どんな時にも希望はあるらしいのでヱヴァQを解説する⑤
前回のあらすじ
「全ては君が招いたことなんだよ、シンジ君。」
この記事を書く前にダッシュボードというものを確認したら、何とたった四つの記事で合わせて120回以上もビューをしてもらっていた。本当にありがたい。
この記事と次の記事、そして前回冒頭で触れた4.5「人類補完計画について」で、エヴァQについての解説は終わりとなる。もともと96分の映画なので、そんなにたくさん書くこともないだろうと持っていたが、「序」「破」のもの、手書きのものを合わせて使用するスクリーンショットは計415枚にもなってしまった。(著作権については最後の記事で触れる。)
この記事を書く前の日、カラーの公式チャンネルで公開されていた新劇エヴァの公開が終了するというので、次回の分まで急いでスクショを撮っていた。物語が結末へ進んでいくにつれ、どうしても旧劇や、貞本エヴァとの共通点が見えてくる。エヴァの物語の骨子となる重要な単語・「人類補完計画」。やはり物語の行きつく先は、その計画の遂行。そんな気がする。
もちろん、新劇場版なのだから、これまでとは全くストーリー展開をして欲しい気もするが。
さて、話が長くなってしまった。ここから今回の解説に入る。
英字タイトルのあと映し出される、荒野とひしゃげた水道管。
直後の、佇むカヲルの背景がビルの瓦礫のようだったことから、おそらくこの水道管はジオフロント内の、加持が農耕に使っていたものと推測される。零号機の特攻・ニアサードで完全にジオフロントは焦土と化したのだろう。
そして映し出される、いつものゲンドウ・冬月のいるだだっ広い部屋。だが、カメラ側の方は破壊されている。
ゲンドウの目の前にあるのは、堅牢なケース。これを見たことがある人がいるだろうか。「破」を見ている人は確実に見たことがある。
そう、ネブカドネザルの鍵である。「破」において、加持が、仮設5号機と第3の使徒の大爆発により壊滅したユーロ支部から持ち出した、「神と魂を紡ぐ道しるべ」だ。
このネブカドネザルの鍵にどのような意味があるのか・どうやって使われているかについて、何の描写もない。旧劇・TV版に頼ろうにも、これは新劇初出のアイテムである。
それ故、各方面で考察が試みられ、どれもこれも的を得ているような得ていないような、仮説の上に想像を重ねたような、何とも言えないものだ。
なので、私なりにも解説をしてみたいと思う。ここではなく、4.5回で。待っていてほしい。
さて、シーンは切り替わり、シンジ君とその自室が映される。
カヲルに外界の様を見せられ、そしてその原因が自分にあると言われた。シンジ君にとって、それはとても信じがたいものだった。
シンジ君は、レイを助けたのだから、それいいんだと、合理化を図る。頭のどこかで、きっと責任を感じている。だから、その重みに耐えかねて、レイを助け出したという事実(?)に縋っているのだ。
一方その頃。例の容器に入っているアヤナミレイは、制服姿の綾波の姿を見る。水泡が激しくなり、それが切れたときにはもう綾波はいなかった。
そして。シンジ君は部屋を出て、アヤナミレイの元へ本を届けに行く。
だが、今回も彼女はいない。おそらく、先の綾波と接触したシーンの時にシンジ君が尋ねたのだろう。
今のシンジ君の唯一の拠り所と言ってもいいアヤナミレイに会えず、苛立ちながら歩くNERVの通路を歩くシンジ君。
途中のベンチに腰掛けていた冬月。シンジ君は一礼して立ち去ろうとしたが、冬月が声をかける。
このシーンで気になることは2つ。
まず、前回も触れた、簡略化されたNERV本部のマーク。「GOD'S IN HIS HEAVEN.ALL'S RIGHT WITH THE WORLD」は無く、代わりに例の紋様のようなものが追加されている。
