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ニュージーランドの幽霊屋敷

30代の六年間、日本の夏、ニュージーランドの冬を撮影で毎年訪れていた。撮影は二か月近くになり、スタッフ・キャストで20名を超える数、毎食レストランとなると出費も嵩むので、コテージ泊を選択した。

その年、ニュージーランドのワナカという田舎町に住むことを決め、コテージも二棟借りたのだが、このコテージがいわくつきだった。

勿論、最初から知っていたわけではない、私はそのコテージに泊まっていないので、キャストから出る「幽霊話」もあくまでも他人事だ。それでも「幽霊話」が翌日の朝食で、話題になったとき、気にはなった。初めは、影がすーっと通ったのとか、シャワーを浴びていたら、部屋の中で物音がするのっとか、「幽霊話」の具体像を誰も話さなかったけど、誰かの気配!スタッフでもキャストでもない、誰かの気配!を感じるようで、それが少しづつ具体的になっていった。キャストの中で一番神経質な若い女性が、暮らし始めて2週間目の朝に話した「幽霊話」は具体的だった。

そのコテージは二階建てで、一階は台所とリビングがあり、約40帖位のリビングは食後の憩いの場になっていた。二階はキャスト用の部屋が並んでいて、部屋に行くためには、玄関わきの階段を上ることになる。若い女性が話したのは、その階段に立っていた金髪の少女だった。階段は途中で折り返して上る少し広めの階段だ。その中間地点にたち、上を見上げた時、若い女性の視線の先に少女の姿が、驚きながらも階段を上ると、少女は自分たちの部屋に向かって走り出した。追いかけるように自分の部屋に入ると、先輩のキャストがベッドに入って読書中だった。

「ねえ、誰か来ませんでした?」 

そう、若い女性が訪ねたけど、同室の先輩キャストは心霊現象とは一番遠い存在、笑いながら「この部屋に男が来たら、ぶっとばすわよ!」「そう」と返すしかなかった。

それが金髪の少女との最初の出会いだった。


この話は続きます。

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