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"good vibes only" @ Hilltop Coffee + Kitchen in Inglewood: イッサ・レイが開きたかったコーヒーショップ
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「自分の地元に黒人、有色人種が経営するコーヒーショップがないことに、いつもがっかりしていた」という理由から、2019年、LA近郊で彼女の地元であるイングルウッドにコーヒーショップ「Hilltop Coffee + Kitchen(ヒルトップ・コーヒー+キッチン)」を共同経営でオープンした、イッサ・レイ。その後ニプシーの地元のスローソン、またイーグルロック(ストーンズスロウの本拠地)にもオープンし、現在は3店舗を構えている。
念のため説明すると、イッサ・レイは、「Awkward Black Girl」というコメディ・ウェブシリーズで注目を浴びた後、「Insecure」というHBOのTVドラマシリーズで共同制作、脚本を共同執筆を担当、主演を演じて大人気を呼んだ女優、ライター、プロデューサー、コメディアン。
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前から気になっていたのと、LAで美味しいコーヒー探しをしたくて、週末のコーヒーをいただきにイングルウッド・ロケーションに出掛けてみた。土曜日のランチ時間ということもあって、クリスマス・モードの店内は非常に混み合い、レジに並ぶ列が入り口の外まで続いていて大盛況。
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2階建ての店内は、素敵なマダムから20代、30代の黒人の女性が一番多い中でも、若い黒人男性、ご年配の黒人カップル、白人の若者たちで賑わっていた。わたしの後にはアジア系のカップルも。
まずはお腹が空いていたので、卵たっぷりの「バンギン・ブレクファスト・ブリトー(Bangin' Breakfast Burrito)」と、「スローソン・ブルー(Slauson Brew/Slauson Signature)」という名のコーヒーを頼んで、混み合った店内で席を探す。1階は既に満席だったため、気になっていた2階へ。お洒落なこだわり満載の家具やアート、観葉植物がとっても素敵な雰囲気。
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開ける前に「ホットソースください」と店員さんに伝えると、「中に入ってますよー」。
そうよね、そうよねー。酸味の効いた辛過ぎないお味。2個くらい欲しかったわ(ソースの方)。
ブリトーを待っている間、まずはWifiのパスワードを探してみる。が、壁にもレシートにも見当たらない。ということで1階にブリトーを取りに行った時に、キュートな店員さんに尋ねてみると、またキュートなスマイルで、「あの壁に書いてありますよ。goodvivesonly、スペースなし、小文字オンリーね」。あら、パスワードが大きく壁に書かれているなんて、盲点だった。なんて粋なアイディアなのかしら。
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求めているものは、案外目の前にあるのかも。
そしてその上には、士気が上がるパックの曲を思い起こし、背筋が伸びる。
2階はカジュアルかつお洒落なファッションの黒人女性たちが、それぞれ気の合う友達やグループ同士でサタデーランチの会話を楽しんでいる。1人で来ている人たちが多い黒人男性、白人女性は、ラップトップや携帯を見ながら、それぞれの時間を楽しんいる。グルーヴの効いたブラックミュージックが心地いい。
ヘルスコンシャスなメニューや、流行りのアボカドトースト、がっつりこってりのメニューなんかも揃い、地元に根ざした名前のコーヒーを入れてくれる。スローソン・ブルーは、わたし好みの酸味の少ない、ボールドな主張をする、ちょっと苦味の際立つ濃いめのお味。今度はぜひ、エチオピアン・コーヒーも試してみよう。
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‘People Get Ready’ – Terrace Martin, Robert Glasper, Alex Isley
The Undefeated EP: ‘I Can’t Breathe / Music for the Movement’
Strange Fruit (From "I Can't Breathe / Music For the Movement")
‘Mercy Mercy Me (The Ecology)'– Keedron Bryant