前回、この紋様を「破」での画像とともに紹介したが、この後のシーンでもう一回、この紋様が出て来る。その時が来たら確認してほしい。
もう一つ。冬月のシンジ君の呼び方だ。名前や苗字ではなく、「第3の少年」と、そう呼ぶのだ。シンジ君のことをシンジ君だと疑ってはないだろうが、何か引っかかる呼び方だ。
シンジ君は冬月に連れられ、暗い別室へと移動する。二人はそこで、将棋を指し始める。冬月は「飛車角金」を落とす。
一応将棋のルールにのっとって説明すると、冬月は自分の手駒の内、「飛車」「角」「金(2枚)」を使わずにシンジ君と勝負すると言ったのだ。飛車角は攻防、金は王将を守るための要である。これが無いというのは、圧倒的に冬月が不利なのだ。
しかし結果はこうなった。「31手先」でシンジ君の詰みなのである。
冬月は普通の将棋を止め、将棋崩しを始めた。その最中、冬月はシンジ君にお母さんのことを尋ねる。シンジ君は、母のことはほとんど覚えておらず、物品のほとんどを父に処分されてしまったという。その彼に、冬月は1枚の写真を見せる。
写真の中央に映っていたのは赤ちゃんの時のシンジ君と、それを抱く母・ユイ。シンジ君は驚愕を隠せない。
旧姓は綾波。ちなみに伝えておくと、シンジ君の父・ゲンドウの旧姓は「六分儀」である(TV版で判明している)。
ユイは大学で冬月の教え子だったと語られる。
ちなみに旧劇・TV版では、冬月は大学教授であり、ユイの論文を紹介されてそれを読み、ユイと関わるようになった。
これをきっかけとして、冬月はゲンドウと知り合うことになり、最終的にはNERVの前身機関であるゲヒルンに所属することになる。
「Q」までで、冬月やゲンドウの過去についての描写は全然ないが、冬月の一言だけで考えると旧劇・TV版とある程度同様の過去だったのだろうと推察される。
シンジ君の母・レイは、初号機の制御システムになっている。
断言されたのは、新劇ではこのシーンで初めて。ただし、「破」の第八の使徒戦直前、シンジ君がエントリープラグ内で母のにおいを感じていたり、第十の使徒戦ではゲンドウが、ダミープラグを拒否する初号機の様子をわざわざ見に行ったりと、それを示唆する描写も見られる。
変圧器が稼働し、電源が復旧。「エヴァの極初期型制御システム」が映し出される。
余談だが、このエヴァの拘束具のような赤い構造物は、シン・エヴァの予告でも登場する。こちらである。
あえてこのシーンに映るエヴァについては言及を控える。
そしてこれが、エヴァへのダイレクトエントリー方式を提案し、自らを被験者としてエヴァの制御システムとして完成前の初号機に取り込まれる寸前の碇ユイだ。
実験の結果、ユイは自分の望み通り(4.5で詳しく述べる)初号機に取り込まれる。そして、彼女の生体情報だけがあとに残される。
それが、シンジ君が触れ合ってきた綾波レイたち。現実の技術では誕生しえないクローンである。
綾波レイ。それは、本当の人間ではない。
いや、正しく言うなら、同じ人間だが、産まれ方が違うのだ。
そして、冬月から衝撃の事実が伝えられる。
「序」「破」でシンジ君が交流をもった、シンジ君が命をなげうってでも助けたかったあの綾波レイ。
彼女は、初号機の制御システムとなったユイと共に、初号機の中に保存されている。
シンジ君はこの事実を聞いて絶望するが、実際シンジ君はレイを助け出した。零号機ごと第十の使徒に食われてしまったレイを、結果的にそのコアから助け出したのだ。
ただシンジ君の気持ちに立って考えれば、会えないしもう二度と乗れそうにない初号機の中に保存されている、と聞いてもとても助けたとは思えないだろう。
動揺したシンジ君が手を震わせながら、歩兵を引き抜く。
瞬間、駒の山は崩れた。
世界を壊すことは簡単。でも、壊れた世界を元に戻すことはできない。
この「ヱヴァンゲリオン新劇場版:Q」のサブタイトル。
You can (not) redo.
