どんな時にも希望はあるらしいのでヱヴァQを解説する②
前回のあらすじ アスカ「バカシンジ!」→シンジ君の無言ビーム→アスカ「」
今回解説するのは07:48~25:22。まず一度見てきていただきたい。
さて、シンジ君が目覚めた。シンジ君が納められている箱、第6の使徒戦でシンジ君が納められた医療用ポッド等に似ていたり、画面端の、模様のあるエントリープラグ状の物体は、
第9の使徒戦後、アスカが封印されていた場所にも同じものが確認できる。恐らく、封印に関係する棒なのではないだろうか。数が多いほど強力に封印できるのだろう。
兵士に警戒されながら担架で運ばれる。女性スタッフが色々体の具合を質問してくるが、この時点で名前は字幕ではサクラである。
サクラ。苗字ではなく名前である。
ようやく到着した部屋。部屋かこれ? この雰囲気を見て、すぐに船の艦橋(戦闘、航海の指揮をする部屋)だなと気づく方は少ないだろうが、上画像の「操舵」や、その前の青葉のセリフから、なんとなく船であるというのは推測できると思う。
いつものお二人、青葉と日向。心なしか老けた気がする。
このピンクの髪の子が、冒頭場面から声のみの出演をしていた北上ミドリである。 右端に少し映っているのは多摩ヒデキ。
画面左の男性が高雄コウジ、右の女性が長良スミレ。先の画像の二人(北上・多摩)と合わせて「Q」初出のキャラクターだ。この上の三枚の画像に映る計6人の目線の先にはシンジ君がいる。
初対面の人達にめっちゃ見られ(睨まれ)て困惑するシンジ君。彼をよそに、ミサトはリツコに尋ねる。
ここも、同居した仲なのに何故確認する必要があるのか、このシーンだけでは分からないが、理由はある。後述する。
リツコの回答も、(ほんとに本人かどうかはともかく)物理的情報ではシンジ君であるという、何か含みのあるものだ。
ニアサー時。初見の人はなんのこっちゃ?となるだろうが、これは「ニアサードインパクト時」の略だ。純粋なサードインパクトではなく、ニアとついていること、また「破」でカシウスの槍により初号機が強制停止したことから、「破」でリツコの言った世界の終わりは避けられたようだ。
本作初出の新アイテム「DSSチョーカー」。詳しい説明が、この後のQで唯一の説明パートと言ってもいい部分で語られるので、そのシーンになったら解説する。
優しそうなサクラでさえこの発言。シンジ君への当たりが強い。
シンジ君が頭の中疑問符だらけになっていたその時、またしても「アレ」が訪れる。
パターン青。ネーメズィスシリーズ。Evangelion Mark.04Cのお出ましだ。04Aから今回の04Cまで、全てNERVの差し向けた敵だとすると、NERVはかなり精密にヴィレの動きをつかんでいると見られる。内通者がいる様子も全く描かれていないため、レーダーによる観測のような手段でNERVはずっとヴィレの動きをモニターしているのだろう。
そしてミサトさんのこの顔。「Q」を通じて私が一番好きな顔だ。かっこいい。よく見ると、ミサトさんのコートの色は恐らく「序」「破」でミサトさんが着用していたジャケットの色とほぼ同じであったり、髪型が変わっていたりと、細かい変化に目が行く。言及し忘れたが、美しく長い金髪をリツコはバッサリカットしていた。心境の変化なのか、動きやすくするためか。
この画面で注目することはあまり無いと思われる方もいるだろうが、私はモニターの使用言語に注目した。すべて英語なのだ。NERVの本部の作戦指令室を思い出してほしい。「警告」とか、「ヤシマ作戦発動中」とか、ほとんど日本語表記での警告だった。状況が同じなら、今回は普通に日本語で「全艦 第二種戦闘配置」と書かれるはずだ。しかし、この画面では「All Stations: CONDITION Ⅱ」と英語。
ここから推察できるのは、ヴィレが多国籍組織であるといこと。つまり、日本のNERVメンバーだけでなく、ユーロ支部やその他の大陸のNERVのメンバーの寄せ集め、または志願兵ということだ。
