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『言葉を交わす』ということ。

2022年3月
今から2年と4か月程前に訪れた写真展で、私は1人の青年と出会った。
彼のInstagramのプロフィールにはこう書かれている。
Makoto Akita 『耳が聞こえません』

熊本で開催されたMakotoの写真展を訪れた時、私はろう者(耳の聞こえない人)と接するのも、手話を実際に目にするのも初めてで、Makotoとは筆談や手話通訳の人を交えて写真の話をした。
このとき『もっとMakotoと写真の話がしたい』
そう思ったことが、私が手話を学ぶきっかけになった。

Makotoの写真展で。

手話を学び始めた頃は、ろう者と会話をすることなんて出来ないから(My name is Keiko.レベルでアメリカ人と会話が成立しないのと同じ)気付かなかったのだけど。
最近になって耳の聞こえない友人と手話で話をするようになって(まだ2歳児と大人が話をするレベルだけど…)、気付いたことがある。

今まで自分がいかに『なにかをしながら』会話をしていたのか、ということを。
テレビを見ながら、スマホを触りながら、人の話を聞くことが当たり前になっていたことに。

手話は目で見る言語なので、当然、話す時は相手と対面して目を見て話す。
片言の手話しか出来ない私は、どうにかして思っていることを伝えたくて、一生懸命表現する。
話を聞いて(見て)くれる友人も、私の拙い手話や表情や身振り手振りから一生懸命想いを汲み取ってくれるし、私に分かりやすいようにゆっくりと、はっきりと手話で返してくれる。
それがとても新鮮で、嬉しくて、心地良い。

私は当たり前のことを、忘れていた。
言葉を交わすって、心を交わすことなんだって。

これだけスマホが普及して、メールやSNSに文字を入力してやりとりをすることに慣れてしまって。
大切な人と話をする時でさえも、心を伝える努力を忘れてしまっていた。

だからこれからは。
声で言葉を伝える時も、スマホを置いて、テレビを消して、顔を見合わせて話をしたい。
相手の想いをきちんと受け取りたいし
私の想いをちゃんと言葉にして、伝える努力をしたい。
大切な家族と、恋人と、友人と。
言葉を交わすのが、いつ最後になるかもわからないのだから。
ちゃんと言葉を、心を、交わさないと
心なんて簡単に離れてしまうものだから。

手話に、声に、私の想いをのせて。


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