地名と文字について気になったこと

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「逆行同化」による小字表記の変化例(泔屋窪)

この記事は、京都府京丹後市峰山町菅小字泔屋窪を例に、地名に見られる「逆行同化」(後に出現する構成要素の影響で前の文字が変化すること。音声学の用語の転用)の現象を見てみるものです。 はじめに 地名をどのように漢字で書くかは、自明のことではなく、場所によっても時代によっても変化しうる。そうしたなかで変化の要因が透けてみえるものがある。今回取り上げるのはその一つ、「逆行同化」だ。  逆行同化は音声学で使われる用語だが、文字表記の方面では、「後に出現する漢字の構成要素の影響によって

    • 常滑市の「たんぼ」(坦𫞙)の軌跡

      この記事は、愛知県常滑市大谷字「坦𫞙」の漢字表記の軌跡を追いかけたものです。 はじめに 「たんぼ」というありふれた名詞につけられた、あまりにも大袈裟な表記、そして見たことのない文字。 稀少地名漢字リスト(http://pyrite.s54.xrea.com/timei/)でその存在を知り、実際に訪ねてみたのがおよそ10年前、2014年8月のことだった。 当時は稀少地名漢字の住所情報をもとに現地を訪れて、実際にその通りの文字に遭遇できることがうれしく、そこでとどまって、そ

      • 大羅陽一氏の土地宝典に関する二論文の異同

        はじめに 土地宝典について知りたいとき、入り口として使えるのが、国立国会図書館のリサーチ・ナビであろう。 さて、その参考文献に大羅陽一氏の論文が掲げられている。 そのリンクをたどると、デジタルコレクションの館内限定であるため読むことができない。元の書籍を所蔵している図書館も多くはないため、アクセスの難易度は高い。 一方で、土地宝典については、大羅陽一氏の別の論文が雑誌『歴史地理学』に掲載されており、こちらはインターネットで閲覧可能である。 この二論文は別物というわけでは