関広見の関-163
2024年8月17日 今年も令和の奇祭 関広見まつりが行われた。
この祭りの御神体は関広見I.C口の交通信号制御機である。
1.関広見まつりとは
岐阜県関市の広見地区で行われる夏祭りである。なぜか全国各地からある種のオタクが集うわけだが、まぁ詳しくは省略する。
この祭りはあくまで関広見地区の祭りであり、東海環状道の関広見I.Cを盛り上げが目的である(という建前)。
関広見ICの前には信号機のある交差点があり、これが有名な関広見I.C口交差点である。今回は本交差点について詳しく触れてみよう。
なお、中の人は信号機ファン(本当の信号機のファン)でありPではありません(念のため)。
2.関広見I.C口交差点とは
前述の通り、関広見I.Cからやや南に位置するT字交差点である。
どこからどうみても普通の信号機なのだが
ここには祭りの御神体である交通信号制御機が設置されている。ただの制御機であればそこまで注目を浴びることは無かっただろう。
「関-163」と記されていなければ。
3.交通信号制御機とは
当然のように信仰している制御機だが、これの正体をご存知だろうか。
御神体についてもっと詳しく知るべきではないだろうか。
と、いうことでまずはお勉強を。
交通信号制御機は交差点内の全ての信号灯器の灯火の切り替えを行う装置である。普通、「信号機」と言えば3色に光るアレを指すだろうが、アレに自動でランプを切り替える能力は無く、全て制御機が行っている。
制御機は信号機に欠かすことができない重要な設備である。
御神体の中を見ることは禁忌とされているため詳しくは言及しないが、コンピュータのほかにボタンや7セグ表示器などが内蔵された高価な機械である。
信号機の管理は各都道府県の警察が担っている。これは御神体上部の旭日章と、中央付近に貼られた「広告禁止」ステッカー(¥400)にある「岐阜県警察」の文字を見れば頷けるだろう。
岐阜県には3300弱の信号交差点があり、全てを一括で管理することは難しいため警察署の管轄エリアごとに番号を振っている。また番号は新設順に連番となっている。
関広見I.C口交差点はもちろん関警察署管内であり、偶然?にも163箇所目の信号交差点となった。よって奇跡的に関広見に「関-163」が設置された。
管理番号についてもっと知りたい方はこちらから
そんな御神体の詳しいスペックを紹介しよう。
①外観
広告禁止ステッカーが良いアクセントになっている岐阜県の制御機。
同じデザインのものは石川県でも見ることができる。
交差点番号「関-163」は正面と裏側に一箇所ずつ、広告禁止ステッカーは柱側の面を除く三面に貼られている。
②スリーサイズ?
いわゆるU形サイズに相当するため、中々の大きさである。
また鉄製の筐体であるため重量級である。
③銘板
制御機正面下部には御神体の情報が詳しく刻まれた銘板が設置されている。
さらに詳しく内容を読み解いてみよう。
御神体の血液型はU形である。
UTMS協会の規格に準拠しているU形の制御機となっている。
警交仕規(警察庁が定める仕様書)第231号に準拠した制御機であり、2009年2月に住友電気工業株式会社(現 住友電工システムソリューション株式会社)が製造した個体である。
余談だが信号機ファンであれば「関-163」のフォントだけでメーカーを特定できる。
④相棒(おまけ)
御神体の上にある…
コレ
赤い「災」の文字、天から災厄が降ってくるのか。
いえ、これは”交通信号電源箱(災害対応)”。災害時にこの箱を用い発電機やポタ電から電力を供給することができる頼もしい箱。
停電、災害時に頼りになる代物。
来年は電源箱グッズも期待しています。
4.関-163は偶然なのか
まぁ恐らく当然の疑問であろう。
これについて全てを知る者は岐阜県警の当時の担当者のみであるため、推測しかしようがない。
①2008年度新設
この交差点は関広見I.Cの開通に合わせて2008年度の新設となっている。また、意思決定日(交差点の新設が決定された日)は2008/11/21であり、この日に161〜163の新設が決定された。
②関署管内で5交差点の新設
2008年度はわりかし景気が良かったのか、関市内だけで161~165の5交差点が新設されている。つまりこの時点で”たまたま”関広見I.C口交差点が163に割り当てられる確率は1/5である。また、前述の通り、意思決定日が同じ交差点が3交差点であることから、1/3にまで絞りこめる。
