が赤い槍(カシウスの槍)を投げ込んだのである。槍は初号機に突き刺さり、覚醒は停止。その正体は、ゼーレによって生み出された少年・渚カヲルと、その乗機・Evangelion Mark.06 。エヴァを見るのが初めてでない人は、TV版のあのシーンを思い出し(後述)、初めての人は何が何だか分からぬまま、ミサトさんの快活な声で語られる衝撃の次回予告を目にする。
ここまでが、ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qに至るまでの大まかな流れだ。ここからいよいよヱヴァQの解説を始めようと思う。
まず動画の07:48まで見ていただきたい。ここで繰り広げられているのは何か。
そう、有名な「US作戦」である。エヴァンゲリオン改2号機、そして同8号機が周回軌道に投入され、棺に封印されている初号機を回収する作戦である。
こちらの解説を読んでいただければ、如何に宇宙工学的に納得のいく作戦であったかが理解できるであろう。しかし、それではこの記事を作る意味が失われてしまうので、あくまでもアニメ映画として見た解説をしたい。
冒頭、カメラを手で直した後(手ぶれのような揺れが画面にあったことから推察可能)、徐々に画面中央に星型のブースターらしきものが見えて来る。画像のセリフの前にリツコ、並びに男性オペレーターのセリフから、「ポッド2ダッシュ」「ポッド8」という単語が聞こえる。Qを初めて見る方にとっては、というか8年前このシーンを初めて見た我々は、それが何なのか上手く理解できなかったと思う。「破」ではマリ(それも最初は分からない人がいたと思う)がエントリープラグ内にいるシーンから始まり、エヴァがあることが分かったが、今回は
先の画像の1分後でもエヴァらしきものが何一つ映らない。代わりにいつもの赤く染まった地球がお出迎えしてくれるのみだ。
しかし。
このシーンで、初見の人は安心したことだろう。シンジ君と同じ感情を抱いたかもしれない。
ヘルメットを被り、顔は分からない。
しかしながら、直感的に、この画面に映る人が「アスカ」――即ち式波・アスカ・ラングレーだと理解しただろう。「破」で悲劇的な最期を遂げたと思った彼女は、しかし生きていたのだ。安堵し、同時に「何で生きてるの?」と疑問が生じたファンも多かったはずである。
だが、上2つの画像の白囲い部分に目がいった方も多くいたのではないか。「破」での惨劇を思い起こさせる、プラグスーツの補修跡。というか、あの一体成型で割と中もしっかりした構造になってそうなプラグスーツが、こんなガムテープのような応急処置で実戦運用に耐えられるようになるとは、と私は驚いた。
そして、自動防衛システムの質量兵器が妨害に入る。このシーン、瞬間的には誰が設置した自動防衛システムか分かりづらいが、十分に推察可能である。恐らく、初号機を棺に入れて宇宙に放り出した組織。わざわざ取りに行くくらいだから、ヴィレでないのは明らかだ。
とすると、14年の間に変質してしまった特務機関NERVであると考えるのが妥当であろう。長い空白の一部を描いているように見える「破」最後の次回予告で、シンジ君ごと初号機が凍結されたシーンが確認できるので、それに従うならば、凍結された初号機を、シンジ君ごと、覚醒を防ぐために封印、あるいは地上の人の手からNERVが逃がした、と考えられる。このNERV説は、直後の叫び声で確信に変わる。
こちらである。字幕では〔飛行音〕となっているが、どう考えても叫び声だろう。この画鋲みたいな飛行物体について少し解説する。
ヴィレ、つまりアスカ達の勢力がコード04Aと言って識別するネーメズィスシリーズ(後述)である。だが、これは同時にエヴァである。正式名称はEvangelion Mark.04A。パチンコで登場したエヴァ4号機とどのような関係があるか全く不明であるが、ともかく人型でないエヴァだ。このMark.04AはまずアンチATフィールドを持ち、
散弾を用いて攻撃する。
その威力は中々のもので、後に大気圏突入という重大な任務をこなしてくれたシールド(?)を、
易々とハチの巣にし、破壊した。エヴァのいつものライフル並の威力がありそうである。ようやく敵っぽいのが出てきて、絶対防壁であるATフィールドが破られ、一気に緊張度は高まる。「この画鋲何だ?」「なんでATフィールド破られるんだ?」「てかこのシールドっぽいものの中身は?」最後の質問の答えはすぐに「現れる」。
エヴァ2号機!!!!!!!???????!!!!!!!!??????????????????????????? ←大体このように、初見で驚いた人が多いだろう。「破」の終盤でマリが登場し、ビーストモードとなって酷い戦いを演じたあの2号機。あの時切断された左腕は何だかゴツいものに変更され、右側の目2つは義眼のようだ。ガンダムエクシアリペアを彷彿とさせる。
さらに驚きは続く。
アスカ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????????????????????????? そう、アスカである。直感的に前のシーンで気づいてはいても、いざヘルメットが取られて本物のアスカが現れると、やはりシンジ君と同じ気持ちだ。容姿も、眼帯以外変わった様子は見られない。あれ、さっき14年って....。でも、眼帯以外何も変わってない...?(後述)
ちなみに、アスカが襲撃されているときにマリが呑気に歌っていた曲は天地真理さんの「ひとりじゃないの」である。是非原曲も聴いてみていただきたい。
さて、アスカはあの叫ぶ画鋲を難なくかわし、それを遠方からの射撃が撃ち抜いていく。
このアスカの威勢を見て、「いつも通りだ」と、さらに安心したファンも多いのではないだろうか。
