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2020.8.4 描きかけの最期の作品
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2020.7.28
―――今日はなにする?
えをかく
大(の紙) よこ 中はけ
空いろ こいめ
もうすこしうすく 白
もうすこし
もう一回
そのふではそのまま
ふでをかえる 丸 太 クリーム
こいめ こいめクリーム もう少しこいクリーム 先につける
こいクリームをもういちどつける 先
こいきいろを すこしうすく もうすこしうすく
グリ(ー)ン 今のふで
空をかくので山よりうすい水(色) うすくする
水(色に) 白を入(れる) 白もっと多くする うすく
白を先 白と水 白を水を入れて もう一ど白
・
2020.8.4
―――今日はなにする?
えをしあげる。
花のふちどりをしたいので 少しこいめのきいろ
今(のふで) 少しあらう うすいクリーム
すごくうすいむらさき 今(のふで)
もう一回 もう一回
ふでをあらって 金
うすくしたいので水を入(れる)
もう少しうすく
ピンクのすごくうすい
もう少し白 もう一回
もう一回 水色で山をなおす 今(のふで)
もっとつける
ほんの少し白を入れる
白を今の(ふでに)つける
水いろをつける
この日は時間の都合上、慌ただしく創作を終わりにしてしまった。色の指示をするための筆談ノートは「水いろをつける」という文字で止まっている。まだ続きがあるのか、完成まで何割くらい描けているのか、タイトルは何なのか、サインを記すのか、今では確認することはできない。
次回の創作はお盆を挟んだ3週間後の8/25を予定していたのだが、その間に体調を崩していき、再び絵筆を握ることはなかった。この絵が小林浩太朗にとって最後の作品となった。
振り返ってみると(上記の筆談ノートにもあるように)、様々な薄い色を「もう一回、もう一回…」と何度も丁寧に納得がいくまで塗り重ねていたのが印象に残っている。自分の死期を感じていたかどうかはわからないが、何とも穏やかで際限のない開放感を運んでくる一枚でありながら、完成の形をとらずにどこか「問い」のようなものをわたしたちに残していくあたりが、彼の存在をいつまでも感じられる生きたギフトとなっている。