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語るべきキャリアを何一つ持っていない人の転職ー私の場合②完

学歴もない、資格もない、実績もない私が、既定のフォーマットに記載したキレイに並んだ文字列から、自分の何を知ってもらえるのかと疑心暗鬼で書いた履歴書と職務経歴書。「これを私がやりました!」と書き並べることができず、当時はとても苦しかった。

これは前回、私が数多くの転職をとおして得た過去の経験、スキルは、社会的に全く評価されないものだった、ということを書いたつづきです。


前職でマネジメントに従事していた私は、事業成果という意味では数億円の売上があり、利益率も申し分ない事業に携わっていましたが、それらはチームの成果だというのが私の認識でした。私がしていたのは事業がうまく回るように動いていただけ。しかし、それを明文化するのは難しく、かといって人に倣って事業成果をを書くことに嫌悪感を抱く自分がいて、書くのにとても葛藤がありました。


どんな自分をアピールしたかったのか

では、私は何をわかってもらいたかったのか。それは、履歴書も職務経歴書のどちらにも表現できるスペースのなかった、私の仕事観や、仕事をするうえでのモットー、まさにビジョン、ミッション、バリューを伝えたかったのでした。またマネジメントをするのであれば、自分のマネジメント観と合う場所で力を発揮したい、企業のビジョンやミッションに重ねて、自分を活かせると思える企業との縁が欲しかったのです。


自分の仕事観を伝えたプロフィールの悲しい結果

そこで私は、学歴、職歴、職務経歴に加えてそれらを反映したフリーフォーマットのプロフィールを作成してみました。表紙に上半身の写真とタイトルを入れて、なんだか講師プロフィールみたいだなと結構ワクワク楽しんで。

しかし、反応はすこぶる悪く、1社を除いては転職エージェントのデータ整理上、仕事をするうえでのモットーなどは不要と言われたし、「いいじゃないですか!」と言ってくれた会社からは、書類選考通過の連絡が今なお無いわけだから、書いても意味のないことだったと認めるしかありません。


なぜ私には市場価値が付かなかったのか?

転職エージェントの商材として価値がなければスルーされ、売れる見込みがあればコンサルタントからのコンタクトがあって企業紹介があり、その先へ進みます。だって、彼らも商売ですから。そういう意味では、私は相当見込みのない商材だったわけです。

それでも、こんな私を売ってくれようとしたシニアコンサルタントがいました。その方はこう言いました。

あなたの仕事ぶりは、こうやって会って話せばわかります。でも、書類が通らないことには、企業さんに会ってもらえないんです。会ってもらうためには、「実績」「成果」がとても重要。それ、何とか合うように書けませんかね。それと調整しようのないのが転職歴なんですよね…気にする企業さんがいるんですよ。3,4回なら昨今は理解をいただけるんですけど、あなたの場合、片手じゃ足らない。話を聞けば心配も杞憂に終わるし、多様な仕事経験が、企業の経営に役立つことも私にはわかります。でも、採用担当者にはネガティブ要件なんですよ。何も好き好んで、そういう人に触手を伸ばさないですからね。


私にはもう、転職のチャンスはないのか

もう、その頃には私は諦め始めていました。「実績」や「成果」を“求められるように”は書けない。そんなの持ってない。そして、当たり前だけど転職歴に嘘はつけない。

私が当時、採用側で欲しいと願った人と、選ばれる側になって欲しがられる人とは違っているのだというのを痛感しました。本当に痛いほどに。

そうこうしているうちに前職を退任してから半年以上が経ち、ちょっとのんびり構えてた感の私も焦り始めていましたが、一向に転職エージェントからの連絡はなく、私は心の中で区切りをつけました。


雇われる、欲しがられるからの脱却

そして、いつか聞いた別の人の言葉を思い出しました。

「もうね、この年齢になって、トップマネジメントも経験した人を雇ってくれる人はいないと思った方がいいよ。もう、自分で自分を雇っていくしかない」

そうか、このプロフィールでは自分の過去を語る方法で勝負しなくてはならず、そこでは、もう私は無理なのだ。あらゆる職の経験を活かしてと思っても、その方法で書く私の職務経歴書ではネガティブ要件の方が目についてしまう。

これからの仕事のこと、その未来は、うまくいくかどうかは誰にもわからない。過去にできたからといって、できる確約はない。もちろん、過去にやったことのない人ができる確約もない。でも、でも成功確率を過去の経験に相当の比率で委ねるなんて、おかしくないか。

自分が欲しがられなかったことへの失望を持ちながらも、この時期にいろいろなプロフィールを書いてみて、私は自分の違和感をもとに違う方法を模索し始めていました。未来でこうありたいというためにプロフィールを書く、その根拠は、過去の経験をどう摘み取るかによって、きっと表現できる。私は悶々としながらも、新たなプロフィールを自分で生み出すべきだと考えていました。こうやって思い返すと、未来型プロフィールの産声は、この時に上がっていたのかもしれません。


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