Parsons School of Design | MFA Design and Technologyのクラスを紹介します
Parsons School of DesignのMFA Design and Technology Program(通称DT)でVisiting Scholarとして2022年8月から1年間滞在しています。Visiting Scholarというポジションですが、主に修士1年の学生と共に2022年秋セメスターと2023年春セメスターの授業を受講しました。
2022年秋セメスターで、最後の1週間ほどがパートタイムの教職員によるストライキの影響で私の受講している授業が全てストップしてしまうという悲しい期間もありましたが、春セメスターは問題なく実施され、充実した秋セメスターと春セメスターの1年を過ごしました。
私自身、過去にデザインシンキングを学んでいるので、デザインシンキング以外の事を学びたいと考えていましたが、期待以上にデザインシンキングの事は学びませんでした。あるとするとイテレーションの考えくらいでしょうか。それよりデザイン・アートの基礎知識を学べた事がとても良かったです。
Parsonsに来る前は様々な人に話を聞きましたが、具体的にクラスで何を学べるのかはわからない部分も多かったです。そこで私が取得したクラスでどういったことを学んだかをざっくり紹介します。Parsons DTに興味のある方など誰かのお役に立てればと思います。
はじめに
Parsonsで学びたいと考えている方はすでにご存知かもしれませんが、授業のリストはThe New School Course Catalogに記載されています。授業の説明も記載されているので、興味に応じてご確認するのが良いかと思います。
受講した授業とその紹介
私が2022年秋セメスターと2023年春セメスターに受講した授業は以下になります。
Creative Practice Seminar 1
Game Design as Play Game
Major Studio 1
Collab: Roblox
Major Studio 2
Cloud Salon
Creative Practice Seminar 1
Taught by Colleen Macklin
2022 Fall Semester
授業概要
CPSはDTの学生必修で、様々なデザイン理論を学びながらCritical Thinkingを身につける授業です。各クラス10人ちょっとの人数で、セミナー形式の授業です。先生が毎回違ったデザインの考え方について説明してくれ、それを使ったミニ課題の様なものをチームや個人でやります。時々チーム課題が宿題になる時もありますが、基本宿題は読み物がどっさりあります。読んだだけでは理解出来ない理論を課題を通して実践することで、理解していきます。例えばどの様なものを学ぶかは下の「読み物の一部紹介」をご覧ください。
感想
読み物がかなり多く、また私の知らない事が多かったので、読んで内容を理解するのに苦労しました。というか内容を全く理解出来ないまま授業に突入することもざらでした。先生に「自分の英語力が低いのが問題なのか、内容が難しいからなのか、課題を読んでも全然何を言いたいのかわからない」と相談したところ、「みんなきちんとは理解出来ないと思うから、授業での課題を通して徐々に理解していってね」とアドバイスをもらうくらいでした。
ただしここで学んだ理論は大変勉強になりました。個人プロジェクトでも自然とここで学んだことが活かされました。
読み物の一部紹介
Game Design as Play Game
Taught by Caroline Porter
2022 Fall Semester
授業概要
様々なジャンルのゲーム(主にアナログなゲームが題材)がなぜ面白いかの理論を学び、3~4週間に一度、チームや個人で実際にゲームを作る授業です。20人程のクラスで学部生やDT外の学生もいます。授業の中では、先生が理論を説明し、既存のゲームを皆でプレイし理論を理解します。その後チームや個人にわかれてゲーム開発→テスト→修正を繰り返してゲームを開発します。例えばゲームジャンルとして、Competitive Play、Cooperative Play、Skill-Based Play、Performative Play、Simulation-Based Playなどがあり、それぞれがどのようなゲームであり、どのようなゲームが含まれるのかを理解します。デジタルのゲームだと開発期間が長くなってしまうので基本はアナログのゲームを推奨していますが、人によってはデジタルのゲームを作る人もいます。
感想
何故みんながゲームを面白いと思うかには法則や理論があることを学びました。ボードゲームやアナログなゲームなほど、言葉遊びやアメリカ文化を知らないと理解出来ないゲームが多かったので言語的に苦労し、みんなの言っている意味がわからないことも多かったです。最後の方でオノ・ヨーコのGrapefruitを詩的なゲームとして紹介された時には、ゲームとは何かを心から考えさせられました。
ゲームデザイナーになりたい学生にはおすすめです。
読み物の一部紹介
DT program directorの本ですがPDFもらえるので買わなくても良いです
Major Studio 1
Taught by Clarinda Mac Low
2022 Fall Semester
授業概要
Major Studio 1はDTの学生必修の授業です。10人ほどの学生で1クラスです。2年時の卒業制作につながる授業で、次セメスターのMajor Studio 2からは個人プロジェクトがメインですが、Major Studio 1ではチームプロジェクト半分、個人プロジェクト半分となります。最初の8週で与えられた課題で2つのチームプロジェクトがあり、最後の8週で自分の好きなテーマを絞って個人プロジェクトを実施します。読み物も少しありますが、各プロジェクトの助けとなる内容なので大変助かります。
チームプロジェクトでは、Instruction Sets for Strangersという「何かものをNYCのどこかに置いて、説明無しで知らない人をインタラクションさせよ」という課題などが出ます。また個人プロジェクトでは、8週で自分の興味のある事で自分のスキルで出来る事を定め1つのプロジェクトを形にします。7日連続で7種類のプロトタイプを作る7 in 7、ユーザーインタビューやテストをするUser Engagementなどステップがある程度決められているので、それに沿って進めると形になります。最終プレゼンとプロトタイプの発表があります。(ストライキの影響で私のクラスの発表は2月になりました)
