2017.12.7 障害者の主張大会
2017年12月7日「第28回山梨県障害者の主張大会」(山梨県障害者福祉協会主催)が行われ、数多い応募者のなかから10人が選出され、小林浩太朗もたくさんの人たちの前で「僕たちの本当の姿を理解してほしい」と発表をした。(母親の代読による)
「目に見えるものだけが本当ではないよ」
僕のことを信じてくれますか。
僕のこの方法で話す言葉を信じてくれますか。
僕の言葉を母の言葉と思っているかもしれません。ですが僕自身の言葉として伝えたいです。
僕は小林浩太朗といいます。今回特に主張したいことがあってこの大会にチャレンジすることにしました。
僕は見た目にはとても障害が重くて、話すこともできないし、一人では気持ちを表現する手段がなかったのですが、手を添えてもらえれば僕にも話をする機会が訪れます。このことを多くの人に伝えたいと思います。
僕は今あたたかい人との出会いを通して、介助してもらいながら表現する方法にたどり着いたのですが、思いはあってもまだ、息をひそめるようにしてそれを出せないまま暮らしている仲間がたくさんいるので、僕はそのことを大きな声で叫びたいと思いました。
なぜなら、一人では何も出来なくてしゃべれなくても、僕達は心の中に思いや豊かな言葉を持っています。そのことが常識になったら、山ゆり園での事件のようなことが起こらなくなるのではないかと思うからです。
僕たちは、体が思う通りに動いてくれないので、返事をしたくてもうまく出来ません。そうなるとわかっていないとされがちです。ですが、返事が正確にできないけれど、僕達にはちゃんと意思があることに気づいてくれる人はちょっとした表情の変化などでわかってくださいます。だからそう思いながら接してくれたら嬉しいです。「わかっていないんじゃないの?」と思いながら接してくれるといい反応が出来なくなってしまいます。
実はしゃべれない僕たちにも、年相応に考えたり感じたりする力があります。ですが僕は、それをうまく表現することができないので、僕自身を抑えて表に出せず苦しい日を過ごしたことも、正直言ってありました。
そんな僕が自分を表現出来るようになったいきさつをお話しします。
僕は小さい頃から絵を描くのが好きで、一人では筆を持っていられないので、手を添えてもらって絵を描いていました。ずっと描いているうちに、僕が心で思い描いたものが描けるようになってきました。僕は梅の花というよりも梅の香りを描きたいと思い、実際に描けた時、「目に見えない、香りを絵で表現出来るんだ」と、とてもびっくりしました。
そして去年それをペンや習字の筆に持ち替えたら、字が書けるようになりました。そして指だけでも、手を添えてくれる方の手の平や指にひらがなを書けるようになりました。心の中から眠っていたたくさんの言葉たちを次々と飛び出させてもらえたことに、今は感謝の気持ちでいっぱいです。
だからそんな方法もあるよ、ということを伝えてみたかったのです。
このように、動きを手伝ってもらいながら家族やヘルパーさんと言葉を交わしている仲間が全国にも多勢います。あちこちで僕のような人が声を上げています。詩集を出版したり、作詞をして音楽祭で賞をいただいた仲間もいます。
僕も黙っていられなくてこの大会に応募しました。
なかなか難しいことですが、僕たちもちゃんとした意志も言葉もあることを伝えたくて今日は話をさせてもらいました。僕も社会人になり、人生谷もあり山もあることがわかるようになりました。忍耐力や人の立場も理解でき、僕なりの人生を歩むようになり、夢や希望を持つ余裕が出てきました。選挙で投票出来たことも、最近とても嬉しかったことの一つです。
僕の願いは、同じような環境のもとで生活している仲間が、見た目で判断されずに共に幸せな日々を過ごせることです。これは絶対叶えさせたい強い目標です。そして僕の今描いている絵のテーマは「未来」です。だから未来に向けて僕は今一生懸命生きようとしています。絵や文章で僕の心を精いっぱい表現してゆこうと思います。今日僕が話したことで、少しでも僕達の本当の姿を理解していただけたらほんとうに嬉しいです。
ありがとうございました。
小林浩太朗
・
この原稿が仕上がるまで多くの方に助言、サポートしていただいた。最初は柴田保之先生(國學院大学人間開発部初等教育学科教授、きんこんの会主宰)に感情をそのままぶつけるところから始まり、周囲の助言から、他者に伝える意識を持つことが必要だと学び出し、冒頭の「僕のことを信じてくれますか。」という言葉がするりと出てきた。そこから何度も筆談で推敲を繰り返し、本番直前まで自分の想いと言葉の距離を縮めることに注力した。
(ぜひ自分の言葉だと信じてもらいたい一心で、画用紙に書き綴った原稿)
発表者10人に選ばれたことについて主催側は「にわかには信じられないけれども、無いことにはできない。」と語った。
・
発表を終え、新聞記者の質問に答えた。
―――今日の感想は?
かいじょうのみなさんの一人でも
ぼくのいいたいことがわかってもらえれば
今日のはっぴょうがゆういぎです。