【TV】マスターズ・オブ・ザ・エアー / ブラッディ・ハンドレッド
『ザ・パシフィック』は未見ですが『バンド・オブ・ブラザース』はだいぶ前に観ました。
地上戦の生々しさで発展してきた『プライベートライアン』以降の戦争ものの流れがありますが今回は空戦もの。
空戦ものというと昔『メンフィス・ベル』は観ましたがそんなに興味を持ったことがない分野かな。
特に米軍の爆撃機の話ということになると、デカい飛行機で爆弾落としに行くだけでしょ? っていうイメージ(日本を爆撃したB-29の無敵ぶりのせいかも)だったりしてたのもあります。
しかし今回の『マスターズ・オブ・ザ・エアー』では地上戦と変わらない凄惨さが機上でも展開されていることがよくわかりますし、撃墜されて脱出しても捕虜になることが免れないという危険さも描かれます。
映像的にはなんといっても、雲霞のごとき爆撃機や戦闘機が広大な空に展開するスケールの大きな美しい飛行シーンでしょうか。
直後に地獄のような戦闘シーンに移るわけですが。
簡単に生き残れないであろう昼間爆撃に挑み、生還しても出撃命令は何度も出て、帰国までに必要な出撃回数も増やされるというあたりで、戦闘の推移が感じられる物語になってますね。
捕虜になって送り込まれるドイツ軍収容所(しかも『大脱走』の直後!)の描写、終戦が迫って徒歩での移動を余儀なくされることで、主人公たちだけでなく敵の将兵もツラそうになっている様なども興味深いです。
ドイツ空軍がよく出るなあと思ってると、次第にSS中心になっていくあたりも戦況の変化が感じられるところです。
さすがにドイツ戦車は出てこないですが、装甲車とかキューベルワーゲンは普通に出てきます。
あと米軍のM-4シャーマン戦車もちょっと出ます。
ルフトヴァッフェ(ドイツ空軍)好きはドイツ軍の戦闘機とかあまり映らなくて物足りないかもしれないですね。
群像劇でいろんな人物が出ますが、イケメンのオースティン・バトラーもいいんですがその相棒みたいなカラム・ターナーのカッコ良さが際立ってると思いました。
アンソニー・ボイル演じるハリー・クロスビーは、嘔吐しながら機をナビゲーションしてミッションを成功させるところとか最高に魅力的ですが、早々に出世しちゃって出撃しなくなったりするのは少々残念(史実だからしょうがない)。
また欧州侵攻作戦で初めて黒人兵士が実戦投入されたのですが、そのあたりもきちんと描いています。
欧州侵攻はドラマのかなり大詰めで始まるので、まだまだ描くことがあるんじゃないのという感じでエピソード9で終わるのですが、全体の構成としては大いに盛り上がってのハッピーエンドということで満足度は高いです。
まあ、戦勝国のドラマはハッピーでいいよねェ、といつも屈折した気持ちになるのですが……
終盤でユダヤ人などが収容されていた強制収容所で虐殺が行われたらしい衝撃的な描写、末期のドイツが若者や老人を戦場に駆り出す無謀などもありますが、掘り下げてはいないので、戦争の新たな実相を感じるというところまでは行っていないかな。
長めのエピソード9で終了するのと同時に、ドラマのモデルとなった第100爆撃群についてのドキュメンタリも配信。
なるほどこれをドラマにしてああなったのか……と、よくわかるドキュメンタリ。
ドラマのラストの感動的な箇所も実際にあったことであることが示されます。
実在の人物をモデルにしていることで、ドラマとしては掘り下げきれない部分があったかもと思わなくもないです。
でも、ドラマを観てからドキュメンタリでWWIIについて知ることができる構成自体は有益だし、万人におすすめできます。