アルカトラスのニューアルバムがリリースされる話
なんと7月にアルカトラスのニューアルバム『Born Innocent』がリリースされるそうだ。5月の頭には、すでにPVも含めて情報が出回っていたので、自分のアンテナの低さを反省することしきり。いや、別に今知っても問題ないか。
アルカトラスは、1983年にヴォーカルのグラハム・ボネットが結成したバンド。ギターがイングヴェイ・マルムスティーンということでファンにはすっかりおなじみのメロディアスなハードロックをプレイするバンドである。イングヴェイが参加したのはアルバム1枚のみで、なんとなく彼の踏み台にされたイメージもあるのかもしれないが決してそんなことはなく、イングヴェイ脱退後にスティーブ・ヴァイが参加して作られた2枚のスタジオ・アルバムも良盤である。
スタジオ・アルバム3枚のみでフェードアウトしていたかに見えたアルカトラスだが、肝心要のグラハム・ボネットは、再結成するようなしないような、曖昧な動きを続けてきた。メンバーを集めて来日公演も行ったりしていたが、あくまでもライブ活動にとどまり、これまで新規にスタジオ・アルバムをリリースすることはなかった。グラハム・ボネット自身も相変わらずの渡り鳥シンガーで、いろんなところに顔を出しながら、ひとつのバンドに定住することなく活動を続けていたような感じだ。最近ではマイケル・シェンカー・フェストへの参加がしっくり来てたのかな。
そんなグラハム・ボネットだが、ここへ来てなぜかジョー・スタンプを伴ってアルカトラスとしてのライブ活動を始めていた。イングヴェイフォロワーとしてのジョー・スタンプをずっと見てきたメタルファンとしては、これは実に微妙な感触の再結成だった。イングヴェイの代わりにスティーブ・ヴァイが加入するのは、まったく別のスーパーギタリストを迎え入れるという意味で、サウンドの変化の好き不好きはあれども、その流れは理解できた。しかしジョー・スタンプとなると、ネオクラシカルファンの中でも、「はいはい、イングヴェイの真似っ子ギタリストね」的な受け止めが大勢を占めるのではないだろうか。少なくとも僕は、そう思わざるを得なかった。
しかし一方で、またネオクラシカルな要素を伴ったアルカトラスのサウンドが蘇ることへの期待感のようなものがあったのも事実だ。実際、ジョー・スタンプのプレイする"Jet To Jet"をYouTubeで見ることができるが、まさに思っていたとおり。ジョー・スタンプ式の、ちょっとへなちょこネオクラシカルプレイで見事にあの名曲を演奏している。あくまで代用ギタリストでしかない印象を拭うことはできないが、同時に懐かしいクラシカルなフレーズに再び触れることができた苦笑いを伴う嬉しさもあった。メタルファンの心理は複雑なのだ。いやいや、これは褒めすぎか。全然弾けてねーよ、ジョー・スタンプ。
前フリが長くなった。しかし、今度は本物の再結成だ。アルバムをリリースするとなると、とりあえず金集め目的のツアーだけ再結成とは違って、その本気度が伝わってくる。ギタリストはなんと、件のジョー・スタンプだ! (ババーン)
ギタリストの選択だけちょっと笑ってしまったが、PVを見て驚いた! まったくもってジョー・スタンプ節。ネオクラシカルなセンスをいかんなく発揮した彼らしい楽曲に仕上がっている。残念ながらグラハム・ボネットのヴォーカルに衰えを感じるのは仕方ないし、ジョー・スタンプの切れ味の悪いギターは相変わらずだ。しかし、僕は敢えてこのアルバムを支持しよう。今また、アルカトラスのニューアルバムを聞けることを素直に喜びたい。どこをどう聞いても往年のソリッドなプレイは存在しないが、もうそこは求めない。これで最後かもしれないアルカトラスのアルバムを楽しみに待ちたい素直なファンでいようではないか。
なお、新曲のタイトルは"Polar Bear"。なぜかネオクラシカルでホッキョクグマの歌だ。これは新しいジャンル、クマメタルの夜明けに違いない。それにしても、何度聞いても野暮ったいぜ、ジョー・スタンプ。
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