もちろん邪に考えれば、エヴァという作品の海外輸出のためわかりやすくしたとかそういう風にも捉えられるが、あくまでもこれは「ヱヴァQ」の解説であるので、作品を囲む環境についてはどうでもいいのである。
そして現れる彼らの艦艇たち。白く囲んでいるのは空母―航空母艦だ。形から現代のアメリカ海軍が持っている原子力空母と同サイズであると考えると、単純に真ん中の船は約2kmはあることになる(現在の原子力空母は1隻当たり約300mである)。相当なサイズだ。現代にこんな船は存在しない。
こちらも多くの数のヘリコプター。
こちらのヘリコプターだと想定してコストを考えると、1機約24億円であるので、画面で確認できる14機で、占めて336億円。とんでもない価格だ。
こちらは個人的に好きなカットだ。300m級の巨大な空母を、パイプラインを乗せるためだけに贅沢に使用している。現代ではこんなこと考えられない。
続いて現れるエヴァ8号機。これが「Q」でのエヴァの一般的な格納庫と検討が付く。「序」「破」と違い、ゴツい高速ケージに立ったまま格納されておらず、円柱状の格納庫でエヴァが横たわっている。
後々気づくことだが、このカット中央に肋骨のようなパーツが確認できることから、8号機は外装の換装の最中なのであろう。「序」のヤシマ作戦直前に初号機をG型装備に換装した際も初号機がLCLに浸されていたことから、エヴァの装備・外装換装には予めエヴァがLCLに浸される必要があると考えられる。
そして伊吹マヤのお出ましだ。「序」「破」の柔らかい印象とは対照的に、キレッキレの辣腕振るう上司になっている。髪型も、以前から尊敬しているリツコに合わせてだろうか、短髪になっている。
総員戦闘配置に付き、じわじわと戦いが迫る中、例のアレが姿を現す。
エヴァ初号機。一瞬しか映らないが、目を閉じ、少なくとも起動している様子は見られない。シンジ君はこの時初めて初号機が近くにあることに気づく。
TV版で初号機からサルベージされた時と同様、自分が初号機から救出されたという認識は薄いようだ。
そして現れる赤い光の柱と、輸送艦に乗せられた封印に使われると思しき赤い棒。現代の輸送艦の全長は優に200mはあるので(アスカの時は縦に長い部屋で封印されていたので不明だが)シンジ君が目覚めたときにあった同じ棒よりは間違いなく大きい。そう考えると、これは初号機封印のための赤い棒なのではないかと推察される。結局この棒をどうしたのかの描写がないため、推測の域を出ないが。
青葉が、04Cのコアブロックは擬装コクーンに潜伏中だろうとミサト・リツコに伝える。これがどんなものかは、コアブロックが擬装コクーンから出たシーンで解説する。
「序」「破」と変わらず、リツコはミサトさんを窘める。ミサトさんは常に無茶をしてきたのである。
このシーンのミサトさんもかっこいい。片目しか確認できないのがさらにかっこいい。しかし言っていることは突拍子もない。
新キャラの3人が異議を唱え、高雄は諦観。前作でも似たようなリアクションを見た気がする。ただ、青葉や日向が何も言わないあたり、ミサトさんとずっと一緒にやってきて慣れているのだなぁとしみじみ感じる。
しかしミサトさんはやると覚悟を決めているようだ。主機への点火にアスカと改2号機を使用。点火場所の結界密度(後述)が高いらしいが、アスカは気にせず発進。
シンジ君「アスカ?」
そう、視聴者と違ってシンジ君は知らないのだ。目の前でエントリープラグを真っ二つにされたアスカが生きていることなど。
このときのアスカのセリフで、正式にこのエヴァが「エヴァ改2号機」であると分かる。前回でも話したが、やはり左腕は換装可能なようだ。
窓から泳ぐ(?)改2号機を眺めるシンジ君。このシーンの改2号機は、以前エヴァの公式グッズ販売サイトでも、フリーの壁紙として配布されていた。
このシーンで何の疑問もなく、改2号機とアスカに思いを馳せるシンジ君だが、「破」で大破した2号機と対面し、中からシンジ君に呼びかけたのはマリである。マリについては何も考えなかったのだろうか。まぁ、死んだと思っていたアスカが生きていた驚きと嬉しさでいっぱいなのを考えれば仕方ないか。
