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逆噴射小説大賞2021 セルフライナーノーツ
逆噴射小説大賞2021に2発の銃弾を放ったので、その振り返りをしたいと思います。参加3回目にして、残弾を残しておわるのは初めてなのですが、悔いはありません。なぜならば、会心の一撃を連射することができたからです!
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ジビエのレシピは信じない
人間じゃないから人権がない。だから迫害されている。そういった設定にゾクゾクするような魅力を感じるんですよね。『東京喰種』や『亜人』の序盤ってそういう
ジビエのレシピは信じない
まさかこんなカジュアルに撃ってくるとは思わなかった。さては素人だな。
「ばか! 発砲するなって言ったろ!」
怒られてやんの。そりゃそうだ。
あたしは屋上に乱立する室外機を踏み台にして跳躍する。視野がひらけるこの瞬間は好きだ。となりのビルに着地し、身体を一回転させて衝撃を逃す。
人間よりも優れた聴覚が、狩人たちの困惑を捉えてくれる。また火薬の爆ぜる音がした。
「撃つなって! 傷ついたら味が落
俳優アントニオ・マルティネスについての記憶
専任スタントという職業がある。そう、俳優には違いない。しかし、独自性を表現することはない。なにしろ俺の仕事は、あのアントニオ・マルティネスに成りきることだからだ。
「どうなった?」
バスローブに靴下という妙な出立ちでヘスは言った。
「全部済んだ。もう好きに過ごせ」
俺がナイフの血を拭いながら言うと、口髭の端から泡を飛ばすようにして俺を称賛した。
ヘスのような貧弱野郎が命を狙われるには相応
バトル・オブ・スノウフィールド
まず、リコがやられた。
ぼくの後ろをついてくるはずだったソウマも、敵の弾を頭にくらって倒れた。ぼくはなんとか障害物のかげに滑りこむ。木製のベンチだ。
「あそこに隠れたぞ!」
敵の姿は見えないが、甲高い声だけは聞こえる。ベンチに弾が命中しているのがわかるのは、それが砕けたあとのかけらが降ってくるからだ。
少し離れたところでリクトとアンナが砦に身をひそめている。砦といってもぼくたちが名付
神と権力者のいない街
武装弁護士がひとり、下敷きになった。
彼の重装宇宙服が潰れたのが、金属製タイヤから伝わってきた。致命傷だ。
もうひとりは車両を躱したついでに尻餅をつき、そのままエア抜けかけの風船みたいに地表を滑っていった。もっとも好戦的な最後のひとりは、すぐに立ち上がり、俺たちに発砲してきた。
後方のカーゴに着弾する。
勘弁してくれ。中身がダメになったら、俺たちにとっての致命傷だ。
少し前。
「コー
救世主! 天神キューティ☆エアリーズ!
あたしの指示で、刑事課と組織犯罪対策課が動き出したのは20分前。
とはいえ、まだまだ人手が足りないから、警備課と地域課も回しちゃおうと計画中。
「署長! 大濠交番から応答がありません!」
よし。おもいきって、生活安全課も投入しよう。
あたしは、天神キューティ☆エアリーズというアイドルグループの西園寺ゆん。一応リーダーを務めてます。地元密着型として華々しくデビューしたあと、不本意ながらいっ
【逆噴射小説大賞2019】 唸ったスペシャル Part1
ちょっとしたきっかけからこの逆噴射小説大賞を知りまして、居並ぶパルプスリンガーたちの隙間に、呑気にも分け入ってしまったのですが、これが面白い!
詳しいレギュレーションは主催者の記事を読んでいただくとして、要約すると、「長編小説の冒頭800文字だけを書き、いかに続きを読みたいと思わせるか」が要諦のこのコンテスト。名作が次々と投稿されて目が回る思いです。読むのが追いつかない。
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夜明けにカササギが鳴いたら
その災害は、深夜に発生した。
俺のもとに連絡が来たのは、3時を少し回ったころだ。現場はここから80キロほど南にある田舎街だそうだ。発生から20分。ちょうど住民たちのパニックも最高潮だろう。
俺はひとまず仕事道具をトランクに積んだ。愛車の傍らに立ち、タバコに火をつける。煙はすぐ闇に溶けていく。
遠く、ヘリのローター音が聞こえる。重みのある双発のそれは、おそらくCH-47JAだろう。南へ向かっ
スズメバチは月のない夜に飛ぶ
この島に上陸した小隊は、すでにほとんどがやられたに違いない。小石を投げれば届く距離に、俺の監視役だった宮崎一等陸士が、瞼を広げたまま転がっている。
空に月はない。当たり前だ。新月を狙って上陸したのだから。
迂闊に動けばヤツらに捕捉される。濡れた岩場をくだるために、つま先で次の岩を探し、少しづつ体重を預ける。まるで海藻になった気分だが、あながち間違ってはいない。海藻になりきらなければ、銃弾を浴
その船の名は「ワン・フー」
発端は、6日と12時間前だ。
「目視できるようになったぞ」
そのとき、ロイからの連絡があって、僕とファティマは操舵室へ入った。
「あのあたり、見える?」
サブシートのネハが親切に指差してくれた。確かに、恒星から届く光を反射して、かすかに白い物体が見えた。
「ああ、見えた。確かに古そうだね」
僕たちの船が恒星間航行中に、要救助信号を受信したのは偶然だった。それは余りにも弱く、非常用バッテリ
シネマ・コンプレックス
林立するモニター群と、雑多な配線と、とりあえずで置いたら定位置になってしまったであろう生活用品と、それらの間を埋めるように堆積したホコリ。あたしは今そんな部屋に立っている。なんか懐かしいと思ったら、そうそう、小学二年生のときに友達だった、中村ん家の匂いに似ている。
「ボクが選び、そして選ばれたキミはここへ来た」
マッドサイエンティスト検定があったら不合格になるくらい爽やかなルックスのくせに、