感想
Instruction Sets for Strangersは多くのデザイン系大学でもやっているみたいなので、検索すると沢山例が出てきます。メディアのあり方、メッセージの伝え方など色々と学びの多い課題でした。個人プロジェクトでは、自分がやりたいプロジェクトがある程度見えている学生はスムーズですが、自分がやりたいプロジェクトがまだわかっていない学生はかなり困っているイメージです。しかしアート作品を作る学生がいたり、バイオ系の商品デザインする学生がいたり様々なので、他の学生のプロジェクトを見ているだけでも楽しめます。
先生の専門はバラバラなので、自分の興味のある分野がバックグラウンドの先生のクラスを取ると良いアドバイスがもらえるかもしれません。
読み物の一部紹介
Collab: Roblox
Taught by Kyle Li
2023 Spring Semester
授業概要
RobloxとParsonsのコラボレーション授業です。Robloxやリアルのファッションデザイナーとコラボレーションし、Roblox内のデジタルファッションを作りながら、デジタルとフィジカルのファッションについて考察します。コースの最後にはイベントを開催し、学生たちの成果を発表しました。Parsons DTでは、将来的に様々な人々とコラボレーションする事を意図し、Collab: という名前の様々な企業や団体とコラボした授業があるので、学生の興味合わせて取得することが出来ます。
感想
Parsonsはファッションデザインで一番有名です。この授業ではParsonsファッションデザインの卒業生とのコラボレーションを楽しめたのがとても良かったです。リアルファッションとデジタルファッションを比較しながらデジタルファッションで成し遂げるべき事は何かを議論出来ました。またRobloxの方やデジタル/ファッションデザイナー、モデルなどなど多くの方の講演が実施されるのでそれを聞くだけでも価値があると思いました。
Collabはセメスターによって変わるので、その時の運次第で面白い授業を見つけて下さい。
Major Studio 2
Taught by Anthony Deen
2023 Fall Semester
授業概要
Major Studio 2はDTの学生必修の授業です。10人ほどの学生で1クラスです。Major Studio 1に続く授業で、約15週を通して1つの個人プロジェクトを作ります。最初は何をaugmentするのか、何をポイントとするのか、何をリサーチするのかという基礎の部分を実施し、その後実際のプロトタイプ開発に進みます。私が昔、東京で理系の修士号を取得した時の様に、週に1回教授とのMTGがあり自由に何かしら持っていくスタイルではなく、1-2週間に1度発表があり、それに沿ってプロジェクトを進めると最終的に形になります。
実質プロトタイプ開発する期間は2ヶ月程あるので、自分の現在のスキル、伸ばしたいスキルと相談しながらプロトタイプを開発します。
進捗はクラスで報告し、先生や学生と批評(Critique)をしながら自分のプロジェクトを進めます。最後の週でプレゼンとプロトタイプの発表をします。
私は取得していませんが、Creative Practice Seminar 2ではMajor Studio 2でやってるプロジェクトをドキュメント化します。ドキュメントする方法は文書であったり映像であったりプロジェクトや個人に応じて変わります。2つの授業のセットで、リサーチクエッションとプロトタイプ、ドキュメントまでを作りきり、学んだ事を2年次のThesis(卒業制作)で1年を通してやりきるというプランだそうです。
感想
Parsons DTでは、リサーチクエッションが重視される傾向があります。Critical Thinkingを育てるにあたり、リサーチクエッションがなければ批評(Critique)しずらいという面もあるかもしれません。なので文献調査やロジック(Storytelling含む)立てをしながらプロジェクトを組み立てるので、理系的な頭の使い方も必要です。聞いた話ですが近いプログラムであるNYU ITPではリサーチクエッションよりHow Cool!が重視されると聞きました。
先生は1人ですが、Critiqueに学内外問わず様々(アーティストや企業のデザイナなど)な方々が来てくれて色んな意見を聞くことが出来るので、アイディアが様々な方向に広がります。
他の学生さんの作品を見ていても多種多様で、Generation AIを使った新規レストランの提案と広告デザインの作成や、ニューヨーカーの心情を窓に映し出すプロジェクト、トルコの女性の権利を上げるためのプロジェクト、ノスタルジックな映像を広告に活用、ニューヨークの新しい神を生み出すプロジェクトなどなど見ているだけで面白いです。
Cloud Salon
授業概要
このクラスはCreditはありませんが、Creative Practice SeminarでCloud Salonの内容をReflectionするという課題が出るので、DTの学生は取得必須です。2週に1度、ディズニーなど企業でクリエイティブな事をされているデザイナーや各方面で活躍してるアーティストがZoomで講演をしてくれます。人によってやっている事が様々ですが、DTの学生の興味も様々なので誰かしらにヒットする内容になっていると思います。日本の方では今年はexnemoさんが講演してくれました。以前は真鍋大度さんも講演してくれたそうです。
Youtubeでも配信されているので、ご興味あればどうぞ。
感想
各界で活躍されているクリエイティブな方々の講演がタダで聞けて質問出来るのは大学ならではなので聞いて損はないです。ただ講演している方のやっている内容に興味無いときもあるので、その時はReflectionで何を書くか考えるのが必死でした。
終わりに
Parsons DTではこの様な授業で、めちゃくちゃ幅広いデザインを学べます。DTはどんなProgramなの?という質問にはTechnologyを使ったデザインやアートを作るProgramとしか答えようがありません。
私は取得していませんが、プログラミングの授業(まずはp5.js)も必須で、ビジュアルデザイン出身の学生などプログラミング初心者の学生はかなりヒーヒー言っていましたが、みんな最終的には出来るようになります。またPhysical ComputingやUnityなどなど様々なクリエーション(プログラミング)を教える授業も沢山あるので、学生は興味に応じて取得します。デザイナーもプログラミングが出来て当たり前。という時代はもう来ていますね。
もし質問等ございましたらいつでもご連絡下さい。