お前はやり直すことができる(ない)。
同じ言葉ではないが、サブタイトルがここで回収された。
シンジ君は失意のまま、一礼をして部屋を後にする。
それを見ていたかのように、電源が再び落ちる。
シンジ君はそのまま、来た道を戻ってアヤナミレイの部屋の前に戻る。彼は、アヤナミレイの読まなかった本を積み上げる。
ほどなくして、恐らくあの容器からアヤナミレイが戻ってくる。しかし、シンジ君に何も言いはしない。
シンジ君は、そんな彼女に本を読まないのかと尋ねる。
この返答を聞いて、シンジ君は激昂して積み上げた本を崩した。
ここでもシンジ君とアヤナミレイのすれ違いが、画面とセリフの両方から描かれる。
まず見ての通り、レイに縋りたいはずのシンジ君はアヤナミレイの方を向かずに問いかけ、彼女も彼の方を向かずに答えている。
そして、シンジ君のいう「綾波レイ」は、彼が命を張って助け出した方の綾波レイ。
一方、「アヤナミレイ」は、「綾波レイ」ではない。
綾波レイだと答えるなら、自分があの時助けたはずだ。
そうに違いない。あの時助けたのは綾波レイ。
だが、そんなシンジ君に都合の良い答えは返ってこない。この「アヤナミレイ」は、「綾波レイ」ではないのだ。
シンジ君は打ちのめされ、部屋の前を後にする。
アヤナミレイが呟く。「イカリ君....?」
薄暗く狭い通路をふらふらと歩くシンジ君。ミサトの、アスカの、サクラの、ゲンドウの、アヤナミレイの声が反響する。
何もしないで。アンタには関係ない。エヴァにだけは乗らんでくださいよ!エヴァに乗れ。知らない。
シンジ君を恐れ忌み嫌う者。シンジ君をただの道具だとしか思っていない者。シンジ君を知らない者。
不幸にも、シンジ君は彼ら全員に直接言葉を投げかけられてしまった。シンジ君の事を嫌う者はいても、同情したり、慮ろうとする人はいない。同居人、親代わりのミサトさんは冷たく突き放した。彼の同僚とも言うべきアスカは以前にもましてツンツンしている。
実の父親は、最早シンジ君のことを覚醒のためのトリガーとしか思っていない。
そうしてシンジ君は、宝物だったはずのカセットプレイヤーを、投げ捨てた。
しかし、傷つき、打ちひしがれたシンジ君の思いとは関係なく、「最後の執行者」は完成する。
初号機と酷似した外見にカラーリング。
そう、これがエヴァンゲリオン第13号機である。
ピアノを弾いていたカヲルも、第13号機の完成を察知する。
だが、周りの意見や指示など、シンジ君はとても聞ける状態ではなかった。
当然シンジ君はカヲルの、ひいてはゲンドウの言葉を拒絶する。
一度はもう乗らないと決めたエヴァに、綾波を助けるために再び乗り込んだ。血を吐きながら、それでも綾波を助けるために第十の使徒と戦って、綾波を引っ張り出し、抱きしめた。
なのに、その綾波は初号機の中に残されたまま。自分は助けてなかったのだと。今ここにいる「アヤナミレイ」は「綾波レイ」ではないのだと分かってしまったのだ。
エヴァに乗っても、いいことなんかない。怖い思いをして使徒と戦う。
なんで僕なんだ。怖い思いをさせるために、父さんはわざわざ僕を呼んだのか。
腕を折られ、頭を刺し貫かれ、腹に穴を開けられ、大切な人を救えず。
シンジ君はもう、絶望しきっているのだ。
そんな彼に、カヲルは言う。
「つらい感情の記憶ばかりをリフレインさせても、いい事は何も生まれない」と。
だが、そんな言葉にシンジ君の心は揺らがない。
いい事なんかもう何もない。カヲルの見せた世界は、もうどうしようもないのだから、と。
カヲルは答える。「エヴァで変わった事は、エヴァで変えてしまえばいい。」
しかし、シンジ君はエヴァも、ゲンドウも、ミサトさんも、何も信じることができない。エヴァに乗ってもいいことはない。父さんは僕を利用するためだけにあの時呼んだんだ。良い人だと思ってたミサトさんだって、あの頃みたいに話してくれなくなった。
それでもカヲルは、僕の事だけ信じてほしいと話す。
エヴァに乗れと話すカヲルを信じることはできない。信じたくても、乗ったら自分は死ぬのだ。首元のDSSチョーカーが発動して。その恐怖が、彼の心を固く閉ざす。
そんな彼に、カヲルは思いがけない行動を取った。
シンジ君に近寄るとDSSチョーカーに手を当て、ロックを解除してそれを首から取り外し、
それを自分の首元に装着した。シンジ君の心を閉ざした直接の原因を、取り除いたのだ。