呼びかけるシンジ君に対し、ミサトさんは忙しくて答えられない。無視しているのではないと信じたい。
ここで解説するのはアンカリングプラグ。
エントリープラグと違い、アンカリング(英語で書けばanchoring)しているプラグ、ということは、この艦艇に固定されたエントリープラグなのだろう。アンカリングプラグがエントリープラグと類似したものであるという証拠のカットはもう少し後でお見せする。
さて、初号機がすぐ近くにあると分かったシンジ君は、アスカの作業を手伝うと進言する。自分が眠っていた間に何があったか分からないシンジ君からすれば至極当然の発言である。
死んだはずのアスカが生きていた。そのアスカが2号機で作業をしている。そして、自分の乗機である初号機はすぐ近くにある。
しかし。
彼の発言に北上ちゃんはこの顔である。リツコも「エヴァに乗る必要はない」と一蹴。
この船で何かをするために自分がここに呼ばれたと思っているシンジ君。
この直後のセリフが大きな意味を持つが、ここから既に違和感がある。字幕では普通に「碇シンジ君」と呼んだようになっているが、三石琴乃さんの言い方は、「..碇...シンジ君..。」である。何かためらいの意思があるように感じる。是非本編を確認していただきたい。
最後の砦・ミサトさんもこの顔でこのセリフ。アスカが生きていたことを先に知っていたとはいえ、「破」から「Q」に至るまでについての情報量は、視聴者もシンジ君も大して変わらない。「破」での次回予告だって、いざ「Q」を見るとあまり役に立っていない。そう考えると、1視聴者としてはシンジ君に同情せざるを得ない。
このシーンを見た多くの人が、「破」終盤のミサトさんのセリフを思い出したことだろう。
「行きなさいシンジ君!誰かのためじゃなくていい...自分自身の、願いのために!」
それが今では
これである。ますます、何があったのか気になるばかりだ。
ともかく、これを言い終わったと同時にミサトさんたち主要員は戦闘艦橋へと移動した。シンジ君と、彼を冷たく見つめるサクラだけが後に残った。
このセリフが、アンカリングプラグがエヴァのエントリープラグと類似したものである証明の一助になると思う。エントリースタートをエントリープラグ以外で言うだろうか。
外の景色が映るまでのモニターの変化も、エントリープラグと似通ったものだ。この船の正体についてのより詳しい解説は、③で行いたい。
この主モニター点灯と同時に、曲の開始22秒地点から流れ始めるDark Defender =3EM05=。たまらなくかっこいい演出だ。そして、
改2号機が水中用モーターから、さらに通常の左腕に換装。今度は前回のものと比べて圧倒的に普通の腕である。指関節がグニャグニャしていたが。
このカット直後の青葉のセリフを借りるなら、巡洋艦が「蒸発」した。
この蒸発シーンについても様々考察が交わされていた気がするが、北上のセリフから推察すると、この光はエネルギーの柱であり、触れることで堅牢な巡洋艦が溶けていったことから、「動く使徒のビーム」なのではないかと私は推測する。
上画像のシーンの前後でリアクターが爆発したり、空母の上に乗せられたパイプが炎上したりしているが、気になったのはここ。
「万事休すね」とリツコが本当に言うだろうか。投げやりにもほどがある言い方ではないだろうか。字幕の誤植だと信じたい。
お次はこちら。アスカの掛け声とともに腕を振るう改2号機。赤暗い海の中で少し見えづらいが、前回のシーンから左腕だけでなく胴体の外装も変更されていることが確認できる。ちなみに公式設定では、US作戦時の改2号機が「β」、それ以降のこの胴体の外装に換装された改2号機が「γ」であるとされている。
フライホイールについて少し解説する。車に詳しい方ならご存知かもしれないが、フライホイールとはエンジンの回転数を安定させる機構である。ただし、ここで登場するフライホイールは、これ自身がエネルギーを生み出しているようにも取れる描写があり、何とも言い難い。
