イチロー選手がいた場所
野球小僧であった私にとって、2001年にシアトルマリナーズの選手としてメジャーリーグに挑戦し、新人でありながら首位打者、盗塁王、年間MVPなどを獲得したイチロー選手の活躍は衝撃的でした。
屈強なメジャーリーガーたちの中で、スリムであるがバネがあり、足が速く肩の強いイチロー選手がヒットを量産し、鮮やかなレーザービームを披露するのをテレビ越しにワクワクしながら観ていました。
2年目の2002年もシーズン初めからイチロー選手は活躍しました。そして私はある日、これは現地で観るしかないなという衝動にかられ、速攻で夏休みのシアトル行きの航空券と現地のホテルを予約しました。
2002年8月、それまで仕事や個人でアメリカには渡航経験はありましたが、初めてのシアトルへの旅でした。3泊5日の旅程で、マリナーズの試合は2試合観戦しました。事前にインターネットからチケットも予約しました。
シアトルは神戸と似てコンパクトな港町です。スタバの1号店や魚投げで有名なパイクプレイスマーケットがあります。
いよいよ観戦です。初めてのメジャーリーグ生観戦に胸がドキドキしました。スタジアムはセーフコフィールド(現T-モバイルパーク)です。宿泊したホテルのあるダウンタウンからバスであっという間の移動でした。
スタジアムに集まる人たちは老若男女問わずみんな嬉しそうでした。さすがベースボールの国だと感じました。大人までマイグラブを持参なのは、スタジアムで飛んできたボールを取るためでした。これにはびっくりしました。
観戦1日目。この日の席はマリナーズ側ダグアウトのすぐ後ろでした。メジャーリーグのスタジアムは、通常バックネット以外にはネットがありません。臨場感は抜群ですが、ファールボールには十分注意しなければなりません。
イチロー選手の1打席目。テレビで観ていたあのルーティンを目の前でやっているのがとても不思議な感覚でした。しかしその瞬間、シアトルに来たんだ、イチロー選手を観に来たんだという実感が一気に沸いてきました。
ヒットを打つと、1塁ベース上の様子も間近で観られました。
観戦2日目。この日はライトフィールド近くの席でした。この日は守備のイチロー選手を終始観ることができました。捕球、スローイングも美しかったのですが、実はもうひとつお目当てのものがありました。
テレビ中継では映りにくいのですが、イチロー選手には守備機会以外の時に行なっているルーティンがあります。それを観たかったのです。常に前屈や屈伸などストレッチしながら自分の守備位置を確認し、いつボールが飛んできても機敏に動き出せるように準備していました。これはとても良い勉強になりました。
このシーズンは大魔神こと佐々木投手、セットアッパーの長谷川投手も在籍していました。長谷川投手は観られましたが、佐々木投手は残念ながら故障中で観ることはできませんでした。
'SHIGGY'は長谷川投手のニックネームです。
初めてのメジャーリーグ生観戦。2試合ともナイターでしたので、照明に映えるグラウンドの天然芝の緑がとても綺麗だったのが印象的でした。またイニングの間や投手交代の際に観客を盛り上げる仕掛け(音楽やゲーム)は、さすがショービジネスが盛んな国らしいなと感じました。
マリナーズの本拠地であったので、私が日本人とわかると、「イチロー、イチロー」と何人もの現地ファンから声を掛けられました。それが日本人としてとても誇らしく感じました。
そんなセーフコフィールドの雰囲気が忘れられませんし、私の大好きなスタジアムです。さらに言えば、「イチロー選手がいたセーフコフィールド」が好きなのです。
(終わり)