ここまで音声のみの出演だったマリこと真希波・マリ・イラストリアスもようやく顔を出す。マリは新劇場版シリーズから追加された新キャラクターであり、貞本エヴァ(漫画版エヴァ)でもシンジ君のお母さんと共に登場するが、詳しい正体については数々の考察があり、判然としない。今はカットする。
さて、多数のMark.04Aを撃墜し、アスカが上画像のセリフを放つ。
「フラーレンシフト」。これまた意味のよくわからない単語だが、推察可能でもある。
この記事の画像の中に、ジオデシック・ドームというものがある。ここからイメージを広げていきたい。画像で示すならこうである。
上画像、境界部を含む青斜線部分:最終防衛エリア89。赤矢印:アスカ 初:初号機の棺 といった具合だ。つまり、
冒頭、ポッド2ダッシュがエリア88に侵入→作戦領域への降下開始→自動防衛システムの質量兵器による迎撃。この時点で、最終防衛エリア89に進んでいると考えるのが妥当である。→Mark.04Aの攻撃。これがフラーレンシフトであるのではないだろうか。そもそもフラーレンとは、炭素原子のクラスターのことを指す。炭素原子をMark.04Aだとすれば...無理矢理に見えるかもしれないが、04:23で一瞬映る背景に、撃墜されたことを示す火の玉が最低3つは確認でき、その後も撃墜数が増えていったことを考えると妥当ともいえる。画面外にも撃墜された04Aがおり、射撃の回数も映像で確認できるより多ければ、という仮定も加味すると、十分に2号機を「フラーレン」の構造のように包囲することは可能であり、04Aの迎撃段階を「フラーレンシフト」と呼んだのだろうと思われる。であれば、多くの火の玉の中を抜けてからアスカが「フラーレンシフトを抜けた!最終防衛エリア89を突破」と言ったのと整合性が取れる。
さて、話を本筋に戻す。初号機の棺が移動していることを確認したアスカは、
ワイヤーを棺に向かって放ち、
ウインチユニットによりワイヤーを巻き上げて棺に取り付く。義腕であれば元の腕と同じ機能を復活させるためのものなのが当然だが、ここでワイヤー発射・ウインチユニットの機能しかない腕を装備していることは、新劇場版:QがTV版や旧劇のように、エヴァが生体的な、兵器というよりは人造人間である面を押し出すのではなく、あくまでも一種の兵器であるという面を押し出しているように感じる。それは、後に3度も左腕が換装されたことからも伺える。
さて、棺に取り付いた2号機は、大気圏突入のため減速を開始。
燃焼をすべて終え、ブースターを投棄し、
ミサトへ報告。さすがのアスカも、すさまじいGに疲れ切ったご様子である。作戦はこのまま終了し...........ない。
2号機「すまんな、パターン青や。あ、多分青なんやで?」 なぜ多分かというと、Blood TypeとBLUE の間に注目してほしい。「=」これではないのが分かる。ニアリーイコールと同じ意味合いであろう。その正体は.....
この白い囲いの中の円盤、Evangelion Mark.04B である。一見すると04Aのボディと共通した作りだが、推進器のような突起が少ない、コアが(少なくとも見える限りでは)露出していないことなど微妙に異なる。攻撃方法は叫ぶ画鋲とは全く異なる。棺の中に格納されていたフィールド反射膜(オペレーターのセリフより。ここでのフィールドとはATフィールドであろう)を展開させ、
光のようなATフィールド?を膜で散々反射し、
それを照射するというもの。映像を見る限り、小学校の実験でやった、太陽光を虫眼鏡で収束させて紙を焼くアレと同じような原理で攻撃していると思われる。アスカのATフィールドが光を中和していないあたり、またアンチATフィールドを持っているのだろうか。描写が少なく、解説しきれず申し訳ない。
そしてこの威力。せっかくの義腕がボロボロである。非常に高い命中率を誇るマリに援護を頼むも、
マリは高度不足のために離脱。この直後アスカは「役立たず!」と発言しているが割と理不尽だ。何故なら、ミサトは襲撃前に「ポッド8は高度不足のため、再突入までの96秒間だけ援護可能。それまでにケリをつけて」とアスカに言っているのである。いくら襲撃やGが激しくとも、直前の発言を忘れはしないのではないか。
ともかく、マリの言う通り「セルフサービス」で04Bを倒すことになったアスカだが、本体は反射膜を滑って逃げていく。その間にも降下角度が維持できず、機体が分解する危機に陥り、しかしミサトからは目標最優先と告げられる。おまけに、
激しい攻撃である。空軍のエースとしてかつて名を馳せたエースパイロットでも、この状況では八方ふさがりだ。たまらずアスカは、彼の名を叫ぶ。
覚醒したバカシンジ、もとい初号機はあっという間にビームで反射膜を焼き切り、04B本体に到達。撃破したのだ。呼んだら本当に何とかしてくれるとはさすがに思っていなかったのだろう、アスカは
この表情である。
ここでビームが出た裂け目が映る。注目すべきはその目。新劇場版では、このような丸い、人間の目のように初号機の目が描かれることはそれまでなかった。疑似シン化第二形態でさえ、ギリギリ初号機の細長い目の形を維持していたように思える。こんな丸い目は、記憶の限りでは「使徒を...食ってる...!?」以来だ。「Q」終了段階では、とても再起動するとは思えないが、万が一再起動した場合、初号機の目がどのようになるかも気になるところである。
そんなバカシンジを待つのはこの男、運命を仕組まれた子どもたちのニューウェーブ・渚カヲルである。
カヲル君とシンジ君の初対面と言えば、このシーンがあまりにも有名だ。
この先、どのような形で二人が邂逅するのか。そのシーンも、近日中に解説したい。
今回はここまで。長々と読んでくれた読者諸兄には感謝のほかない。