アルバムを何度聴いても、「Like Him」で立ち止まる。
今まではずっと不在だった父への怒りを露わにしたり、強がってきたタイラーだけど、今作『CHROMAKOPIA』では、おかんが意外な真実を打ち明けて、聴き手を驚かせる。
タイラーを見捨てて家族の元を去ったと思われていた父は、実はタイラーの父親として、いつも息子の側にいたがっていたこと。
彼は実はいい人であったこと。
母は若さゆえの決断で、タイラーから父を切り離したこと。
父親が去ったのは、母の責任であったこと。
だから彼を恨まないで、私が悪かったの。許して欲しい。
そして、タイラーの体のパーツから姿勢から表現まで、すべてが父にそっくりであること。
せつせつと語り、ひたすら謝る母。
父親がいなかった分、父と母の両方の役割を全力で全うしてきたおかん。
父親像を知らないタイラーからは、怒りは感じられないが、それでも父の不在がもたらしてきた感情、雲をもつかむような表現が、なんとも切ない。
ピアノの鍵盤がひずむ音が響く。
大人になったんだなぁ、タイラーも。と、しみじみ。(別の曲では、「早く孫の顔を見せて」とせがむ母。バイセクシュアル?を公言するタイラー)
そして、「Like Him」から次の「Balloon」に抜けていく感じが、ケンドリックの『Mr. Morale & the Big Steppers』の「Mother I Sober」から「Mirror」への流れを思わせる。低空飛行から、やっと空に飛びたっていくような、軽やかさと爽快感。
あさってのキャンプ・フログ・ノーが待ち遠しい!