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語り継ぎたい物語          ~シアターワークの道を開く(落ち葉ひろい編)~

1月某日、シアターワークの創始者である小木戸氏の新たな拠点において、ごく親い方々が集い、新居に通じる100段ほどの落ち葉ひろいをする機会があった。

最初は小木戸氏より、「この辺りの落ち葉を袋に詰めたい」というイメージの共有があり、5歳の女の子から小学6年生の男の子達が大活躍した。

大人(年配の女性も含む)も負けじととりかかろうとするのだが、静電気でピッタリと貼り付いたゴミ袋を広げるところから苦戦してしまう。

要領がわかりはじめたとき、わたしは自ら集団を離れ、
小木戸氏が示したもう一方の落ち葉の山にとりかかった。
車一台分を隔てて、すぐ近くにみんながいるというのに、一人で落ち葉を袋に詰めていると、正直不安で、孤独に似たような感覚があった。

「小木戸さんはこれを一人でやってたんだ・・」
と思っていると、小木戸氏が
「これ一人でやってると心が折れそうになる」と打ち明けられて、
ここで小木戸氏の感じていた孤独さや、途方もなさを共に味わった。

腐葉土をどうするかの確認

わたしが取り組んでいた落ち葉の山は、長い間、その場にとどまっていたのだろう。
下の方は腐葉土となっていた。
それはそれで、豊かさを感じられるものだった。

わたしがその腐葉土をゴミ袋に入れてしまうことをためらうと、
「由紀さんもそれをコンポストに使いたいって言ってた」と、小木戸氏。
わたしと同じ感覚を由紀さんが持っていてくれたんだ・・とじんわり嬉しくなった。
その辺りから、その腐葉土は〝由紀さんがとっておきたいもの〟となり、
わたしは近くにいた正樹さんに、
「ここの(葉)はこのままね」と念を押した。

腐葉土の真ん中からは、元気よく緑色の茎が伸びていた。


坂道を、みんなが登ってくる

由紀さんは早い段階から、階段の落ち葉を集めるつもりでいたと思われる。

しかし、正樹さんは、「これは公共事業だ!」とつぶやき、
道路側の落ち葉と向き合っていた。
(わたしは正樹さんの声に聞こえたのだが、実際は小木戸氏が言っていた。)

わたしはここで、由紀さんの望んでいることを優先的に察知しようとする。
(ポイント:小木戸氏ではなく、由紀さんなのだ。)

とりかかる先は、階段だ!!(わたしの直観)

由紀さんはお一人でものすごい勢いで落ち葉を集めていく。
まるで、「一人でやるならこれぐらいのスピードでやらないと!」
と仰っているようだった。

わたしは何とか由紀さんのお役に立ちたいと思うのの、
葉っぱを効率よく集めるにはどうしたらよいかと試行錯誤し
なかなかスピードが上がらない。

そんな時、正樹さんの娘さんである杏樹ちゃんが、
妖精のように目の前を横切った。
どうやら小木戸氏や正樹さんは階段下の車の近くで水を使うらしい。
杏樹ちゃんは目の前を何度も横ぎりながら、
水道の蛇口を開いて止める係をしていた。

水道のおかげで、道路や車のエリアが一段落したのだろう。

みんなが坂を登ってくるのが見えた。

その時、ほっとするような嬉しさが心の中に湧きあがった。
「みんな来てくれるんだね・・」

みんなが階段にとりかかり始めたことで、
わたしと息子、小木戸さんと杏樹ちゃんはさらに上へと向かう。
(この辺りで、由紀さんは一度、袋をお買い求めに行かれる。)

チョコレートの行方

小木戸氏は、階段の最終コーナーのあたりで、脇道が隠れていたことを発見し、道なき道に身体を沈めていた。

わたしはひとつ下のコーナーを担当し、息子と最適のコンビネーションを生み出すために試行錯誤していた。

軍手を取りにいった時に、子どもたち用に買っておいたバンドエイド型のチョコレートを、息子と杏樹ちゃんにあげた。
あと2人の子どもたちにも、チョコレートを届けようと思って息子と杏樹ちゃんに託した。
そのチョコレートは結局、小木戸氏と手塚先生に渡っていたらしい。

頂上から見る光景

ふと気が付くと、正樹さんが近くまで登って来ていた。
「杏樹ちゃん、上にいるよ」と伝えると、
正樹さんはスマートにわたしを追い抜き、頂上までたどり着いた。
そして、時々意味ありげに戻ってくるのだが、
小枝を拾ってまたすぐに上に舞い戻る。

一度頂上付近で見かけたときには、
小木戸さんとソテツ?の植木鉢を発掘していた。
ジャングルで格闘する男たちような光景だった。

ふたたび、自分の持ち場にもどるわたし。
息子はなんども、箒とちりとりを交換しようとする。

そうこうしているうちに、男の子たちや手塚先生、理永さん、弓さんたちのご一行がわたしを追い抜いていく。

このあたりで、彩さんと電話でつながり、
頂上の方から彩さんと手塚先生がお話されているのがわかる。

わたしはこのあと、落ち葉の入ったゴミ袋を理永さんや小木戸氏から受け取り、一番下のゴミ置き場に届ける役割をする。

途中で由紀さんとすれ違い、嬉しそうに登ってくる由紀さんの顔を見てほっとする。

最後に小木戸氏と成果を確認し、
頂上まで登りきった時には、
天を仰ぐ、理永さんの美しい姿がわたしに癒しをもたらした。

正樹さんは集めた小枝で子どもたちと暖炉に火をともしているようだった。
そこにちゃっかり、わたしの息子もまぎれていた。

夢のようで現実
嘘のようで本当

今回は、たまたま出会った一期一会のメンバー。
このメンバーには、たまたまシアターワークに関わるメンバーが多く、
この日の作業のプロセスは、(あくまでわたしの観点だが)、
シアターワークの道を切り開くプロセスを反映しているように思えた。

つぎはあなたも、この階段をのぼってみてほしい。
頂上から見える景色は、
あなたにとって、かけがえのない景色となることでしょう。

由紀さん・・

正樹さん・・

そして、わたし。

実際には、小木戸氏と、数えきれないたくさんの方々の思いがあって
この世に産み落とされた、シアターワーク。
この奥深い世界を、わたしは今、探究していく入り口に立っている。