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中国の「アウトレットモール」でぼくが行っている仕事について

ぼくは今 中国の「寧波」という街で、「杉杉アウトレット」のコンサルをしています。

「寧波でアウトレットの仕事をしている」のは知ってるけど、「具体的にはどんなことをやってるの?」と聞かれることが増えてきましたので、今日はぼくが行っている仕事の内容を紹介したいと思います。

ぼくは以前は日本で商業施設の運営会社で勤務していたので、ショッピングモールやアウトレットモールといった「商業施設のオペレーション」に強みがあります。

中国では「オペレーション業務」に加え、「経営企画」、「新規プロジェクトの推進」、「既存施設の業務改善」、「人事制度の構築」、「DX戦略・オンライン戦略」と幅広い業務を対応しています。

日本の大きな規模のデベロッパーで働いていると、ここまで幅広に業務を任せてもらえないと思うので、今は本当に良い経験をさせてもらっているなと感じています。

●まず、「杉杉商業集団」について

まず、ぼくが今コンサルで入り込んでいる「杉杉商業集団」について、簡単に説明します。

※「杉杉商業集団」が開発・運営しているのが「杉杉アウトレット」です。

中国には「七大アウトレット」と呼ばれる大手アウトレットモールデベロッパーが存在します。
現在はこの7社を主軸に、中国内のアウトレットモールのシェア争奪を行っています

※日本の場合は、三井不動産社が手掛ける「三井アウトレットパーク」と三菱地所サイモン社が手掛ける「プレミアムアウトレット」の2強が突出していますが、中国は面積が大きいこともあり、日本よりも多くのプレイヤーで競争をしています。

「杉杉商業集団」は中国の「七大アウトレット」の内の1社で、現在は3-4番手に位置している企業です。
アウトレットモールのみの開発・運営を行っているデベロッパーで、中国内では高い知名度を誇っています。

「杉杉商業集団」は「2011年に寧波に1号店」を開業し、現在では中国全土で「9施設」のアウトレットモールを開業させ運営しています。
間も無く、来週8月12日に「瀋陽店」が開業するので、それで「10施設」になります。
2021年内は12月に「貴陽店」と「深圳店」の開業を予定しています。
※具体的な出店場所は下記ご参考にしてください。

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今後、「2023年に20施設」まで拡大することを目標にしています。
(2022年4施設、2023年4施設の開業目標です。)

年間に「4施設の新規開業」はなかなかのハイペースで、日本の企業でもかつてこんなハイペースで開発を行っている時期はなかったと思います。

社員数の推移はと言うと、
「2010年に20名」で本格スタートした会社ですが、現在では800名の規模にまでなり、来年には1,000名を超える予定です。

ぼくは、2010年当時の20名の中の1名でした。
杉杉アウトレットの1号店は、「杉杉商業集団」と「三井不動産」との合弁でスタートした経緯があり、当時、ぼくは三井不動産上海に出向していて、この1号店の開業準備の担当をしていました。
その後縁あって今に至るまで、杉杉アウトレットに関与させてもらっています。

●アウトレットモールの開発手法について、中国と日本の比較

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中国のアウトレットモールの開業は、日本のように100点での開業を目指していないので、とにかく開業させてから、その後に改善していこう、という傾向にあります。

ぼくの個人的感覚ですが、開業時は60-80点を目指しているデベロッパーが多いように感じます。
開業の時にテナントが100%営業していないことも、中国では当たり前で、お客様もそれに慣れているため、開業時に100点でなくとも良い、という傾向になっていますね。

ちなみに、杉杉アウトレットは新規開業時は現在は95%の開業率を目指していて、ほぼ達成しています。

開発スピードは圧倒的に中国のほうが速いが、施設作りの細やかさでは圧倒的に日本のほうが優れています。

個人的には、「中国スピード+日本の細やかさ」だと、かなり良いアウトレットモールが作れると思っています。

杉杉商業集団のボスもその点をよく理解しているので、日本人のぼくをコンサルとして導入しているわけですね。

●業務内容について

さて、前置きが長くなりましたが、ぼくの行っている業務について。
大きく分けると以下5つの業務を行っています。

1.経営企画業務
2.新規プロジェクトについて
3.既存プロジェクトのオペレーション業務改善
4.組織・人事制度について
5.DX戦略・オンライン戦略

では、それぞれについて、簡単に説明します。

◯経営企画業務
・中期経営計画の策定、実行
・経営幹部9名への直接指導、研修業務
・会長兼CEO(ボス)へのレポーティング業務

「2023年20施設」という目標以外に中長期について、明確な目標がなかったので、いやいや、競合と比較してのポジショニングとか、自社の強みをもっと活かした施設開発をするとか、その前に自社アウトレットモールのコンセプトを明確にしましょうよ、それに見合う人材育成計画とか必要ですよ、って入り込んですぐのタイミングにボスに提言したら、じゃあお前やれよ、ということでこの業務をぼくが行うことに。。

