【#2】ふるさと納税っていいの?〜ふるさと納税の意義を考える〜
本シリーズは、新社会人となり、ふるさと納税に興味を持った筆者が「本当にふるさと納税っていいの?」という疑問に答えるために、1ヶ月間調べた結果をまとめたものである。
本記事では、「ふるさと納税の意義とは?」という疑問を解消していく。果たして、社会にとって意味のある制度なのだろうか?
ふるさと納税について考えるきっかけになれば幸いである。
筆者はふるさと納税には3つの意義があると考える。
① 地方への財政移転
ふるさと納税の最大の意義は、都市部から地方への財政移転を促進する点にある。
そもそも、ふるさと納税は2006年に福井県の西川知事が「将来を担う子供に未来を託し、地方は多額の行政コストをかけて育んでいるのに、大都市集中が放置されているわが国ではそのコストを税として回収する前に、大都市圏へ子供たちが流出してしまう」と問題提起したことから制度の検討が行われ、2008年に発足した制度である。
地方への財政移転が最大の意義であり、実際に2008年〜2022年の寄付の累計額の89%は三大都市圏(首都圏1都3県、大阪府、愛知県)以外の地域への寄付となっている。よって、ふるさと納税が生み出しているマクロの傾向には意義があると考える。
② 一次産業の支援
ふるさと納税は、農業、漁業、林業といった一次産業の支援にもつながっている。これらの産業は、日本経済・日本文化の基盤を支える重要な産業でありながら、従事者の高齢化が進み、斜陽化が進んでいる。
これは課題と表裏一体なのだが、ふるさと納税は競争力のある一次産業を有している自治体に有利な仕組みになっている。(なぜならば、魅力的な返礼品を用意することができるから)
それが故に自治体間格差を生み出しているわけだが、ポジティブに捉えるのであれば一次産業を支援できる仕組みと捉えられる。ふるさと納税の寄付によって、地方の特産品や名産品が全国に知られるようになり、その結果、需要が増大する。
これにより、一次産業従事者の収入が安定し、地域経済の活性化に寄与する。また、返礼品として提供される特産品の品質向上や新商品の開発が促され、産業全体の競争力が強化されるため、一次産業を支援するという意義があると考える。
③ 地方自治体の新規政策の実行支援
ふるさと納税による寄付は、自治体が新規政策の実行資金として活用できる。自治体にとっては喉から手が出るほど欲しい資金源なのである。
なぜなのかを簡単に説明すると、仮に自治体が努力をして税収を増やしたとしても、税収で増えた分は地方交付税(国からの財政移転)は減らされる仕組みになっているのに対して、ふるさと納税の寄付金はいくら増えても地方交付税は減らされないからである。
地方自治体は人口減少・高齢化の影響で財政が硬直化しており、新しい政策を実行するための財源が不足している。
ふるさと納税による寄付金は自主財源として自由に使えるため、自治体は独自の施策を立案・実行する自由度が高まり、地域のニーズに即した柔軟な対応が可能となる。地方自治体にとっては喉から手が出るほど欲しい財源であり、地方自治体の新規政策実行を支援できるという意義があると考える。
なお、ふるさと納税の使途としては「健康・医療・福祉」「教育・人づくり」「子ども・子育て」「地域・産業振興」などが多く見られる。
総務省の調査によると、令和4年度時点ではほぼ全ての自治体においてふるさと納税の使途を指定できるのだが、具体的な事業までを指定できる自治体は25.7%である。自分の寄付金が何に使われるのかを具体的に指定したい人は、事業までを選択できる自治体への寄付が望ましい。
次回は、ふるさと納税の課題について考えてみる。
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