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あかいりんご③|大人のおとぎ話|
ここまでのお話は、マガジンをお読み頂ければ幸いです。
「♬わたしはうさぎ鳥ぃ〜
赤いりんごの運び屋さん!
どこまで今日は行こうかなぁ〜♬」
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赤いりんごを頭にのせてうさぎ鳥は機嫌良く進んでいます。
飛んだり歩いたりしながら
少しずつ変わる森の景色にワクワクしています。
「こんなに奥まで来たのは初めてだけど
なんだか寒くなってきたなぁ」
おや?雪ですよ。うさぎ鳥は大丈夫でしょうか。
その先は景色が一変して雪だらけです。
「困ったなぁ〜、雪は苦手なのに」
それはそうです。南の国の妖精ですから。
と、目の前の雪の塊がモコリと動きました。
「うさぎ鳥さんとは珍しいですね。」
雪が喋った?よく見るとそこにいたのは雪うさぎでした。
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うさぎ鳥はりんごの記憶を話しました。
そう、あの妖精のマレーナが魔女に眠らされてしまった話です。
「そうですか。ではここから先は私が引き受けましょう。
雪の中は得意ですから。」
幸せの赤いりんごはうさぎ鳥から雪うさぎへと託されました。
雪の中、真っ白い雪うさぎは赤いりんごを背負って
更に森の奥へ進んでいきました。
りんごを持って進む雪うさぎはとっても嬉しそうですね。
息も上がっているようです。
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「フフッこんなことが出来るなんて」
雪うさぎは妖精ではありません。
自分が生まれた森で生きて、一生を終えるはずでした。
妖精よりずっと短い一生を。
それなのに妖精の姫を助けるお手伝いをしていることが
嬉しくてたまらないのですね。
「妖精さん達に比べたら、少ししか運べないけど
お手伝いできるのはうれしいな。」
と、思いつつも
おや?様子がおかしいですね。どうしたのでしょう。
自分の森ではどこに食べ物があるか知っていますが
今はずいぶん遠くへ来ています。
食べ物を探すのも一苦労。
雪うさぎは頑張りすぎて疲れてしまったようですね。
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その時です。「あれ?なんだろう?」
雪うさぎは森の奥が優しく光っているのに気付きました。
疲れているのも忘れて、行ってみると雪原に小さな泉がありました。
そこから優しく温かい光が放たれています。
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その美しさに見惚れていると、光の中から真っ白い鳥が現れました。
「おや、雪うさぎさん。こんな奥で会うなんて珍しい。」
「鳥のニューニーさん、ここは何?」
ニューニーの話によると
ここは雪の森と他の森を繋ぐ秘密の場所らしいのです。
雪うさぎは白い鳥にりんごを託す事にしました。
この雪の森がどこまで続くか分からないし
雪の中では紫のりんごは見つからないからです。
白い鳥さんに託された赤いりんご。
次はどこへいくのでしょう。
文原作:光川てる/ミツカワテル
スクリプター・作画:keigoM