参考:関市内の信号交差点の一覧はこちらから
③関広見ICの開通
関広見ICは2009年4月18日に供用開始したようである。本交差点はインターチェンジ前の交差点であるという特性上、供用開始までは無用の長物である。そのため、開通直前までは点灯していなかった可能性が高い。
つまり、供用開始までに設置してあれば良いわけであり設置時期にはある程度の自由度があった可能性が高い。
④結論
以上の①~③を踏まえると、県警の担当者が遊び心で3択の中から関広見I.C口交差点に関-163を割り当てた可能性も0ではないと考えられる。とはいえ実際に交差点を設計している立場では無いため、番号の操作が可能であるかは断定できない。
ただ、2008年までに関市内に160箇所の信号機が設置されていたこと、インターチェンジの供用開始が2009年春であったこと、インターチェンジが関広見インターチェンジと命名されたことは偶然であり、奇跡と呼んでも差し支えないだろう。
そもそも信号機の管理番号体系には様々なものがあり、そもそも明記すらしない県もある。あらゆる偶然の積み重ねが御神体を生み出した。
5.制御機の世代交代
関広見I.C口交差点には今日も制御機がおり、今すぐにでも偶像崇拝が可能である。しかしこの御神体は紛れもない電子機器であり、残念ながら寿命が存在する。
交通信号制御機の公称寿命は19年とされており、基本的にはこの周期で更新が行われる。2008年度に設置されたため、2027年度には更新を迎える。特に岐阜県は交通信号制御機の更新を徹底することで知られており、必ず2027年度までには更新されるだろう。
だが、案ずることはない。「関-163」は管理番号であるため制御機の更新後も引き継がれる。この番号が変わるのは警察署の統廃合や交差点の移設によるものがほとんどであるため、心配はいらない。
近年はどんなものでも小型化・薄型化の傾向だが、制御機も例外ではない。更新後は今よりスレンダーな御神体になる可能性が高い。
なお、伊勢神宮では20年に一度御社殿等の建て替え(式年遷宮)が行われる。
これになぞらえて、制御機の更新の儀式を行いたい方々も大勢いることだろう。しかし、 信号機の工事は基本的にシークレットで行われており、儀式を行うことは容易ではない。
もしも偶然制御機の更新を見かけたら、それはもう運命的な出会いである。
禁忌とされる御神体の内部を見られる千載一遇の大チャンス、業者の方の邪魔にならない範囲で思う存分鑑賞されたし。
制御機は警察が管理する税金によって購入されたものであるため、老朽化したものは普通処分される。実行委員会の皆様には、是非初代御神体の保存を警察に打診して頂きたい(担当の課は岐阜県警察本部 交通部 交通規制課)。
6.まとめ
簡単ではあるが、制御機の概要と関-163の経緯と考察、今後について解説した。もっと詳しく知りたい変人は中の人のTwitterにどうぞ。
御神体は奇跡の積み重ねで生まれたものであり、紛れもなく御神体と言って差し支えないものである。今後も末永く祀られてほしいものである。
今回私は信号機ファン枠で参加した、恐らく少数派の人間であるが、非常に楽しむことができた。今後も関広見まつりが末永く反映していくことを期待したい。
おまけ:世にも珍しい制御機グッズ
関広見まつりは地方の夏祭りでありながら、物販に長蛇の列ができることで知られている。もちろん私も早々に行き購入させて頂いた。
信号機は注目されない存在であり、これを趣味とする者は少ない。そのため信号機グッズは貴重な存在である。そして中でも制御機という縁の下の力持ち的な誰も注目しない代物がグッズ化されるとは、全く予想していなかった。
か、かわいい(#^^#)
本体の風合いから岐阜県特有の「広告禁止」ステッカー、銘板に至るまで素晴らしいクオリティーで作られており、感激してしまった。信号機ファンなら誰もが唸る逸品であろう。
つまり、当然
5個ぐらいは買っておかないとね(^_-)-☆
もちろん中の人は実寸大制御機の抽選にも参加したのだが、あえなく撃沈。
来年は是非手に入れたいところである。
素晴らしい制御機グッズを制作頂いた、協同印刷様に厚く感謝申し上げます。よろしければ更なる制御機グッズの拡充をお願いします。
来年度は中の人はもちろん、ほかの信号機ファンも召喚します(#^^#)。
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