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NO.13 「あるくみるさがす」リバイバル八丈島(2023年3月下旬)

 私は、伊豆七島(有人島は9島)すべてを自分の足で回りたいと思っている。それは東京に属しこんなに近い所にある自然溢れる離島に大きな可能性を感じるからである。
 まだこれまで大島と新島の2島しか行っておらず、今回は八丈島を2泊3日で初めて訪れた。

 今回は特に、どうしたらこの島が以前にような数の観光客を取り戻せるかという視点で感想をまとめた。
 というのも、八丈島は50年前「日本のハワイ」と呼ばれ新婚旅行等の行先とした人気の観光地で、1973年には年間21万人の観光客で賑わっていたが、その後下火になり、2019年には12万人と半分近い数に減っている。言葉は悪いが、「忘れられた観光地」になってしまったようだ。
 訪れる価値がなければ仕方がないことであるが、果して実際はどうか?

 答えから言おう。

 八丈島は想像を遥かに超える魅力を持った島だった。

 それは、緑溢れる2つの山を持ち、エメラルドグリーンの美しい海や海岸線の眺望を楽しむことができる。1時間もあれば車で島1周可能なほどよい大きさで、7つの温泉が癒しを提供する楽園のようなところだった。民宿が多くホテルは3軒しかないが伊豆七島の中では整っている方で、飲食店もさまざまなカテゴリーが50店以上あり、道路や標識なども含め観光インフラは一応整っていると感じた。

 観光地にとって重要なのは、「行ってみたい」と多くの人に興味を持ってもらうことと「又行きたい」とリーピー化してもらうことである。
 この点について、今回私が率直に感じたことを以下にまとめてみたい。

3月下旬に咲き誇るフリージア
八丈富士ふれあい牧場

ストーリーのある島
 観光資料、ビジターセンターや資料館の展示などで、島の歴史や紹介が淡々と紹介されているが、これとは別に、八丈島の興味を持って語り継がれるべき「ストーリー」があるべき。それは特定の人がかかわっている伝説的な内容であるべきで、来島の興味にもつながる。
 ひとつのわかりやすい例として島の北部の「長友ロード」がある。これはサッカー日本代表の長友佑都選手が八丈島での自主トレ時に走った坂道のことでサインも刻まれた記念碑が立っている。近くに来たらぜひ寄ってみたいと思う人も多く、口コミでも広がりやすい八丈島のひとつの「ストーリー」でもあると感じる。
 このような話題のタネとなる親しみやすさが必要と言える。

「長友ロード」 モニュメント

スピリチャルな体験ができる島づくり
 都会を離れた島にある美しい山と海はそこにいるだけで気持ちがよく、心身ともにリフレッシュし、健康にもつながるものだ。この利点を最大限引き出す演出や体験が求められていると思う。具体的には森林浴、瞑想、座禅、ヨガ、心や気持ちの健康にもつながるプログラムをプロデュースしそれを看板体験に育てる。心が澄まされ生き返るような体験、広い意味でスピリチャルな体験が多くの来島客を魅了することをイメージしている。

 関連する卑近な例として「海辺のベンチ」がある。これは八丈島のリードパークホテル近くの海岸にあるものだが残念ながら一脚しか置かれてない。 「海をずっと眺めてみたい」という欲望は多くの人が抱いている。それは立って見るものではなく、地べたに座り込んでみるものでもない。椅子があればベストなはずだ。
 しかし日本中の海岸で、海に向かって座れる椅子やベンチはどれほどあるだろうか?
 私は、もしこれが10や20あれば、多くの人がやってくるに違いないと確信するのだが・・・・

 こういうものも、海に向かって心を洗うという意味で、スピリチャルな体験のひとつと考えている。

標識
海辺のベンチ

健康アイランド化
 海岸沿いのウオーキングやランニング、登山、ハイキングロードなどの整備は体験人口も多く健康づくりにつながるのでぜひ整備してもらいたいと思う。車だけでなく、自分の足で楽しむこのような体験は来島客の滞在時間を延ばす効果もある。
 私が特に強調したいのは、海外沿いのウオーキングコースは日本全体でもそれほど多く存在しないように体験的に思う。逆に言えばこれが整備されると島の強みになるかもしれない。
 
いい料理人やシェフが大事
 「食べる」という要素は旅行で最重要なもののひとつだ。おいしい料理を出せる料理人の腕前は観光地にとって必要不可欠で、その人材の継続的な確保や育成が大事であることは論を待たない。
 有名シェフが誕生すれば、その人の料理を目当てに来島する人も出てくるかもしれない。競争戦略上有利になる。

夏は暑くないというイメージづくり
 「伊豆七島は南にあるので夏は暑い」というイメージが強いが、東京や大阪の都会と違い一番暑い8月でも最高気温の平均は20℃台後半で、30℃を超えることはない。そしてこのことは案外一般には知られていない。
 つまり避暑とまでは言えないが、酷暑を避けることはでき、もっとこのことをアピールしてもいいのではないだろうか。
 但し、夏は台風の到来という島の弱点があることも触れないわけにはいかない。又、船は通年平均で15%は欠航するということも心にとめておく必要がある。

待ち望まれる高級ホテル
 何といっても宿泊施設は旅行で最重要だ。伊豆七島はホテル自体が少なく、5つ星どころか4つ星ホテルも無く民宿が中心の旅行先である。
 需要がないので供給がないと言えるが、供給を先につくり、マーケットがそれについていけるよう努力するしか道はないように思う。
 ただただ、そのような先行的な投資がされることを心より祈るばかりである。

ベンチャーで新しい産業をクリエート
 NPO八丈島移住定住促進協議会が発行した「八丈島ぐらし通信17」に「八高生と人口減少を考える」という島民会議の内容が紹介されており、企業誘致により人口減少を解決するいろいろなアイデアが出されていた。
 読んでいて感じたのは、八丈島の強みである、切り葉、酪農、フルーツレモンなどを活かしたベンチャー企業を地元の若年層に思い切って任せ、行政がそれを財務面などでも支援するようなことができないかと思った。
 大事なのは失敗も受け止められるような体制づくりであろう。
 挑戦ができる環境があれば、若年層にとっても魅力的な島になるのではないか?

ジャージー牛の酪農

ロングステイ戦略
 移住とは別に、1~2週間程度の「ロングステイ」の促進も非常に重要で、旅行会社の戦略商品としても密かに注目されている。クラブツーリズムや阪急交通社は、「暮らすような旅」や「長期滞在の旅」と銘打って拡販を進めている。
 現地サポート、食事や食材、滞在プログラムやスクール、公共施設(図書館など)、短期とはちがった環境整備や支援策を地元としても展開が必要で、将来のマーケットとしては決して小さくはないので投資の価値ありと思う。

 まとめとして、八丈島は今は来島者数が以前のように多くはない状態でも、沢山の消費者、投資家、行政などを抱えた東京という大マーケットに隣接したリゾートとして、今後の再発展のチャンスは極めて大きいことを改めて強調しておきたい。


廃ホテル1


廃ホテル2

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