引きこもりから起業し「LED関西」に出て感じた女性の生き方の多様性
こんにちは、株式会社tent tent代表の小西です。この4月で5期目を迎えました。
メインの事業は愛犬とのおでかけ情報メディア「おでかけわんこ部」の運営です。
いつもは自社のメディアで記事を書いていますが今回は私のパーソナルな想いを残しておきたいと思ったのでこのnoteに初めて投稿します。
私は2024年3月に第10回目を迎えた関西女性起業家ビジネスプラン発表会「LED関西」において10名のファイナリストとして発表させて頂きました。
この記事ではこれからLED関西に出たいなと思っている女性や、起業をしたいと思っている女性の皆さんの参考になればと思っています。
そして実は一番届けたいのは「起業なんて考えてないけど…私にも何か可能性があるのかな」と少し闇の中にいる女性です。
私は10年前、引きこもりでした。前向きな気持ちになれず真っ暗の闇の中にいました。
そんな私がなぜ起業をしたのか?
どうして愛犬とのおでかけ情報メディアだったのか?
なぜLED関西に出ようと思ったのか?
を当時の自分の感情と向き合いながら記録したいと思います。
この記事で、例えば起業という選択肢が増えて気持ちが前向きになる女性が1人でもいたら嬉しく思います。
※記事内にLED関西の発表の動画も埋め込みしておりますのでよろしければ見てください
私がなぜ起業をしたのか?〜原体験〜
まず私がなぜ起業をしたのか?についてです。
何不自由なく育ててもらった私は大学卒業後、都市銀行に入行し結婚。
いわゆる多数派の人生を歩んでいました。
(もちろんこの頃に起業なんて微塵も考えていません)
結婚してから1年後に銀行を退職し、ずっとやってみたかったWEB制作の会社に最初はアルバイトとして入ります。
このWEB制作会社では、未経験の状態から本当に色々なことを教えていただきました。作る楽しさをたくさん経験しました。
3度の流産で引きこもりに
結婚後、3回の流産を経験しました。いずれも心拍が確認されてから残念ながらお腹の中で亡くなっていることがわかり手術をしました。
1回目の妊娠時は14週ほどだったので母子手帳ももらっています。私にとってあの手帳は一瞬でも母親だったのだと思い出させてくれる宝物です。
この頃は毎日泣いてばかりでした。
「どうして私だけ」
と悲観的な気持ちに溢れ、勝手な劣等感を抱き大学や銀行時代の友人とも連絡を取らなくなり家に引きこもるようになりました。
社会とのつながりがなくなった私は、強迫性障害・不安障害など心のバランスも取れなくなっていきました。
少しだけ前向きになれたフィンランド旅行
子供を望まない人生を選ぶのか?それとも望むのか?
3度の流産の後、この決断を自分では決められませんでした。
そんな時にたまたま目に止まった「女性おひとり様フィンランド旅行〜オーロラ紀行〜」のパンフレット。
直感的にオーロラを見にいきたいと思いました。ツアーメンバーもみんな女性でおひとり様という点も私の背中を押してくれました。
そして自分では決断できなかったことをオーロラに託してみることにしました。
「もしオーロラが見られなかったら諦めよう」と。
3日間チャンスがありましたが、オーロラは見られませんでした。
夜中もずっと起きて空を見上げていたあの頃の自分の感情と向き合うと、どこかで「見たい」「諦めたくない」という想いがあったのだと思います。
ですが3日間、ずっとずっとずっと真っ暗な空でした。
この出来事でほんの少しだけ吹っ切れた部分があります。
「もう向き合わなくてもいいよ」
「十分向き合ったし頑張ったよ」
と自分が自分に寄り添えるようになりました。
(ですがまだまだ起業したいなんて考えは出てきていません)
愛犬ポメラニアンのきなこを迎える
劣等感に溢れ、人生に対して前向きになれず、相変わらず引きこもる私を心配した母からの勧めで昔から大好きなわんこを迎えることになりました。2014年のことです。
最初は実家のわんことのお別れが悲しすぎたこともあり、新しく命を迎えることに躊躇していました。
