塚田桂子 Keiko Tsukada

ライター、翻訳者、漬物ハスラー、ガーデナー。LA在住。訳書に『バタフライ・エフェクト:ケンドリック・ラマー伝』、『ギャングスター・ラップの歴史』。Writer, Translator, Pickles Hustler, Gardner, reside in LA.

塚田桂子 Keiko Tsukada

ライター、翻訳者、漬物ハスラー、ガーデナー。LA在住。訳書に『バタフライ・エフェクト:ケンドリック・ラマー伝』、『ギャングスター・ラップの歴史』。Writer, Translator, Pickles Hustler, Gardner, reside in LA.

最近の記事

タイラーの父親像、母のことば。

アルバムを何度聴いても、「Like Him」で立ち止まる。 今まではずっと不在だった父への怒りを露わにしたり、強がってきたタイラーだけど、今作『CHROMAKOPIA』では、おかんが意外な真実を打ち明けて、聴き手を驚かせる。 タイラーを見捨てて家族の元を去ったと思われていた父は、実はタイラーの父親として、いつも息子の側にいたがっていたこと。 彼は実はいい人であったこと。 母は若さゆえの決断で、タイラーから父を切り離したこと。 父親が去ったのは、母の責任であったこと。

    • And The Marathon Continues... ブラック・サミーが語る、ニプシーの人生、ステープルセンターでお葬式が行われた理由

      数日前に公開された、LAのレジェンドでラジオ司会者、ビッグ・ボーイがニプシーのお兄ちゃん、ブラック・サミーに、ニプシーの人生について訊いたインタビュー。 5年前に行われたニプシーのお葬式について、今まで明かされていなかった衝撃の裏事情。 なぜ、地元の教会がニプシーの葬式を拒んだのか。 ニプシーもサミーも刑務所に入った過去があるし、ニプシーが地元のクリップスに従事していた時もあった。しかし地元に還元した功績も大きかったはずだ。 しかし、おかげでわたしもLAの巨大なイベント

      • The Revolutionary: 『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』

        今更ながら、『Judas and the Black Messiah(ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償)』をやっと観れた。頭をカチ割られたような衝撃に、呆然としながら帰路についた。 社会の必要に迫られて生まれたブラックパンサー党、そしてシカゴ支部のチェアマン・フレッド・ハンプトンを生かしておかなかったアメリカを呪い、その国に生きる自分に疑問を投げかける。 そして結局のところ、この国にはめられ、同胞を欺き、苦しんだ裏切り者、ビル・オニールの最期を知り、深いため息をついた

        • Sorry Not Sorry: タイラー・ザ・クリエイターの軌跡

          2021年の『Call Me If You Get Lost』に、未発表などの8曲を入れて突然リリースされた、タイラー・ザ・クリエイターの『Call Me If You Get Lost: The Estate Sale』。 「Estate Sales」というのは、財産の処分、販売、という意味。正式版入りしなかった曲の処分、という意味では残り物なのかもしれないけれど、ヴィンス・ステイプルズやA$APロッキー、YGの客演曲や、カニエへのオード(頌歌)的な「Heaven To

          It is what it is : 白人地域に中国の食料品店がない理由

          Tiktokのビデオなんですが、どうしてもうまく埋め込みできず… 「なぜ白人地域には中華料理屋や中国人の食料品店がないの?」という質問に対する、エイミー・チェンというアジア系アメリカ人女性の返答。ハッシュタグから見ると、彼女は人種差別に反対し、人種間の結束を目指しているようだ。 彼女の説明を聞くと、ロサンゼルス暴動や、映画『Boyz N The Hood』、ラターシャ・ハーリンズの事件などを思い起こす。と同時に、今まであまり語られてこなかった、明かされてこなかった社会的、

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          In the Woods: じわじわジワる、クリス・ロックのデラ評。

          クリス・ロックのデラ評がじわる。 確かに、やせっぽちでナード、何をやっても裏目に出ちゃって村八分にされてしまうクリスの子供時代を描いたTVドラマ「Everybody Hates Chris」の中のクリスと被る。もちろん、クリス・ロックは言わずと知れたヒップホップ・ヘッズ。 このアルバムがリリースされた'93年当時に破竹の勢いで一世を風靡していた、ハードコアに攻めまくるギャングスタ・ラップに対する挑戦状だったのかもしれないし(ハードコアよりナードなユニークさ)、NYがヒップ

          In the Woods: じわじわジワる、クリス・ロックのデラ評。

          Community over Competition: ヤシーン・ベイが語るショウビズ論

          ブラックスターが四半世紀ぶりの新作『No Fear of Time』をリリースした「Luminary」(サブスク・ポッドキャスト・ネットワーク)で、デイヴ・シャベル、ヤシーン・ベイ、タリブ・クウェリが出演する番組『The Midnight Miracle』を久々に聴いていたら、ヤシーンの人となりが際立つエピソードがあったので、一部を訳してみました。 気心の知れた仲間同士のディープな会話から生まれる、ヘルシーな意見の違いが新鮮でおもしろい。 ちなみにこの日の(も?)ヤっさん

          Community over Competition: ヤシーン・ベイが語るショウビズ論

          Heaven.

