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NO.6 ダークツーリズムへの思い
ダークツーリズムとは、「戦跡や災害被災地など、死・暴力・虐待などの悲劇にまつわる場所を訪問する観光のこと」(JTB総合研究所WEBより)を指し、広島や長崎、チェルノブイリ、アウシュビッツなど、沢山の人が殺戮されたり、亡くなった地の観光を指すものとして知られている。
悲劇が起きた地を訪ね、死者を悼み、悲しみを追体験するものとして意味を持ち、多くの人々がそのような旅を経験してきた。
特に20世紀は二つの大きな大戦の他、ひっきりなしの地域紛争があり、「戦争の世紀」と呼ばれた。今世紀になっても、ロシアのウクライナ侵攻、イエメン内戦、エチオビアやケニアなどの干ばつ、日本でも元総理大臣の暗殺、路上や自宅への強盗殺人事件など暗いニュースが絶えることは全くない。
有史以来、人類史には数えきれないほどの戦乱や犯罪があり、この地球という惑星は、人々が命を奪われる「殺戮の星」と言われてもおかしくないのだろう。
私たちが今暮らしている大地には無数の屍が埋められている。
一体、歴史上どの位の人がそれらにより命を落としてきたのだろうか?
その数は多分何十億、いや何百億人のレベルかなどと考えていたところ、アメリカの科学者、ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授が書いた「暴力の人類史」(青土社:2015年)という本を手にするチャンスがあった。
それによると、以下の表のように1000万人以上の人が亡くなった戦乱(飢餓も含む)が有史上13回も起きていることに大変驚かせる。
又、その概要すら知らない史実がいくつもあり恥ずかしさを覚える。
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20世紀は1億3000万人が4つの大きな戦乱で命を落としており、血なまぐさい時代であったことは間違いない。が、人口も大きかったのでそれを換算すると、それ以前の世紀の方がより暗黒の時代であったとピンカー教授は分析し、「ほとんどの人は信じないに決まっているが、長い年月のあいだに人間の暴力は減少している」と述べている。
依然1億人もの人が他人に命を奪われるこの惑星の現実を見て、暗澹たる気持ちにならざるを得ないが、事実をちゃんと知り、愚かなことが少しでも減っていくことをただ願うばかりだ。
旅行は、時空を超えて不幸な記憶を呼び起こし、その時代を懸命に生きようとした人々の叫びや願いを聞き取る体験も私たちに提供してくれる。
おおげさだが、人類の未来を信じるためにも不幸な舞台を訪れる機会を持ち続けたいものだ。