ですが抱っこをした瞬間に「愛おしさ」で胸がいっぱいになり自然と笑顔になっていました。心がほぐれていく瞬間を今でも覚えています。
きなことのお散歩やおでかけが生きる喜びに
きなこをお迎えしてからはどんどん心が元気になりました。
犬を飼っていると必ずお散歩をします。お散歩をきっかけに日光を浴び、風を感じ、季節を感じるようになりました。
またお散歩帰りに立ち寄るドッグカフェで他の飼い主さんと他愛もない会話を楽しむようになりました。
きなこという愛犬の存在を通し見えた外の景色、そして人との繋がりは私の心を元気にしてくれました。
そしてきなこへの愛情で心が満たされていきました。
ブログスクールやコワーキングスペースに通い出す
引きこもり時代は「自分は何者でもない」という劣等感の塊でした。
ですがきなこのおかげで心が前向きになった2016年ごろから「自分に自信が持てる武器を持ちたい」そんなふうに思うようになりました。
そしてブログの書き方やSEOを学ぶためスクールに通ったり、コワーキングスペース(オオサカンスペース)のメンバーにもなりました。
それまで社会とのつながりを切っていた自分にとって、新しい自分の居場所ができたというのは、次のステップである「起業」という出来事の中でも大きな分岐点でした。
(少しずつ起業の雰囲気が出てきました)
個人事業として「おでかけわんこ部」を立ち上げる
ブログやSEOの基本的な知識を習得し、まだまだ弱々しいながらも武器を持った私は自分のメディアを持ちたいと思うようになっていました。
どんなメディアにするのか?
そのメディアで幸せにしたいのは誰なのか?
どんな情報があればその人たちは幸せになるのか?
それをひたすら考えました。
私が幸せにしたいのは誰か?
それは私と同じようにペットの存在で救われている飼い主さんたちです。
「ペットは家族」という言葉は今や当たり前になってきました。
ですがこの言葉の解像度を上げてペットをお迎えする人々の想いに寄り添ってみると例えば「夫婦の子供として」「生きるパートナーとして」お迎えされています。
そして中には私のような「真っ暗な世界にいた人」もいるかもしれません。
「ペットの存在で生きる希望を持つ人を幸せにしたい」そう思いました。
ではどんな情報があればその人たちを幸せにできるのか?
それは私の原体験にもつながる「愛犬とのおでかけ情報」でした。
私自身、きなことのおでかけ先を探している時間は少し先の楽しみができとってもワクワクした、そんな前向きな気持ちになれました。
「愛犬とのおでかけ情報は探しにくい課題」を解決したい
当時きなこと一緒に行けるカフェや宿、観光施設を探すのはとても大変でした。
インターネットで検索しても画像がなくイメージができなかったり、屋外のみの利用なのかなど同伴ルールが分からなかったり愛犬とのおでかけに関する情報は整理されていませんでした。
ですがInstagramを見ると毎日のように全国の飼い主さんが「愛犬とここに行ってきたよ」と可愛い写真と共におでかけ情報を発信されていました。
「この全国の飼い主さんの点在する情報を繋ぎ合わせることで有益な情報になるのでは?」
そんな気づきがありました。
幸せにしたい人、そして届けたい情報が決まった2019年夏。
飼い主さんからの情報提供型のコミュニティメディア「おでかけわんこ部」を個人事業として立ち上げました。
全国の飼い主さんにワクワクを届けたい
メディアのコンセプトは「きみのワクワクはわたしのHappy」。そしてメディアの目的は「全国の飼い主さんにワクワクを届ける」です。
これは2019年の立ち上げ当初からずっと変わらず大切にしているコンセプトと目的です。
<おでかけわんこ部コンセプトムービー>
2020年7月法人化〜起業した理由〜
2019年から開始したおでかけわんこ部は、半年でInstagramのフォロワー数が1万人を超えるなど、確かな需要を感じていました。
実際の飼い主さんの写真や感想をご紹介することで伝わりやすく、そして拡散性の高いコンテンツになりました。
このコンテンツを評価いただき、ペット関連の事業者さんからのPRや協業の依頼も増えメディアとして成長していきました。