オーダーして席に座り、コーヒーとブリトーをいただきながら、まわりの雰囲気を味わう。ああ、「これ」が欲しかったんだね、イッサは。スターバックスでもない、白人経営の大型チェーン店でもない。地元の住民が働き、くつろぎ、元気を取り戻せる、黒人経営のコーヒーショップが。ちょっとお洒落をしたり、はたまた普段着で出掛けたくなる、洗練されたアートやいいヴァイブスの人々に囲まれて、気分がよくなるこんな空間が。この店を開いた理由については、「コーヒーショップはいろんな意味で生産性を促してくれる。自分も執筆はすべてコーヒーショップでやってきた」と語っているイッサ。数カ月前には、実際に1日店員としてレジに登場して話題を呼んでいた。
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ちょうど今、長期に渡ってLAで行われている2パックのテーマの展示会、Wake Me When I'm Freeと、Hilltopがコラボしたマーチが販売されていて、入り口の天井側に掲げられた、「Keep Your Head Up.」ともマッチする。
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’(上記Tシャツにプリントされた、パックのポエム)
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(黄色いフーディが欲しかったけれど、思っていたより黄土色だった)
内向的なわたしは、人がたくさんいるコーヒーショップで原稿など書けない性分だとずっと思っていた。けれど、コーヒーの香りとクリスマスのデコレーションがキラキラ輝く店内で、この店でくつろぐ人たちのエネルギーを感じていると、わくわくしながらも共にくつろいで、このnoteを書いている。これも、イッサが意図していたこのお店のコンセプトなんだろうな、などと感じながら。誰が何を創るにしても、様々なクリエイターをサポートしてくれる、good vibesが感じられる。(一番は、ここに住む地元民のためだと思うけれど)
ストリートに停めた駐車場メーターの時間が終わり、そろそろ帰ろうとしていると、ドニー・ハサウェイの「クリスマス」が。街も店内もクリスマス・モード、もう年の瀬ですね。みなさんにとって、平和で暖かい年末となりますように。
店内に飾られていたアートたち。
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外の窓からもしっかり見えるようになっている
何世紀にも渡って、山頂(Mountaintop:キング牧師の有名な「I Have a Dream」スピーチでも使われた言葉。店名のHillptop(丘の頂上)も、それにちなんでいるのかも)は、多くの夢と行動をする人たちを象徴してきました。
ヒルトップは、あらゆる職業、立場の人たちのために在ります。私たちは「THE CLIMB(登ること、苦労して進むこと。HilltopのTシャツやフーディにプリントされている言葉でもある)」ーー私たちひとりひとりが創り出すゴールと、そのゴールを実現するためにどうしても乗り越えなければならない障害ーーをリプレゼントしています。
私たちは、クリエイティヴィティ(創造性)、コミュニティ(地域)、コネクション(繋がり)の助けとなるような環境の中で、質の高い材料とGood Vibes(いいヴァイブス)を、私たちが仕えるこの地域にもたらすという使命を原動力にしています。
あなたがこの店に来てくれたときよりも、さらに元気になってこの場を後にしてくれたなら、そして何があっても私たちは仲間なんだ(We are all in this together: 店内に入ると一番最初に目に入るところに大きく掲げられた言葉)ということを思い出して欲しい。私たちはそう願っています。
登り続けよう。
心も体も元気になって店を出ると、なんと目の前には、スティーヴィ・ワンダー経営のラジオ局「KJLH」が! お店に入る前には気づかなかった! これはガチで上がる!
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そしてそのすぐ近くにある、イングルウッド裁判所から繋がった橋に見える、「サーグッド・マーシャル(アフリカ系アメリカ人で初めてアメリカ最高裁判所判事になった人物)・ジャスティス・プラザ」の文字。黒人タウンとしてのこの街の歴史が、そこかしこに存在する。
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とはいえ、決して経済的、社会的にはリッチな街とは言い難い現実もあるのもまた、イングルウッドなのだろう。だからこそ、成功したイッサのポジティブなエネルギーが必要とされていると、強く感じた。
もっとこの街のこと、人々を知りたい。
そう感じた土曜日の午後だった。