2023年流行歌アゲインⅠ〜最強で無敵のアイドルへ〜
時が経つのは早いもので、今年もあと一週間となった。どんな一年だったかを振り返る際、肴となるのはやはり“流行歌”で、国民的ヒット曲が絶滅危惧種となり、音楽自体が無限消費財と化しても、産声を上げて間もないヒットチューンはいつの時代もかけがえのない友だ。
J-POP全盛時代を知る我々40代としては、「最近の曲なんて…」「もう若者についていけない」と思いたい気持ちもわからんでもないが、全世代縦断型のトレンドとなっていないだけで、クオリティはあの頃と遜色ない。
今回は後世に語り継ぎたい2023年のヒット曲を紹介したい。なお、“お宝発掘”的なマイナーソングは出てこないのであしからず。
①YOASOBI『アイドル』
文句なしに今年を代表する一曲で、世界的にも大ヒットし、2023年の「国歌」と称して過言ではない。どう考えても、どの角度から見上げてもレコ大受賞して然るべきなのだが、優秀賞にも入っていないのなんでだろう〜。
その昔、J-POPには勝ちパターン方程式というのが存在し、例えば大型タイアップを取り、哀愁漂わせるメロディラインをサビに持ってきて、カラオケで歌いやすく編曲し、音楽番組に露出しまくれば、ある程度のヒットは確約されたものだ。しかし『アイドル』はその方程式を完全否定し、転調に転調を重ね合わせ、我々が抱く「当たり前」を一網打尽にぶち抜いていく。
日本の音楽番組では一度たりとも歌われておらず、年末の紅白が初めての披露となる。誰よりもガーリーなのに誰よりもジェンダーニュートラルにステージに舞うikuraちゃんに大注目だ。
②MAN WITH A MISSION×milet『絆ノ奇跡』
音楽ジャンルの嗜好が細分化していった結果、『ちゅ、多様性。』の如くチャネル供給過多な状況が勃興していったが、みんなの気持ちが一つになれる瞬間を醸し出す音楽が朽ち果てつつあるのは大いに憂慮すべき事態だ。
『愛は勝つ』を聞けば、その場にいる全員が4分間だけ愛の可能性に身を任せることができるし、『世界に一つだけの花』にはあらゆる争い事を一時休戦させる呪力が潜んでいる。『いつでも夢を』『また逢う日まで』『時の流れに身をまかせ』…国民的流行歌はいつの世も聞く者の心を一つにした。
2023年の曲で“一つ”になれる曲をあえて一つ挙げれば、やはりこの曲だろう。雅なイントロから始まったと思いきや、自問自答を繰り返しながら現在位置を再定義するかの如く音を固め、サビで大気圏へ一気に突入していく疾走感溢れるロックチューン。どうにもならない現実社会は実は奇跡の連続で成り立っており、その奇跡を起こすためにもこの曲で“一つ”になりたい。
流行歌をウォッチするための指標として昔はオリコンチャートをよく見ていたが、今はビルボードジャパンHot100。しかし、人為的に探すよりも、FMラジオで偶然聞くのが意外にも最高の出会いだったり。
第二弾はまた次回。
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