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読後感想「あわのまにまに」

「あわのまにまに」を読んでみました。作者は吉川トリコ。

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「まあ、そんなに怖がりなさんな。
意外にどうってこと、なかったりするから。
長く生きてるといろんなことが起こるんだけど、そういうのぜんぶ、なかったふりして知らん顔で生きていけちゃうものなのよ、大人ってのは」(P48)
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“逆クロニクル・サスペンス“と紹介されていた通り、まさにサスペンス!

2029年から1979年まで、10年刻みで遡りながら、語り手を変えてある家族の秘密を明かしていくストーリー。
ハラハラ、ドキドキの連続なのだけれど、まずこちら側(読み手)は疑問符だらけに陥り、疑問符はなかなかスッキリと取れない。
なぜなら、描かれていない部分はこちら側の推測でしかないから。
(そこが面白い)
結局、疑問詞と感嘆詞を並べながら疾風の如くページを捲ることになる。
スッキリしないものを抱えながら読み続けていくと、だんだん雲行きが怪しくなる。平穏と不穏が背中合わせ。あちこちに爆弾が仕掛けられている感じで、読んでいると思わぬところで爆発が起こる。それは想定内だったり想定外だったり。
ハラハラ、ドキドキが止まらない。
そして、最後に膝を叩く。

面白い!
面白すぎて再読決定!

📖key point〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
23歳年上のお兄ちゃんを持つ小学3年生の木綿ちゃん。
お兄ちゃんのシオンは18歳のときに韓国からやってきて、木綿ちゃんのパパの養子になった。
そのシオンは木綿ちゃんのママとパパの新婚旅行に同行している。

木綿ちゃんのママのいのりちゃんは結婚前に杏一郎くんと言う幼馴染の恋人がいて、クリスマスにダイヤの指輪を贈られている。
でもいのりちゃんは木綿ちゃんのパパと結婚していて、杏一郎くんはいのりちゃんの妹、操ちゃんの夫になっている。

杏一郎くんのママ美幸ちゃんといのりちゃんのママ紺ちゃんは親友同士。
美幸ちゃんが結婚すれば紺ちゃんも結婚し、美幸ちゃんが子供を産めば紺ちゃんも子供を産むほど仲がいい。でも、いのりちゃんのパパは同性愛者。

いのりちゃんのパパはママと別居中に海辺の町で亡くなる。
訃報を知らせてくれたのはパパの教え子の寅郎。寅郎のスケッチブックにはパパがたくさん描かれている。

美幸ちゃんと紺ちゃんが共同経営しているお店で、それぞれの子供(杏一郎くんといのりちゃん)が二人で遊んでいる姿を見たお客さんが言う。
「兄弟みたいですね」
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最後から読み進めれば奇妙な行動も思考も納得するだろうけれど、あえてしない。なぜなら、こちら側(読み手)の想像力を試されてるように感じるから。
読み返すたびに不確かなもの不自然なものが違って見える。
作者のどこまで描いてどこからはこちら側に委ねるかのバランスが絶妙。
あっぱれ!

「長く生きてるといろんなことが起こるんだけど、そういうのぜんぶ、なかったふりして知らん顔で生きていけちゃうものなのよ、大人ってのは」(P48)

みんな片想いだな。
    
さて、次は何を読もうかな。

それではまた。

Have a good day.
See you again. 🍀
                     キジ


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