ここで気になるのは、「DSSチョーカーをシンジ君の首から外し、そのまま捨てるなりなんなり出来なかったのか」という点である。
私はあくまでも映像の中の世界の描写に立脚して解説を行っていて、現実世界でのいわゆる「大人の都合」を考慮していない。なので、〇〇しないと物語の盛り上がりには欠けるとか、その後の展開に影響があるとか、メタ的な発言をするつもりはない。
今回も、それを重視して解説すると、「シンジ君の苦しみを僕が背負う」という意思表示のために、カヲルはチョーカーを自分の首に装着したのだと思う。
君の苦しみは、僕が背負う。
こうして、シンジ君に無理矢理にでも信じてほしかったのだろう。
カヲルや、カヲルを取り巻く人々の真の思惑を、考察や仮説なしには語ることは出来ない。ネタバレと邪推を組み合わせれば、カヲルはゲンドウ――つまりNERVのやり方の人類補完計画を第13号機と、セントラルドグマ最奥部の2本の槍によって阻止しようという目的を持っていて、それにはシンジ君の協力が不可欠だから、打算的にシンジ君の信用を勝ち取った、と言うこともできる。
しかしながら、これも仮説・考察の一つに過ぎない。例え劇中の言葉にのみ立脚しているにしても、これが正しいという保証は全くない。
だから、解釈は皆さんの想像力にお任せする。
思惑はどうあれ(そもそも思惑があったかどうかも分からないが)、シンジ君はようやく、カヲルに心を開いた。
このシーンも、心の距離を表している。ミサトさんやアヤナミレイの何倍も、カヲルはシンジ君に近づいている。傷ついているとはいえ、シンジ君はカヲルに心を開いていると、視覚的にも伝わってくる。
セントラルドグマにある、2本の槍。これを第13号機で手にすれば、世界を修復できるのだと、カヲル君は言う。
それを聞いたシンジ君は、カヲルなら、君ならそれが出来ると言う。
それにカヲルは、君となら、と言い直す。このやりとりが、個人的に私は好きだ。
第13号機は、ダブルエントリーシステム・つまり二人乗りだという。
カヲルは言う。シンジ君にまず何よりも必要なのは希望。そして、
シンジ君の事をなんでも分かるカヲル。
「いつも君の事しか考えていないから。」
シンジ君は、こうして、エヴァに乗ることを決意した。
懸架されるエヴァ第13号機。完成直後はあまりよく姿が見えなかったが、このシーンで第13号機の全容が明らかになる。
ヴィレの2機のエヴァとは、上腕部等どのエヴァにも共通する部分のみが共通していて、胴体の外装等は完全に異なっている。だが、胴体の太さは似通っており、零号機や初号機などのそれよりもマッシブな印象を受ける。
同時にプラグスーツを装着する二人。シンジ君の方は背中の突起に「α」、カヲルの方には「A」と書かれていて、配色も対照的だ。
そして、2本のエントリープラグが第13号機に挿入される。挿入口が従来の機械的なものではなく、光のフタになっている。そして、気になるのはこの次のカットだ。
このシーンで、カメラは第13号機の正面に向かうアングルで二人を撮っているはず。つまり、正面から見てシンジ君は「左」、カヲルは「右」にいる。
しかし、13αのプラグは正面から見て左から、13Aのプラグは右から挿入されている。
(いずれも劇中のプラグ挿入シーンと同じカメラの向き)
図解するならこうだ。
だがこうなると、正面から見てシンジ君は「右」、カヲルは「左」になるはずである。
演出なのかミスなのか。よく見ると気になる描写だが、気にしない方が幸せなのかもしれない。
ともかく、息ぴったりの二人は、第13号機を起動させる。
第13号機が起動したことは(何号機かのアナウンスはなかったが)ヴィレにも察知されている。
セントラルドグマへのメインシャフトを進む第13号機と零号機。
ここの少し不満げなシンジ君が、何ともかわいらしい。
ここで初めて、このエヴァの正式な名前が明かされる。「Evangelion Mark.09」。ちなみに零号機との違いは、頭部のカメラの大きさの違いである。零号機に比べてMark.09のカメラはかなり大きい。気になる人は、解説記事の③に該当のスクショがあるので、確認してほしい。
カヲルは、ヴィレの動きを警戒して自分たち以外にも彼女を寄越したのだというが、シンジ君はそんなもの二人で十分何とかなると不満げ。
「綾波じゃないのに...」
