"だいこんのはな"と"ももいろ"の話
じっと見つめる。
だいこんの花の可愛さを知らないわけではない。
薄い桃色にそっと染まっている。
だいこんと言っても葉大根の品種だと思うけれど
あのだいこんの重量感のある姿とはかけ離れた姿。
伸びすぎてしまって頼りない細い茎のせいで
風にゆれる姿が愛らしい。
指で少しばかりつついてみる。
ゆらゆらする切れ込みの深い薄い花びらも
地味ながら見応えはある。
日本語の"いろ"を表す表現はいかにも日本らしい。
桜色(さくらいろ)
薄桜(うすざくら)
桜鼠(さくらねず)
鴇鼠(ときねず)
虹色(にじいろ)*七色の虹色ではありません。
珊瑚色(さんごいろ)
紅梅色(こうばいいろ)
薄紅(うすべに)
あげればきりがない。
なかでもこの付近で好きな色名は<淡紅藤(あわべにふじ)>
ももいろと言うより紫に寄っていった色だけれど
なんとも含みのある色がいい。
「こうでなければいけません」と強い主張こそしないけれど
静かで奥底に控えめな強さを秘めた色だ。
植物に直接的な反応があるわけではないけれど
じっくり見ていれば
色々な事を語りかけてくる。
手入れをサボらないで!
水がもっと欲しいんだけれど!
お腹が空いて元気がでないよ!
きちんと声が聞こえてくる。
かくして下僕である自分はいそいそと動く。
リクエストに答えてあげて満足してくれれば
きちんと反応してくれる。
可愛いものである。