【映画】ビーキーパー
好評につき観てみましたが最高でした。
ジェイソン・ステイサムの映画は過去『スナッチ』しか観ておりません。
監督のデヴィッド・エアーの映画も『フューリー』だけ。
映画は大変シンプルで、その原理は以下の二点のみ。
-悪いやつはやっつける
-悪いやつをやっつけるのを邪魔するやつもやっつける
一応、それなりに悪いやつでないと殺さないような感じになってはいるのですが、何人か巻き添えで罪のない人が死んでるような……
主人公クレイは養蜂家で、その近寄りがたい雰囲気を恐れることもなく受け入れてくれた老女に感謝を述べます。
ところが老女はセキュリティソフトを偽装した違法プログラムの罠にかかり、特殊詐欺グループに電話してまんまと全財産を騙し取られてしまう。
絶望して自殺した彼女の娘がFBI捜査官として事件に関わりますが、クレイは詐欺グループのコールセンターに乗り込んで爆破。
ここまでで映画の冒頭10分か15分ぐらいではないかと思います……!!
以降は詐欺グループを陰で操る大企業の経営者を狙って次々と攻撃をしかけていきます。
クレイはビーキーパー(養蜂家)と呼ばれる謎の組織の出身者であるために異常に強く、たいていの敵は素手でぶちのめし、武器を持っていれば奪い、トラップをしかけては悪人を次々と葬っていきます。
ビーキーパーというのが暗号名っぽく用いられているけど実際に養蜂をやっていて、スズメバチ退治もハチミツ製造も行っているのですがそれがなんとなく殺し屋の生活っぽいのがカッコ良くていいですね。
映画の冒頭では人類社会とハチとの関係を語る古い図像などが登場して意味ありげですが、正直そこまでハチ関連が映画に関わってないような気もしました。
一応、クレイの行動原理をハチの世界になぞらえたりといったセリフはあります。
裏社会では「養蜂家」は知られているらしく、それを怒らせたらヤバイ、と悪人がビビる面白さもありましたね。
ただ、ハチが悪人を襲う場面ぐらいあってもいいかなと思ったのですがそういう使われ方はしなかったので、それは残念です。
作中で主な悪役とされるデレクなど、基本的に悪役がとても憎らしいのが良いです。
ただデレクはオリエンタリズムに傾倒している様子があり(いけすかない金持ちのイメージなんでしょうね)、社内に設置したスシバーで「オートロ」「ウニ」の話をして「アリガトゴザイマス」とかスタッフに声をかけていてちょっと好感。
スシに理解ある外国人を高く評価してしまうのが日本人…… ウニをウニって発音してるのはエライと思ってしまいました。
コールセンターの場面ではブラックライトと巨大ディスプレイをバックにリーダーがノリノリで詐欺活動を盛り上げる、いかにも現代的な悪の組織で楽しいですね。
リーダーの一人はクレイが来ても「このコールセンターは停められない」とか騒ぐのでコールセンターマネージャとしては同情を……まったくできなくて、最高です。
日ごろ特殊詐欺被害の報道に触れては、末端の実行役しか検挙されない状況に腹がたつ昨今、指示役を中心に血祭りにあげていくクレイには心で拍手してしまいます。
もちろん、上で説明したように、そもそもが詐欺被害に遭った女性が自殺したことがクレイを怒らせているわけですから、犯人を殺すのは完全に過剰な対応でありそれ自体犯罪です。
しかし詐欺の立証すら難しく、自殺の原因を作ったと判断されても死刑にはできないので(米国だからほとんどの州に死刑もないし)、だからこそ単身敵地にのりこむクレイを応援したくなるポイントになっているわけです。
母を失ったFBI捜査官が一応のヒロインとなっていますが彼女は犯罪者でもあるクレイを追うことになり、後半は直接絡むこともありません。
ただラストで重要な役割を担いますが……
このラストが最高で、思いがけないタイミングでクレジットが流れ始めた時「な、なんて素晴らしい映画なんだ!!」とガクゼンとしつつ感動してしまいました。
デレクの母親という一種のラスボスが結構深い芝居をしていたり、母と子の関係という点でヒロインと重なることがあったり、そういう部分も意外と丁寧であったように思います。
しかし、敵にとってはエイリアンより怖い凶悪生物でもあるクレイの異常な強さが悪人をバッタバッタとやっつける、その痛快さに特化した映画、最高でした。