ふう
いつ拾ったのかも忘れたフウの実。
形のせいなのか分からないけれど思い出が詰まっている感じがする。
ふう。
歳のせいなのか、最近はランダムに色々な昔の事を思い出す。
まだ「走馬灯のように」・・・ではないので大丈夫なのだろう。
昔、親が入所していたホームに軽い痴呆症のおじい様がいて
彼はまるで、このフウのような人だった。
80歳は過ぎていたろうか、まだまだ尖っていて
昔話が多い人だった。
家族の方いわく、昔からの性分に痴呆症が輪をかけているらしかった。
そりや80年も生きていれば嬉しい事も悲しい事も
なんでもない普通の生活の思い出もいっぱいだったろう。
波風が立つ日もあっただろう。
凪の日もあっただろう。
そんなのをまだお腹の中にいっぱい抱えていたのかもしれない。
もうひとり、農水大臣と呼ばれていたおじい様もいて
彼はそこそこの会社でそこそこの職位で
仕事をしていたらしいけれど
もう、そんな片鱗も見せず
ただ花壇の世話と草取りに熱中していた。
もくもくと草を抜く姿は気高くもあった。
どちらのおじい様も硬い殻の内側は
実は空洞じゃなくて
まだ、みっちり実が入っていたのだろう。
人生ごくろう様だ。
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