![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157810559/rectangle_large_type_2_bee9c113af2ffee51cadbb2d1a43bbeb.png?width=1200)
映画「パリ・テキサス」ヴィム・ヴェンダース監督を観て
地球の壮大な営みを思い起こさせるテキサスの荒野、そこにいるのはトラヴィスとハゲタカのみ。荒野を一人で言葉も忘れ歩き続けるよりも酷い人生が彼を襲ったことが想像される。(そこには100年前、インディオの土地だったことは今は問うまい)今はインディオもいない、トラヴィスただ一人の荒野である。
過酷な人生を生きているトラヴィスにとってパリ・テキサスのみが暖かな記憶で、例えその暖かさが削ぎ落とされても、彼にとって目指すゴールであり、目指すことが彼の人生であった。
荒野に倒れていたところを地域の欲深な医者に介抱されたが言葉を失った彼は交渉の相手にならないので、彼が持っていた名刺によって弟のウォルトに連絡をし彼が迎えに来る。
帰還の旅の道中に懸命に話しかけるウォルトにトラヴィスもぎこちなく言葉を取り戻しつつあった。
総てを失った、記憶すらも失った兄トラヴィスはただテキサス州にあるパリという地名の荒野を目指してあるき続けていた。そのパリはトラヴィスが買った土地でトラヴィスのたった一つの財産であった。
その土地は父と母が愛し合った土地でトラヴィスはそこで命を授かったということを思い出し、ただひたすらパリ・テキサスを目指したというのである。(実は後半でその土地は家族三人で住むために買ったと明かされる)。
ロサンゼルスのウォルトの家に落ち着き、ウォルトと妻のアンに大切に育てられたトラヴィスの息子ハンターと再会する。
ハンターはみすぼらしく言葉も記憶も失ったトラヴィスを父とは俄かには受け入れることができなかった。
しかし、トラヴィスは息子の信を得ようと努力し、弟ウォルトのスーツを着て学校の出迎えをしたことから、ハンターも心を開くようになり、ある日トラヴィスが妻のジェーン(ナターシャ・キンスキー)を探しに旅に出ると告げたらハンターは「僕も行く」と相棒よろしくついてきた。そうして力を合わせてジェーンの居場所を突き止めたが、そこは何と呼ぶのか分からないが、鏡を介して男女が会話をする小部屋で働いていたのだ。
その晩ハンターが呆れるほど酔いつぶれたトラヴィスは翌朝考えてハンターをウォルトとアンの下に返す。
あるホテルの1室にハンターを待たせて、小部屋でジェーンにホテルに行くようにと言い残して立ち去るトラヴィス。ジェーンと会ったハンターは言葉を失いただジェーンを抱きしめた。
ジェーンとトラヴィスは愛し合いながら現実の生活をうまくやっていけないことをお互いに知り、ハンターの幸せのために、そしてジェーンを解放するためにトラヴィスは一人街の夕焼けのなか旅立つ。
ライ・クーダーの音楽と映像が美しい。