起業した1つ目の理由
そうしたメディアの取り組みをある新聞社さんにご紹介いただいた時のこと。
私の肩書きは「愛犬家」となっていました。
確かに愛犬家であることは間違いはありません。ただ私自身としてはひとつの事業として行なっている感覚でも、社会から見ると愛犬家の趣味の延長のような立ち位置になるんだなとハッとした気づきがありました。
「起業したい」そう思った1つ目の理由として、このおでかけわんこ部というメディアを、自分が幸せにしたいと思った飼い主さんに届け拡げていくには会社の事業にする必要があると感じたからです。
起業した2つ目の理由
2つ目の理由。
それは自分自身に肩書きをつけたかったという利己的な理由もあります。
ずっと抱いていた「自分は何者でものない」という劣等感を、会社の代表という肩書きでどこか納得させようとしていたというのも本音です。
おでかけわんこ部の成長
法人化したことをきっかけに協業案件も増え、おかげさまでおでかけわんこ部は事業として成長しました。
成長した要因として2点あったと思っています。
1つ目はコロナ禍が追い風になったという点。
癒しを求めたり新しい生活様式でペットを迎える人が増えました。また国内旅行者の中でも需要が高いペットツーリズムに対する注目度が増しました。
(この時期、星野リゾートさんがほとんどの施設に愛犬同伴OKの客室を作ったことで業界の中で大きなうねりが生まれました)
2つ目は単なるおでかけ情報だけではなく「飼い主のマナー・同伴ルール」の情報も必ず付け加えることで健全なペットツーリズムを促進したことが、飼い主さんや事業者さんの両者からご支持をいただいた点です。
2023年3月 ビジコンOSAKA ベンチャー大賞受賞
おでかけわんこ部の事業が軌道に乗り出した2023年、「おでかけわんこ部の事業がどのように評価されるのか?」それを確かめたいという想いもあり、初めて挑んだピッチコンテスト「ビジコンOSAKA」。
このコンテストでベンチャー大賞をいただきました。
改めてペット関連市場に対する注目度の高さを実感しましたし、自分たちの事業に対して自信を持てる大きなきっかけとなりました。
LED関西にエントリーした理由
2023年夏、私は10回目を迎えるLED関西にエントリーすることを決めました。
その理由は「起業家として、経営者として」自分自身を成長させたい思ったからです。そして自分が成長することで目指したいペットフレンドリーな社会が近づくと感じました。
それまでは、どうしても個人事業主の延長という意識になってしまったり、いちペットの飼い主の視点で物事を捉えてしまう癖がありました。
LED関西の公式サイトにあった「なぜあなたがそれをするのか?」という言葉が胸に突き刺さりました。
「起業家としての想いを大事に、それを経営者としてビジネスプランに落とし込むことで社会を変えていきたい」
エントリーに対し迷う気持ちはありませんでした。
私が目指すペットフレンドリーな社会
4年間、おでかけわんこ部の事業を通し感じた「急速に進むペットの家族化」に対する「日本はペット後進国である」という社会の歪み。
この課題をおでかけわんこ部で築いた愛犬家のコミュニティを活用し解決するビジネスプランを2024年3月、ファイナリストとしてステージで発表しました。
ですがエントリーした当初、この事業モデルが最初からあったわけではありません。
当初は「日本をもっとペットフレンドリーにしたい」という想いだけでした。
アクセラレータープログラム「DOORS」から始まった、プロデューサーの井本さん、そして過去のファイナリストの先輩方、事務局の方の数々のセミナーやメンタリングを通し自分自身の起業家として、そして経営者としての視点が変わっていきました。
時にペットの飼い主の立場で、時にペットを飼っていない人の立場で、時に動物が苦手な人の立場で、そして社会全体の立場で。
視点を使い分けながら事業のビジネスモデルや想いを整理できた点は大きな財産となりました。
LED関西のファイナル発表会を終えて