さて、時空間制御と立体式操舵。途端にSFらしい単語が飛び出してきたが、恐らく説明するより飛ぶシーンを見た方が分かりやすいと思う。今は割愛する。
上画像の説明の直後に、ミサトさんがさらりと「ATフィールドを展開」と発言していた。どうも発信準備が整うにつれて、この巨大な船がエヴァと似通った機能を有していることが明らかになってきている気がする。
そして先ほどのフライホイールは回転数が上がり、多くのパイプから供給されたエネルギーによってついに臨界へ。
フライホイールが(おそらく)主機と接続され、
主機、つまり初号機にアスカが点火。
一気に雲がはれ、艦隊を包んでいた氷河は溶け、光の柱をも飲み込む凄まじい爆発?エネルギーの流出?が起こり、
この船の名がようやく明かされる。「ヴンダー」。
恐らくこれが、時空間制御を用いた立体式操舵。「Q」の映像内の描写だけで簡単に言い換えるなら、「ヴンダーによって僚艦を浮かせ、それらを空中でコントロールする」ということだろう。先の画像でヴンダーの大きさに大体見当をつけたが、いざ全体が見えてくるととんでもないサイズだと改めて実感させられる。
しかし発進後すぐに、擬装コクーン内のコアから伸びてきた紐みたいな触手が主翼を貫通。あのカット、一瞬ヴンダーがエヴァと同じように出血しているようにも見える。そして後から分かるが、上画像左側の繭のようなものの中に初号機がいる。
しかしミサトさんはダメージに構わず艦を倒立。倒立?
これに何か既視感を覚えた方はいるだろうか?
この叫ぶ画鋲と同じではないか?
ヴンダーとEvangelion Mark.04A。飛行する原理は同じなのかもしれない。
そして引きずりだされる04C。この白い六角形の板が、擬装コクーンだ。目視で確認できないようになることから、現実の世界でいう光学迷彩的な機能を有していると考えられる。
また、2019年7月6日に「0706作戦」と銘打たれ、シン・エヴァンゲリオン劇場版の冒頭先行上映があった。リアタイできなかった方はYoutubeにあるので、確認してみてほしい。
その冒頭シーンの中でも、擬装コクーンが出て来る。しかも、より分かりやすい形で。一見すると何もないパリ旧市街と青空。それが、突如真っ白になって六角形の板となり剥がれ落ちていく。文章が下手で申し訳ないが、現代の光学迷彩よりかなり高性能だ。映像で確認していただきたい。
そして取り舵いっぱい、04Cを振り回すヴンダー。何が何だか分からないが、現実の戦闘の枠に全く囚われないエヴァの戦闘描写が私は好きである。
主機からの給弾用回路を開き、エネルギー貫通弾を発射するヴンダー。04CのATフィールドを破る威力だから、04B倒したあの無言ビームと同等の破壊力を持っていそうである。
主砲は次々と命中し、04Cのコアを破壊。
おなじみ、形象崩壊と同時にでてくる十字の光をバックにヴンダー・僚艦が旋回。
撃破した彼ら自身が勝利に驚く中、高雄から思いもよらない人物の名前が飛び出してくる。
加持リョウジ。
NERV特殊監査部所属の諜報員。個人的にかなりイケメンだと思うキャラクター。「加持の話より」というくらいだから、つまりミサトさんの話題を二人の間で出すくらいだから、加持と高雄は旧知の間柄なのであろう。
「Q」を通して加持は登場しなかったが、シン・エヴァで登場することを願ってやまない。
リツコのセリフ。何故まさに?となる人もいるかもしれない。
ヴンダーは、ローマ字表記をすればWunder。
その意味は、ドイツ語で「奇跡」。
擬装コクーンにいた敵を殲滅。乗員も定数に満たず、艤装作業も完了していない、そんな中で勝利を勝ち取る。
「序」や「破」で奇跡のような作戦成功を収めてきたミサトさんが艦長になるのに相応しい名前であり、その「奇跡」こそ、後の「希望」を叶える大きな力となるのだろう。
シンジ君は何もできないまま、ぽつんと立ち尽くすばかり。
今回はここまで。
いかがだったであろうか。発進までの作業は、間違いなく映像を見た方が楽しめる。冒頭においたリンクから、もう一度見直してほしい。
それではまた。