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NO.25 「あるくみる・かんがえる」ユーラシア大陸は戦いの地?
12月はイスラエルとエジプトに行く予定だった。
隣同士の2つの国は、旧約聖書の時代やピラミッドができた紀元前何千年の頃どころか、我々の祖先のホモサピエンスが出アフリカをした10万年前から語りつくせぬ関係があったことだろう。
その悠久の歴史をこの目で見たく両方を訪れるツアーを探したがこれが不思議とどこにもなく、しょうがないので個人旅行を手配した。
その国際航空券を発券する3日前の10月7日、ハマスがイスラエルを攻撃し、数日後エルサレムなどの都市が外務省危険度2になり旅行をあきらめることになった。
エジプトだけパッケージツアーで行くことを考えたが、隣で戦争をしている地にお気楽に旅行する気にもなれなかったのでこれも取りやめた。ガザとカイロは約360キロしか離れていない。車で数時間も走ればロケッド弾が飛び交っているようなところに行く気はしなかった。
同じ頃情報収集もあり旅行会社H社のエジプト旅行説明会に参加してみた。
なんと100名近いシニア層が熱心にエジプト旅行の説明を受けるため集まっていたが、隣の戦争のことはほとんど気にしていない様子なのでびっくりした。
同社の担当者はキャンセルが出ていることも認めながら、現地に行った添乗員の報告によると現地は平穏で旅行に影響は全くないと説明し、来年になると価格がさらに上がることを付け加えていた。
朝昼晩のニュースでは、ウクライナやイスラエルの戦争のことばかりで誰もがうんざりとした暗い気持ちになる。20世紀は「戦争の世紀」とも呼ばれたが、21世紀も人類は相変わらず同じ道を歩んでいる。
ユーラシア大陸の西側にあたるヨーロッパは歴史上戦争ばかり繰り返してきたし、中東を含む西アジア、中央アジアは遊牧民たちの征服を何度も受けとても安心しては暮らせない地と言える。
ふと、そのユーラシア大陸の文字通り東南側に位置するASEANアセアンの存在に気付いた。
10か国で構成される東南アジア諸国連合は一部の紛争地を除き今は比較的平穏な地となっている。日本と較べ高い経済成長率、人口増加、平均年齢の若さなどこれから発展する要素が強い。10か国のうち6か国が殺人を否定する仏教国であることも戦争が少ない理由の一つだと思う。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の国々は戦争を完全否定はできない。
そのような中、イスラエルとエジプトの旅をキャンセルした替わりに、「そうだASEANに行こう」と思い付き、40年ぶりにフィリピン(セブとマニラ)に行くことにした。
フィリピンは人口が1億人を超え、ASEANの中でも特に高い経済成長を続ける元気な国だ。
日本から直行便のあるセブが果たして自分がリピートしたくなるような素晴らしいリゾート地かどうか、首都マニラの発展ぶりを体感することなどを目的に出かけることにした。これは以前から考えていたプランでもあった。
しかし、フィリピン関連のガイドブックや解説書を読み、この国も大きな戦争に巻き込まれたことを改めて再認識することになった。
太平洋戦争で日本はパールハーバーを攻撃した同じ日、フィリピンの米軍基地を攻撃しこの国は戦場となっていった。日本軍は兵力63万人を投入したが、50万人が戦死で敗北。フィリピン人はこの戦争により111万人が亡くなった。この中には首都マニラの日米の市街戦に巻き込まれた市民10万人の犠牲者が含まれる。その多くが日本軍により虐殺されたと言われている。
フィリピンもかつて今のガザ以上に惨い殺戮が行われた地であったのだ。しかも我々の先祖によって。
ガザの戦乱を避けて行くことになった旅なのに、マニラでも戦争のモニュメントも訪れて頭を下げる旅になりそうだ。
「人類と戦争」は恒久的に取り組むべきテーマで、どの時代、どの地域でも避けることができないものなのか。
日本はユーラシア大陸から海を隔て離れている島国ということもあり平和と独立を保っているが、次のような事態が起きることも考えておいた方がいいと思う。
■北朝鮮の弾道ミサイルがロケットの不具合により日本の本土に誤って落下
■運悪くある小学校校庭に落下し、遊んでいた小学生3人が即死し日本国内が騒然となる
■北朝鮮政府は即刻謝罪し補償も申し出る
■世論にも押された日本政府は北朝鮮にロケットの全廃を要求。応じない場合は敵基地攻撃を示唆
■北朝鮮はこの要求に応じず
■米空軍の支援も受けた日本の自衛隊機が北朝鮮に向けて発進。
果たしてその後どうなるのか・・・
「報復する権利」は国にも個人にもあるかもしれない。
だが、有史以来戦争は報復にて始まり拡大していくものだ。
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