物陰から、人の輪へ
僕の中には、人に対する警戒心とつながりたい欲求が混在している。
人間関係において、もう二度とあんなつらい思いはしたくない。そんな気持ちが強くなると、僕は自然と人から距離を置くことがある。
物陰から人の輪を眺める、そんな日々を重ねてきた。
寂しさを隠して平気なふりをする —— まあ、その演技も様になってきたというところか。
優しい人が怖かった。
これは変だと自分でもわかっている。普通は意地悪な人や冷たい人を警戒するものなのに。
でも、これには理由がある。
僕は幼い頃から優しい人についていって、散々痛い目に遭ってきた。そうやって育った心は、優しさそのものに疑いの目を向けるようになっていった。我ながら面倒なものだ。
警戒心は、確かに僕を守ってくれた。けれど、大切な人との間に、いつの間にか深い溝も作っていった。
守りすぎて、失いすぎていたのだと、今ならわかる。
最近、出会いと別れが以前より頻繁になった。
そんな中、人の輪の中にいても、案外大丈夫なんだと感じている自分がいる。安心できる、安全なんだという現実を、まさに体験している最中だ。
来るもの拒まず、去る者追わず。
今日になって、ふと、そんな言葉を思い出した。
以前の僕なら「なんて冷たい考え方だ!」と憤っていた。
でも今は、そうは思わない。
それは冷たさではなく、大きな流れへの信頼なのだと考えるようになったからだ。
今日も、物陰から一歩、前に出てみる。
転んでも、まあ、それもいいだろう。
立ち上がり方だって、きっと上手くなっている。
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