          長年お世話になり、苦楽を共にした方からカードをいただいた。 その中の一文を何度も繰り返し読んで、噛み締めている。 もしかしたら、与えられた試練さえ、自分で選んでいるのだろうか。なぜならその試練は、自分で考え出した意思から生まれたとは、とても思えない。魂の奥底からふつふつと沸き上がってきた、どうにもコントロールできない想いだったから。 それとも、やはり、自分の意思に反して、与えられたものなのだろうか。 解決できたかどうかは実はあまり問題ではなく、その道のりが、その与えられ

          "good vibes only" @ Hilltop Coffee + Kitchen in Inglewood: イッサ・レイが開きたかったコーヒーショップ

          「自分の地元に黒人、有色人種が経営するコーヒーショップがないことに、いつもがっかりしていた」という理由から、2019年、LA近郊で彼女の地元であるイングルウッドにコーヒーショップ「Hilltop Coffee + Kitchen(ヒルトップ・コーヒー+キッチン)」を共同経営でオープンした、イッサ・レイ。その後ニプシーの地元のスローソン、またイーグルロック(ストーンズスロウの本拠地)にもオープンし、現在は3店舗を構えている。 念のため説明すると、イッサ・レイは、「Awkwar

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          Today's Mr. Eyob: コーヒーの起源はエチオピアにあり

          LAでいろんなコーヒーを試してみて、自分の好みは、酸味のあまりない深い味わいのエチオピアのコーヒーだと気づく。そして辿り着いたのが、LAのリトル・エチオピア(エチオピア街)にあるレストラン、「ブナ・エチオピアン・レストラン&マーケット」のコーヒーであり、もう長らくわたしにとっての「ザ・コーヒー」となっている。 今日もいつものようにコーヒー豆を買いに行くと、ご機嫌な店主のイヨブさんが、自慢のTシャツの話しをしてくれた。「これは重要なキングのふたりだ。この店のコーヒーは『キング

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          Revolutionary: トンゴ・アイゼン=マーティン@ノーネーム・ブック・クラブ

          最近、以前から興味のあったノーネーム・ブック・クラブに加入した。パンデミック中はあらゆる対人のイベントが休止されていたので加入に躊躇していたのだけれど、最近全米各地でイベントが行われているため、加入を決意した。わたしが加入した後にLAで初めて行われたイベント、ベイエリアの詩人、トンゴ・アイゼン=マーティンをゲストに招いて行われた詩の朗読会+座談会に出掛けて来た。 会場はノーネーム・ブック・クラブの本部で、別名ブック・クラブ・ヘッドクオーター、ラディカル・フッド・ライブラリー

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          Miles Davis: 闇のプリンスの父親像

          「世間では、父は闇のプリンスで、観客を無視して背を向ける不機嫌なパフォーマーだと思われています。それは実際の父とは全然違うんです。でも、伝説的なバンドの一員として一緒にステージに立つまでは、そのことに気づきませんでした。父は観客に背を向けていたのではなく、バンドの方を向いていたんです。それは、彼の演奏を聴くためにそこにいる人たちに対する無礼な態度ではなく、演奏するためにそこにいる人たちに対する敬意の表れだったんです。そして、私は幸運にもその場で演奏することができたのです。

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          Sidewalk Rebel:ギャングスタ・ガーデナー、ロン・フィンリー、独立記念日に物申す

          今日、インスピレーションを感じたロン・フィンリーさんのポエトリーを、忘備録に、意訳しておこうと思い立った。 まずは、以前インタビューした会話を元に、ロン・フィンリーさんの紹介から。 LA在住でファッション・デザイナーをしているロン・フィンリーは、彼が住むサウスセントラル(現在の名前はサウス・LA。LA暴動の後、イメージチェンジの為に市が改名)には、新鮮な果物や野菜が買える食糧品店が近所にない、だから何キロも車で運転して別の街に行かなければ、新鮮なりんごを買うこともできない

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          タイラー、ケンドリック、「男たるもの」

          タイラーがケンドリックの新作『Mr. Morale & Big Steppers』を称賛しまくっているのは有名だけれど、タイラーがこのインタビューで語った絶賛の理由がむちゃくちゃ興味深く、本質を突いていると感じている。その影響力には人種的な要素も大いにあるけれど、普遍的なものでもあるように思う。 タイラーの説明を要約してみました。自分の忘備録にもしたくて。 同じLA近郊出身でありながら、スタイルがかけ離れているせいか、意外に繋がり(とはいえ、表面上はタイラー→ケンドリック

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