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バーチャルインフルエンサーでやって良いこと・悪いこと

最新のマーケティングの論文から、今日はバーチャルインフルエンサーについて。

バーチャルインフルエンサーの起用を考えている企業さん、増えているのではと思います。単なる生成AIの画像・映像というわけではなく、人間のようなアイデンティティを持たせることで説得力や共感が生まれ、ソーシャルメディアで大きな影響力を持ちます。

日本では、株式会社Awwのimmaちゃんが有名ですね。大阪万博のスペシャルサポーターや、日本テレビの番組「Sensors」のMCを務めたりしている、桃髪おかっぱの女の子です。IKEAやBMWなど様々な企業とコラボしています。( https://beacons.ai/imma_official )

最近のJournal of Marketingに、このバーチャルインフルエンサーの推奨に関する論文が掲載されました。タイトルは、"Making Sense? The Sensory-Specific Nature of Virtual Influencer Effectiveness" 

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/00222429231203699

この論文では、人間のインフルエンサーとコンピューターで作られたバーチャルインフルエンサーのそれぞれ五感を使った推奨行動が、人の購買行動にどう影響するのか、という点について調査を行っています。それによると、視覚や聴覚を使ってインフルエンサーがモノやサービスを推奨する場合は、人間でもバーチャルでも購買意向につながるのですが、嗅覚、味覚、触覚をつかって推奨する場合、人間のインフルエンサーであれば購買意向を高めるのに、バーチャルインフルエンサーの場合は購買意向にはつながらないということが判明しました。

五感には遠感覚と近感覚がある

視覚や聴覚といった離れたところからも感知できる感覚(=遠感覚)に比べ、嗅覚や味覚、触覚(=近感覚)は対象に触れる距離でないと感じることができません。バーチャルの場合、嗅覚・味覚・触覚については技術的に感じることができないという背景もあり、できないのに「匂いがいい」「味がいい」「触り心地がいい」というと嘘っぽく聞こえるということでしょう。
実際、Lil Miquelaの視覚的なファッションブランドのプロモーションや、初音ミクの聴覚的な音楽活動は成功を収めていますが、LingがGucciのリップをぬるという触覚をを使った広告は批判的な反応を呼んだようです。

先月マクドナルドが生成AIで作られた映像でマックフライポテトのプロモーションを行いました。反応は様々でしたが、否定的な反応の理由として「不気味の谷」を挙げて解説されている方が多かったようです。(実際のところ、不気味とは程遠い素適な映像でした。)
https://www.tiktok.com/@mcdonaldsjapan/video/7404030541110004997?lang=ja-JP

しかし、この論文に準拠すれば、否定的に感じたのは不気味だったからではなく、本来AIで作られたキャラクターが(技術的にも)感じることのできない味覚という近感覚を使って推奨したことで、嘘っぽさを感じ共感できなかった、ということになります。

バーチャルインフルエンサーを企業のプロモーションに使う場合は、視覚や聴覚を使って推奨するということにとどめるのがよさそうですね。

(了)


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