◯新規プロジェクトについて
・新規開発プロジェクト全体について、戦略立案のアドバイス
・開発用地の選定
・施設コンセプト策定
・設計、デザイン、工事スケジュールの内容精査

新規プロジェクトについては、ぼくが中国政府と交渉したりといった、直接手を動かしているわけではありませんが、
この業務に関しても、成り行きで決めていることがほとんどだったので、もう少し目標と目的を明確にして、中期視点を持とうよ、というアドバイスと指示をしています。

例えば、安く土地が買えるから出店する、みたいなノリで新規出店地を決定していたのを、競合が出店していないエリアで、かつ大都市に旗艦店を出店しよう、そのための候補地を探してきて、とかの指示をしています。

アウトレットモールは郊外に立地しているため、市中心部からわざわざお客様に来館していただくには、施設作りにも特徴と工夫が必要だから、設計段階からそういうことを考えよう、と指示もしています。

◯既存プロジェクトのオペレーション業務改善
・課題の抽出、明確化
・日常オペレーション業務の改善計画の立案、実行
・マニュアル改善
・Webマーケティング、プロモーションの年間計画立案

ここはぼくの元々の強みのあった部分です。
日本式の細やかなオペレーション構築を目指して、毎日行う業務、週毎・月毎に行う業務、等を明確にし、今まで以上に運営業務に力を入れています。こういう細やかな運営業務のことを中国では「精細化運営」と呼んでいて、杉杉商業集団では今これが合言葉のようになっています。

◯組織・人事制度について
・人員拡大に伴い、会社風土・文化を再構築
・評価制度の変更

ここはぼくが今一番力を入れている部分です!
中国では、例えば、ある店の店長が、他社から当社に転職してジョインしてもらった場合、その店長の元部下たちも連れて一緒に転職してくるのが一般です。
で、その元部下たちが運営部長や企画部長といったポジションにつくのですが、私の感覚では、その元部下たちの35%ぐらいは良い働きをしてくれるのですが、65%ぐらいはポジションと能力が見合っていない傾向にあります

65%の方々には申し訳ないが、すぐにでも能力の見合う役職・給与に収まってほしいとぼくは思うのですが、現状の人事制度ではそれができないので、元々から当社に在籍している優秀な人材は適切な評価をされずに、低い役職・給与になってしまっているスタッフが存在します。
で、そういう優秀な人材ほど、他社に転職していってしまいます。

なので、ぼくは、能力の高い人材が適切に評価され、適切な役職・給与につけるような公平な制度を導入したく、今この部分に力を入れています。

あとは、以下についてはぼくの直接担当ではないのですが、
日本よりも中国のほうが圧倒的に進んでいる領域なので、勉強したい気持ちがあり、あれこれと口を挟んでいます。笑

◯デジタル戦略(DX関連業務)
・来店客情報、駐車場情報、顧客の施設内行動情報、レジでの決済情報、テナント店舗の売上情報等、複数のシステムで管理している情報を、統合し一元化し、各施設のメンバーがわかりやすいデータに整えることで、オペレーション部門の業務効率化、webマーケティングの精度向上の推進

◯オンライン戦略
・元来オフラインのみに取り組んできたアウトレットモールにてECサイトを構築し、オフラインとオンラインをどのように融合させるかを検証
・「直播」と呼ばれる、SNSとインフルエンサーを活用した中国発の新しいマーケティング手法の導入検証

●まとめ

以上がぼくが中国のアウトレットで取り組んでいる業務です。

日本では経験できないほどの幅広い業務を対応させてもらっていることに本当に感謝しています。
また、今まで経験したことのない業務にもチャレンジしているので、とにかく毎日が勉強の連続です。

この1年、中国でだいぶ鍛えてもらったので、業務能力は格段に向上した気がしています。

ぼくの尊敬する元上司が、「プロジェクトが人を育てる」とずっと言っていたのですが、自分自身が今多くのプロジェクトを経験させてもらっていて、本当にその通りだなとあらためて実感しています。

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