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東南アジアでサッカーを活用したマーケティングが効果的な理由

現在開催中のAFF Suzuki Cup(東南アジアサッカー選手権)はタイとインドネシアによる決勝を残すのみとなりました。タイ代表では、チャナティップやティーラトン、ティーラシンといったJリーグでもお馴染みの選手も活躍を見せています。インドネシア代表にも若くてポテンシャルある選手が多く、見どころが多い大会ですが、ビジネス面でも注目しています。

ASEANのワールドカップとも言われるほどASEAN現地では爆発的な人気を誇る本大会は、多くの日本企業がスポンサーとして支えています。タイトルスポンサーのスズキを始め、全15社のスポンサーのうち約半分の7社が日本企業となっています。

多くの日本企業にとって、コストの安い製造拠点としてだけでなく、近年は経済発展により消費市場としても魅力的な東南アジア。これから人口増加、経済成長も見込めるこの地域においては、サッカーを活用してのマーケティングが非常に効果的だと思われます。その背景・理由をまとめてみようと思います。

理由1:圧倒的なサッカー人気

先ずは何と行っても、東南アジアでのサッカー人気の高さが挙げられます。もはや国技かの如く、所得の低い層から大富豪まで、子どもから大人まで多くの人がサッカーに熱狂しています。昔は英プレミアリーグを代表とする欧州サッカーへの熱狂がすさまじかったですが、近年ではそれだけではなく、自国の代表チーム・リーグ・クラブへの熱狂も高まってきています。

少し古いデータですが、東南アジアのほとんどの国・都市にてサッカーが人気No.1スポーツです。アジア全体で見ても、15都市のうち10都市でサッカーが人気No.1スポーツとなっています。

これだけサッカーの人気が高いので、サッカー代表戦は国をあげての一大イベントと化します。私も出張でよく東南アジアに訪れますが、代表戦の後の街の熱気は凄まじいものがあります。試合に勝った日には、大勢の国民が自国の国旗を掲げて街へ繰り出し、クラクションを鳴らし、叫び、大群で勝利を祝います。その騒然とした雰囲気は日本では経験したことのないものです。

そして、これだけ影響力の大きなスポーツ・コンテンツであるため、サッカーの試合に首相や大統領が普通に観戦に訪れます。過去に、招待いただいたベトナムやインドネシアでの代表戦で、普通に首相や大統領がいるのを間近で見て驚いた記憶があります。


理由2:実力者・名士が集まる東南アジアサッカー界

東南アジアサッカー界のもう一つの大きな特徴は、その国の実力者・権力者がサッカー界の中枢に関わっているという点です。皇族や王族、大財閥のトップ、軍や警察のトップなど、その国を動かしているような大物がサッカー界に多く存在しています。サッカー協会・リーグのトップでいること、サッカークラブのオーナーであることが、一つの大きなステータスとなっているのだと思います。

東南アジアでは、Know-howよりもKnow-who(誰を知っているかが大事)と言われるくらい、実力者・権力者・大手財閥等との人脈の有無がビジネスの成功に大きく影響します。サッカーをコミュニケーションツールとして、地場の実力者・権力者との関係値を構築することが、何よりも効果的だと感じます。


理由3:今後爆発しそうなポテンシャル

最後に、東南アジアのサッカーにまつわる環境は、今後爆発的に成長するポテンシャルを秘めていると思います。

ASEAN諸国は人口ボーナス期の最中にあり、2030年にはASEAN全体で7億人を超えると言われています。豊富な労働力が海外投資を呼び込むと同時に、中間層人口も増えて市場の拡大も期待されています。

そんな成長市場の中で、現地の大手企業・財閥が自国サッカーへの投資を進めており、それによる国内リーグ・クラブの発展は目覚ましいです。タイのように国のトップ選手が海外(日本)に出て活躍し始めるなど、次のフェーズに移行した国もあります。また、カンボジアにおいては、リーグ会社を新設し、CEOとして日本人のプロフェッショナルを迎えるといった改革も見られています。このような流れは、間違いなくASEAN全体のサッカーのレベルを押し上げ、更にその市場を活性化させると思います。

2026年のワールドカップから、出場国が32から48に拡大されることが決まっています。現状4.5のアジアからの出場枠も8に拡がります。そうするとASEAN諸国のワールドカップ初出場も現実味を帯びてきますし、もしそんなことが起これば、ASEANでのワールドカップフィーバーは2002年の日本でのそれを軽く凌駕すると思います。ASEANは2034年のワールドカップ招致も目指しています。ASEANが団結して大きな経済圏を創る上で、サッカーは間違いなく大きな役割を果たすのだと思います。

署名式に参加したFIFAのインファンティノ会長は「ASEANは数十年にわたる議論の末、ついに全員を団結させるトピックを見つけた。それはサッカーだ」とあいさつした。さらに「34年のW杯に向けた計画をうれしく思う」と話した。ASEANのリム事務総長は「サッカーは我々を一つのコミュニティーとして、より強く結びつける戦略的な手段になる」と強調した。



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