これについては最早語るまい。綾波綾波と、散々上で言ってきたのでそちらを確認してほしい。
メインシャフトを通過し、第十三号機のライトが点灯する。そこで見えたのは――
「Q」の考察をしている方々を大変悩ませた・悩ませている「インフィニティ」。確証はないものの、外界の様子をシンジ君に見せた時のカヲルのセリフからある程度の推察は可能な気がするので、4.5で解説したい。
そして、セントラルドグマ最深部への侵入を許さない天蓋が現れる。
カヲルは、この蓋を突破するための第13号機だと言い、シンジ君とテンポを、というか意思を合わせる。そして、
英語の部分直訳「目標物を確認 セントラルドグマ最深部の最終封じ込め印に到達」
このシーンでも、例の紋様が現れている。やはり封印に何か関係があるのだろうか...?
ともかく、第13号機の目が強く光り、上画像の直後、蓋が崩壊していく。
蓋は第13号機に破られた後、火花のようなものを出して消滅した。上画像のシーンではもうブロック状に分解された蓋がなくなっていることが分かるだろう。これが金属など実在する物質なのか、それとも使徒による何らかの道の物質なのかは判然としない。
ドグマの最深部中央に、手を伸ばしたままで動きが止まっている第二の使徒・リリスの骸が鎮座する。
「破」までのリリスとの相違点は、頭が無く(その時々で身長が変わる新劇エヴァの描き方を考えても)全体的に大きくなっている。
少し考察っぽくなってしまって申し訳ないが、旧劇・TV版の描写を参考に話す。
TV版で、衛星軌道上に現れた第15使徒アラエルに通常兵装では歯が立たないため、レイと零号機改によってロンギヌスの槍が第2使徒リリス(この時のNERV職員はアダムだと思っていた)から引き抜かれた。この瞬間、リリスの下半身が「生えてきた」のだ。
この描写をもとに考えると、14年の間に一度ロンギヌスの槍が引き抜かれたのではないだろうか。そしてリリスがあのような姿になり、何らかの原因で死亡(というか魂の消失?形象崩壊しない殲滅?)したのだろう。リリスについては、4.5でも少し触れたい。
そしてリリスの頭の付け根に、体を反らし、胴体中央に槍を刺している、白くなった「Evangelion Mark.06」。カヲルによれば自律型に改造され、リリンが利用した機体の成れの果てだと言う。当然、どう利用してどうなったのかは明らかにされていない。
第13号機・Mark.09は降下用のロープから降り(このロープはTV版で、零号機改が降下した際も使用されている)、骸骨が敷き詰められたセントラルドグマに立つ。
そしてシンジ君とカヲルは、2本の槍を引き抜くためにリリスに向かって歩き始める。
と、程なくカヲルが槍の違和感に気づく。「2本とも形状が変化して揃っている...?」シンジ君がその言葉に反応しかけた時、背後で爆発が起こり、第13号機がよろける。
そしてシャフトから――
エヴァ改2号機が一気に降下し、第13号機へと斬りかかる。ほぼ同時に、第13号機のかたに装備されていた「RS Hopper」が分離、ATフィールドを展開して防御した。
シンジがスピーカーで、アスカに呼びかける。
あれだけエヴァに乗るな、乗ったら殺すと言われておいてシンジ君が乗ったらそりゃ驚くだろうが、この人たちの対応とカヲルの対応を考えれば、前者の意見に従うはずはないのである。
だが、ヴィレ側からすればシンジ君のこの発言を受け入れることは当然不可能だ。ゲンドウや冬月と違って、シンジ君のニア―サードの影響をモロに受けたのだから。
激昂したアスカがもう一度斬りかかろうとしたとき、Mark.09が大鎌で迎撃。吹っ飛ばされた改2号機を追撃しようとしたMark.09を、弾丸が阻止する。
ドグマの壁の裂け目に陣取ったエヴァ8号機βによる狙撃だ。余談だが、このライフルの作りはUS作戦で使ったものと同一で、銃身がその時よりも短くなっている。
Mark.09が8号機による狙撃に釘づけになっている間に、改2号機がRS Hopperを2機斬り裂き、第13号機に再び斬りかかるも残存するもう2機が発するATフィードに阻まれる。
シンジ君がまたサードインパクトを起こすのかと問うアスカに、シンジ君がそれを否定してこう答える。
そして、
やり直せる。世界は救えるのだと。(ここでギャグだと思った人は私だけではないはずだ。「槍」があれば全部「やり」直せると...)
