なるべく「遠い」世界に「飛ばす」~アナロジー思考

本記事は「アナロジー思考 構造と関係性を見抜く」細谷功 東洋経済新報社を読んだアウトプットです。

アナロジー思考とは「類推」のことで、2つの世界の比例関係を利用した思考法です。

同じ著者の「具体と抽象」を踏まえて読むと、具体と抽象を行き来できる“振れ幅”の大きさの重要性が分かった。日常の様々な物事に広くアンテナを張っておいて、構造を見つけ出し、なるべく「遠い」世界に「飛ばす」とまだ世の中に知られていない新しい発見をすることができる。

ビジネス場面でのアナロジーの3つの目的

1.「自分の理解」→転職したときも一から勉強する必要はなく、部分的に分かれば類推できキャッチアップが早くなる。
2.「他人への説明」→たとえ話
3.「新しい発想」→知識を基にした発想力は有限であるが、思考力を基にした発想力はやり方次第で無限の可能性がある。「組み合わせる」だけでなく「借りてくる」が重要。「かばん」と「予算管理」のように、一見全く異なる世界の間でのアイデアの「貸し借り」ができる。

アナロジーは演繹的推論や機能的推論とはことなるアブダクション(仮説的推論)の一つである。科学的発見、創造的思考に役立つ。

借りる先の世界は、借りてくる世界から遠ければ遠いほど斬新な発想が得られる。

一つの世界で既知のことを利用して、他の世界での未知なものに対応して知見を得ることができる。

アナロジーの基本~「構造的類似」を見つける

「類似」には大きく表面的類似と構造的類似がある。構造的類似とは、複数の事象の「関係性」に関する類似のことであり、表面的類似に比べて見つけるのが難しい分その価値も大きい。

台風とかけて鍋と解く。その心は? ・・・・・・ぞうすい
羊とかけて義理人情が嫌いと解く。その心は? ・・・・・・じんぎすかん

この謎かけは、音が共通なだけの「表面的類似」

のれんとかけてセールスマンと解く。その心は? ・・・・・・外に出てれば営業中

これは構造的な類似に近い。

構造的類似を見抜くために、関係/構造の基本パターンを頭に入れておく必要がある。そして、一般化やモデル化によって共通点を見つける。表面的類似と構造的類似の違いを意識すると、身の回りの様々な事象の関係性が違った形で整理できる。

アナロジーに必要な抽象化思考力

抽象化には大きく3つの側面がある。
①一般化:上位の分類の言葉に置き換えていく(上位概念=抽象レベルが上位の分類単位)
②単純化:目的に応じて「枝葉」を切り捨てていく
③構造化:個別の具体的事象間の関係や構造を明らかにする。構造上の類似点を発見して単純化を行う

アナロジーを最大限活用するためには、ベース領域とターゲット領域の間の共通点と相違点をうまく見極めた上で、最適のベース領域(借り先)を選択することが重要。
①共通点が、ターゲット領域での目的に合致したものであること
②共通点が適切な抽象レベルにあること
③共通点と同時に、目的とするターゲット領域での利用方法に関連する相違点も併せて考慮すること
 →「どの共通点と相違点が今考えようとしている内容に大きなインパクトを与えそうか」という要因をうまく読むことが重要

アナロジーの活用

・科学的発見における活用~発展、発見、評価、解説 違う分野からのひらめき

・ビジネスにおける活用~進んでいる世界から遅れている世界への転用 事業特性をとらえて「一見違うが実は構造的に似ている業界」を探すことが肝要

・歴史の理解~表層的な事件でなく、構造によって把握すると未来予測ができる

・個人の世界においても、組織のノウハウを活用できることは多い

・抽象化思考力を鍛えるためには、いわゆる「すぐに役に立つ」ほんとは真逆の読書が有効。即効性がない=抽象度が高い。また、常にすべての事象を自分の関心に関連付ける姿勢が重要であり、常にアンテナを張っておく必要がある。


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