初・人間ドッグ
今年の誕生日、自分へのプレゼントは人間ドッグにした。
51歳の今まで、大きなケガや病気をした事がなく、週に一度のエアロビを27年続け、週に何度かの1時間の散歩も出来ている。
食は細く胃腸は弱いけど、「ストレス性のもの」と診断されるくらいで大したことはなかった。
心からありがたいと思う。
この身体に感謝の気持ちを込めて、人間ドッグに申し込んだ。
★
初めての検便。
「水洗トイレでどうやって採取するの⁉︎」と疑問があったけど、1ヶ月前に送られて来た書類の中に説明書があり、納得。
ドキドキしながら2回分の採取も終わり、当日を待つだけとなった。
書類を読んでいくと、私の苦手な検査が3つある…
無事に出来るか不安だ。
★
午前8時、受付を済ませてお着替え。
身長・体重・お腹周りの測定は、年に一度の集団検診でお馴染みなので、何事もなく終わる。
視力・聴力の検査もするりと終わる。
一つ目の不安は、血液検査。
倒れたこともあるので、ドキドキ。
血管が細いからか、腕を叩かれ何度も刺される事が多い。その間に気分が悪くなってしまう。
「針は一回で刺してください!」
心の中で祈りながら、目線を遠くにする。
今回、採血するお姉さんがとても上手だったので、あっという間に終わった。
★★
胸のレントゲン・エコーも問題なく終わる。
二つ目の不安、婦人科の検査。
10年前に受けた時の痛みがよみがえる。
ここ数年、友人・知人に婦人科の病気が見つかり「早めに検診を受けてして良かった」との声を身近で聞くと、検診を受ける大切さが分かる。
まずは、マンモグラフィー。
10年前に受けた時は、検査の方がおじさんだった。上半身裸で恥ずかしく、冷たい機械に小さい胸を無理やり挟まれて痛かった。あまり良い思い出ではない。
今回は、検査室に入ると若い女の方でほっとした。そして機械も進化していて、そんなに痛くないし冷たくない。専用のケープもあるかので、片方ずつ隠せるし、恥ずかしさは全くなかった。検査の仕方も機械も進化している。これなら「みなさん、マンモグラフィー検査を受けてください」と堂々と言える。
そしてもう一つの婦人科の検査…
これが一番苦手!
あの台、器具、細胞採取の痛み、羞恥心…
それでも、検査しなければ病気は見つからない。
痛みに耐えきれず、声を出してしまった。
この検査は全く進化していなかった。
毎年検査を受けていれば、慣れるのだろうか? 別の方法では出来ないのだろうか?
この痛みが嫌で、私のように10年も検査を受けずにいる人は多いと思う。改善することは出来ないのだろうか…
この痛みは3日ほど続いた。
★★★
そして3つ目の不安、胃カメラ。
30年ぶりである。
学生時代(20歳)、胃カメラ検査をした事があった。
「痛く無いですよ」と言われていたのに、ものすごく苦しくて涙もよだれもボロボロで、カメラが胃袋でぐるぐる回る痛みに耐えきれず、「やめてください」と言いたいのに口にはカメラが入っているので言葉にならなかった。
そんな辛い思い出しかない胃カメラ検査だったので、その後は胃のレントゲン検査ばかりしていた。あれも苦しい。気持ち悪いのにたくさんのバリウムを飲み、ゲップを我慢して、機械に必死でしがみつき、ぐるぐる回される…病人に胃のレントゲンは向いていないと思う。
今回は悩んだ末に、胃が弱い私はしっかりと診てもらいたいと思い「麻酔して眠っている間に胃カメラを」と伝えた。
しかし、胃カメラの担当医が、
「30年前と違い、胃カメラは細くなっているから大丈夫だよ」
と〈眠っている間に検査〉をやりたがらない。仕方がないので、医師の言葉を信じて喉だけの麻酔で挑戦してみることにした。
喉にどろりとした麻酔液を溜め込み、だんだんと口の中が痺れてくる。
ドキドキしながら検査台へ横になる。
息子のような年齢の看護師さんが肩や背中を撫でてくれて、
「涙もよだれも、安心してここに出してくださいね。」
「大丈夫、ゆっくり深呼吸しくださいね。もうすぐ終わりますよ。」
その言葉を信じて、呼吸を整えているうちに、終わった。
看護師さんが天使に見える瞬間🪽というのは、こういう時なんだなぁと実感した。
☆
麻酔が切れるまで、人間ドッグを受けた方々とソファーでゆったりTVを見て過ごした。
飲み物は専用のコインで自販機から自由に飲めるが、私は麻酔が切れるまで飲めない。
TVではメジャーリーグで大谷翔平や山本由伸が大活躍中。ドッグを受けた方々と拍手したり、のんびりぼぉーとTVを観るなんて、何年ぶりだろう。人間ドッグのおかげで、大谷翔平のホームランが見られた!
☆
診察室に呼ばれ、医師に今日の検査の説明を聞く。
「細かい部分はいろいろあるけど、性急に治療しなければならないというものは見つからないですね。胃カメラ、頑張りましたね!胃も食道もきれいでしたよ。」
と言われ、とりあえずほっとする。医師も褒め上手だ。
会計時に「ランチはどれにしますか?」とメニューを見せられる。人間ドッグは、検査後の飲み物とレストランのランチ付きなのだ。
昨夜は控えめに食べ、今朝は水も飲まずに来たのだから空腹のはずだが、あまり感じない。とりあえず、お蕎麦が付いているBランチをお願いした。
「レストランは9階になります。注文しておきますね。本日はお疲れ様でした。ありがとうございました。」
病院ってサービス業だったんだと改めて気付く。
☆
エレベーターの扉が9階で開くと、周辺の山々が目の前にあった。
病院の周りは田畑が広がり、稲刈り前後の田んぼのモザイク模様がきれいだ。
食道のガラスには〈◯◯山‥‥m〉と書かれてあり、それを見ながらBランチをいただいた。
空っぽの胃袋に染みる味噌汁、温かい焼き鯖が美味しかった。
♡追加の出来事
心電図や肺活量の検査を行った時のこと。
「はい、吸って吸って吸って、思いっきりプァーと吐いてー!」
と、ノリノリで誘導してくれる肺活量検査。
どこかでこの人と会ったことがあるような…
「もしかして、敬子ちゃん?」
検査の方に〈ちゃん〉付けで呼ばれる。
「ゆみちゃん⁉︎」
小中高同級生だったゆみちゃんである。
マスクと白衣姿で全く分からなかったが、面影はある。
「お互い、こんな歳だから気をつけようね!」
なんて笑顔で話していると、検診の緊張が解けていく。地元ならではのあたたかい出来事だった。
50歳までたくさん働いてくれたこの体。
きちんとメンテナンスをして、これからも元気に働いてもらいたい。
★★★
『細胞も心も生まれ変わる日々 進んで行こう未知の世界へ』