しかし、アスカはこのシンジ君を、「本当にガキだ」と吐き捨てる。
そんなアスカに「分からずや!」と叫び、その意思に呼応してRS Hopperが改2号機に攻撃。
背後からの攻撃で改2号機は吹っ飛ぶ。カヲルにも迎撃を手伝ってほしいシンジ君だが、カヲルは槍の形状が気がかりでそれどころじゃない。
一方、ドグマに放置されていた赤い十字架を盾に、Mark.09は8号機と交戦を続けていた。
ここで登場する新用語「アダムスの器」。この後何度か言及があるので、その時に解説・というか考察する。
いずれにしろ、まだMark.09は完全な「アダムスの器」になったわけではないようだ。
Mark.09から出ろというマリに対し、アヤナミレイはそれを拒否する。それにマリが、驚きの発言をする。
「アンタのオリジナルはもっと愛想があったよ?」
このマリの発言が事実だとするなら、(TV版の時系列に沿えば)アヤナミシリーズのオリジナルである碇ユイが、初号機に取り込まれ対外的には「死亡」した2004年以前にマリがある程度の年齢を迎えていて、しかもユイと交流があったことになる。この仮説が本当ならば、Wikipediaには28歳と書かれていたマリの実年齢はゲンドウとほぼ変わらないものとなるだろう。当然、公式からの情報がこのシーンしかないので断言はできないが。
その頃第13号機は、改2号機の攻撃を受け続けていた。RS Hopperが防御を続けるが、わずかなタイミングを見逃さなかったアスカによって、残存していた2機も串刺しにされてしまう。
ちなみにこの骸骨、全てエヴァだったものらしい。
※完成時追記。一応裏をとるために、骸骨全てエヴァだったもの説を調べてみたのだが、はっきりそう言った記事を見つけることができなかった。どこかで見た気がするのだが、裏がないため確証がない。本当に申し訳ない。 もしこの記事を読んでくれた方でその記述を見つけた人は教えていただきたい。
RS Hopperの爆発でよろめいた第13号機に、アスカは容赦なく、剣を分離して攻撃を加える。防御手段を失った第13号機は、それを手で受け止める!