2024年3月5日無事ファイナリストとしての発表を終え、ありがたいことに25社様のサポーター賞をいただきました。
この半年間、自分の心と事業に向き合い整理してきた内容を精一杯発表しました。
過去の引きこもりになった経験を言葉にして公にすることは勇気のいることでしたが、自分を丸ごとさらけ出したからこそ「なぜ私がこの事業をするのか?私が幸せにしたい人は誰なのか?」の部分がより伝わったのではないかと思っています。
発表を終えた今もはっきりと言えること。
それは私はペットのきなこの存在で生きる希望をもらいました。だからこそ同じようにペットの存在で救われる人を幸せにしたい。
例えば一緒に行ける場所が増えたり、移動の選択肢が増えたり、きちんと愛情を込めて送り出せる選択肢が増えたり。かけがえのない時間をより豊かにしたい。
日本が日本らしいペットフレンドリーな社会になる取り組みをこれからもいろんな事業者様と手を取り合って進めていきたいと思います。
起業という選択肢で広がった私らしい生き方
引きこもりの時に感じた女性としての劣等感。
ずっと多数派の人生を歩んできた自分にとって抜け出し方がわからない暗闇でした。
そんな暗闇の中で現れた愛犬の存在。もがきながらも自身の原体験から手探りで気がついた事業としての可能性。そして起業。
もしかすると自分と同じような人を幸せにすることで、自分自身を幸せにしてあげたいという利己的な部分があるのだと思います。
でもそんな起業があってもいいと思いますし、女性に限らずいろんな生き方の選択肢があっていい。
3度の流産でどん底にいた時、どのブログを読んでも子供を持たない選択肢を選んだ人のブログは出てこなかった(おそらく表に出ていないだけ)。
あの頃の私がもし「起業という選択をした人がいる」というブログを読んでいたらもう少し早く抜け出せたかもしれない。だからこのブログを読んで誰か1人でも少し前向きになってくれたら嬉しいなと思います。
事業を進める上で今後の結婚観の違いもあり(私の価値観が変わってしまった)2022年にお互いにとって前向きな離婚をして今は1人と犬1匹で暮らしています。
私にとって今は、会社そしておでかけわんこ部というメディア、そして支えてくれるメンバーは家族のような存在です。
LED関西にはいろんな想いの女性が集まる
もしかするとLED関西はキラキラした女性起業家の世界に見えるかもしれません。
事実、輝いている女性起業家の方でいっぱいです。
子育てをしながら起業をする女性。働きながら起業をする女性。
ですがその輝いて見える背景には、それぞれの原体験から生成されたある種泥臭い「悔しさ」や「覚悟」の想いがオーラのように纏っているのだと自分自身がファイナリストになり感じました。
LED関西はそんないろんな経験をした女性の想いが集まり循環する場所だと想います。
最後に
構成の都合上、これまで私一人で事業を進めてきたかのような組み立てに自分自身が一番違和感を感じています。
いつもどんな時も周りの皆さんのサポートがあります。時には一緒に喜んでくれたり、悔しがってくれたり、貴重なアドバイスを頂いたり。
特にどん底の暗闇の時代に、私に居場所を作ってくれて武器を持たせてくれたオオサカンスペースの代表の大崎さん、スタッフさん、そしてメンバーの皆さんにこの場を借りて改めて感謝します。
そしてそのオオサカンスペースという場所で出会い、私の想いに共感し一緒に事業を進めてくれている運営メンバーの宮田(起業したのちには取締役に就任)にも感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも自分にお返しができることを探しながら「丁寧に誠実にコツコツ」とペットフレンドリーな社会実現に向けて事業を進めていきたいと思います。
個人的な夢としては、出身地である滋賀で「ペットOKのオフィス兼カフェ」を持つこと。そして今度こそオーロラを見ることです!
株式会社tent tent代表 小西恵子
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