働き方に関する本を書いています(2021年3月出版予定)。その内容を、ブログで順次紹介して行きます。

●仕事のやりがい、喜び

 無駄な仕事をやめることについて述べました。これは自分がやっている仕事に対する関心を高めることにもつながります。そもそも、私達は何故働くのでしょうか? 仕事を通じて、どのような喜びを得たいと思っているのでしょうか?

 東京大学名誉教授の地球物理学者で、科学雑誌『Newton』(ニュートンプレス)の編集長も務めた故竹内均先生は、仕事を選ぶときの条件として、①好きなこと、②それで食べて行けること、③世の中の役に立つこと、という3つを挙げておられます。竹内先生は、大学、出版社いずれでも、腹一杯好きな仕事をして来たとおっしゃっていましたが、ご自分の価値観に従って、幸せに働いて来られた方のお一人だと思います。

 皆さんも、ご自分が仕事に求める条件を書き出してみてください。そして、それが今の仕事で満たされているのかどうか考えてほしいのです。もし満たされていないとしたら何故なのか、どうしたら満たされるようになるのか、大いに考えて、行動して欲しいのです。

 私自身のことを考えてみると、学生の頃は、地球上で起こっている様々な自然現象に関心を持って地球物理学を勉強し、大学院では、海洋物理学といって、海の中で起こっている自然現象(黒潮、高潮、津波、波浪)を研究する部門に進学しました。大学院の頃は、海の中に、発電所の温排水を放出した場合に、温排水がどのように拡散するかを調べる実験をやっていました。これは、漁業環境と深く関わった話題であり、その意味で人間活動と密接に関連したものです。しかし、当時は、あくまで自然現象に関心があって、研究と人との関わりは殆ど考えたことがありませんでした。

 就職したのは財団法人日本気象協会です。気象協会といえばテレビでの天気予表が有名ですが、天気予報以外にも色々な調査業務も行なっています。1年目に担当した仕事の一つに、富山県の冬季の路面凍結予測システムを開発するというものがありました。各地の最低気温と道路の巡回監視記録と突き合わせることによって、最低気温から、道路の凍結確率を推定するシステムです。富山県を含む北陸地方では、冬の降雪、道路の凍結というのは、日々の生活に密接に関連したものでした。このような仕事を通じて、自然現象そのものも面白いけれど、自然現象と人間の生活が深く関連した仕事をする意義というものを段々理解していったのだと思います。当時の上司が、「我々のやっているのは単なる気象学ではなく、気象を通じて世の中の役に立つことだ」とおっしゃっていたことを今でも覚えています。 

皆さん一人ひとり、仕事に求めるもの、仕事をすることの喜びは違うと思いますが、それが何なのか、改めてじっくり考えてください。これが、働き方改革の第一歩です。働き方改革は、国や会社にやってもらうものではなく、最後は自分の責任で行うものと私は思っています。

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