発光する刃を、なんとか受け止める第13号機。アスカはフルパワーで第13号機を沈黙させようとするが、
良いところでバッテリーが切れる。バラエティーでもCMが入ってくるのと同じ、最高のタイミングで邪魔が入る。
英語アナウンスの直訳「省電力モードが有効になった。最大運用(つまり通常活動)の持続を優先させるためには、充電するかバッテリーを変えろ」
どうやらこの時代のエヴァは、活動停止しないか、省電力モードで最低限起動状態が確保できるものばかりのようだ。
シンジ君は、そんな省電力モードの改2号機を投げ飛ばす。
何故だか分からないが、アスカにとってRS Hopperに吹っ飛ばされるのと、第13号機に素手で投げ飛ばされるのでは意味が違うようである。でもこういう所がアスカらしくもある。
そして投下されるスペアバッテリー。形状はプロペラントタンクのようだ。中央の赤い円のところに腕を入れると、自動的に充電が始まる仕組みである。
そんな中、槍への違和感をどうしても拭うことができないカヲルは、シンジ君に槍の回収をやめようと提案する。
しかし、シンジ君はそう簡単には折れない。
描写は少ないものの、間違いなくシンジ君はカヲルに言われたから、その1点だけでエヴァに乗ったわけではない。
ミサトさん達ヴィレの面々に散々脅され、睨まれ、カヲルに外界の様をまざまざと見せつけられ。
助けたはずのレイは初号機の中で、目の前にいたのは別のアヤナミレイで。
絶望し、打ちひしがれるシンジ君を救う手段として、カヲルはエヴァに乗って世界を修復することを提案した。首のDSSチョーカーが外され、シンジ君は、ようやく踏ん切りがついた。「自分が壊してしまった世界を元に戻す」という決意を持って。
強迫観念に駆られてエヴァに乗っている、という意味では「破」までのシンジ君と共通するところだ。当然その重みは違うが。
シンジ君はレバーを後ろに引き、操作系統からカヲルを外す。と同時に、第13号機の目が黄色から赤に変化する。
(大体、エヴァの目が赤くなったりするとロクなことはない)
シンジ君はカヲルを無視したまま、完全に活動を停止しているMark.06の上に上る。
ここで疑問なのは、あまりにも第13号機とMark.06のサイズが違いすぎることだ。Mark.06が何十倍も大きくなっている。自律型に改造された時にこんなに大きくなったのか、なぜこんなに大きくなったのか、詳細は不明である。
それを見たアスカが、こんな言葉をマリに伝える。
AA弾。
それを装填し、マリが2発撃ちこむ。
しかし、大してダメージを受けた様子はなく、それどころか体内に取り込まれていく。
思うに、恐らくAA弾はATフィールドを持つエヴァに対して、実体弾よりも威力が高いのだろう。だから、アスカが許可するまでマリが使えなかったのだ。
だが直後のマリのセリフ。そう、この機体にはATフィールドが無いのだ。生物の自我境界・心の壁、ATフィールド。それがこの機体には無い。
しかしシンジ君はほぼ間違いなく普通の人間で、「序」でも「破」でもバッチリ初号機でATフィールドを展開していた。
だが前述のように、第13号機はRS Hopperというガンダム世界でのファンネルのようなものに攻防全てを委ねていたし、ATフィールドもそれが展開していた。
やはり、エヴァ第13号機の方が怪しい。この機体自体がATフィールドを持っていない。とすると......→後述。
ちなみに余談だが、このシーンで胴体から展開されるもう2本の腕の、手の甲にあたる外装と、初号機に取り込まれる時のユイの手の甲にあったものが似通っている。
現れたもう2本のうでと合わせて4本で、槍を引き抜くシンジ君。隣のカヲルの声も、充電中のアスカの声も彼には届かない。
しかし、カヲルの悪い予感は的中。シンジ君が引き抜いた槍は2本ともロンギヌスの槍に変化し、リリスの骸は破裂。大量の血があふれ出す。
そもそもロンギヌスの槍は一品物のはずである。2本も3本も普通の槍のように量産は出来ないはずだ。
もちろん、旧劇での量産型エヴァや「破」の仮設5号機のように、ほぼ同等の効力を発揮するコピー版もある。しかしそれらは全て、色か形状が違っていた。
だがシンジ君が引き抜いた(引き抜いてしまった)ロンギヌスの槍は、色も形状も全く同じに見える。
どこかにもう一本あったか、完全なコピーを生み出したか。詳細は不明である。
作戦指令室の中央にあった巨大な綾波(?)の頭部も同時に破裂し、周囲に血の雨を降らせる。そして、ゲンドウが呟く。「始めよう冬月」と。
今回はここまで。いかがだっただろうか。そもそも、このあとがきの部分まで読み切る猛者がいるのかどうかも怪しい。これを読むことができた貴方には勲章か何かを贈呈したい心持ちである。
一つ後悔があり、これまで5,000、6,000、7,000、8,000字ときて、今回急に11,000字になってしまったことだ。予定では9,000字だった。
まぁそんなことはどうでもいい。今回、TV版に繋がる描写が多くあった。これを機に、TV版の方を見直してみるのも一興かもしれない。
それではまた。(4.5を除いて)次回、完結。