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【TV】サニー

西島秀俊主演で日本を舞台にした海外ドラマ、しかもSFということで非常に興味を惹かれる作品でしたが、本編はそれ以上に意外性に満ちた傑作ドラマでした。

ドラマの骨子はロボットテーマということになるのでしょうが、オープニングの曲からして、渥美マリの『好きよ愛して』(って、私は知らない曲でしたが)という昭和40年代の曲を使っており、レトロフューチャーといって良い独特の世界観です。
外国の人が観たら、現代の日本ってこんな国なのかなあと思ってしまうのかも。
というか、京都が舞台なので、関東にいる私には、京都がこんな土地なのかなとぼんやり思ってしまうぐらい、微妙にリアルでちょっとファンタジーが入っている面白いセンスです。

家庭用ロボット、ホームボットが実用化されており、スマートフォンのようなものはあるのですがiPhoneやAndroidとは結構違う、引き出し式ディスプレイのついたデバイスが普及している世界なので、我々の現代とは並行世界のような位置付けなのでしょう。
そんな世界で、危険なプログラムを探索するうちに入り込むのは「ヤクザ」の世界。
このあたり、結構サイバーパンクなドラマでもあります(ウィリアム・ギブスンのサイバーパンク小説に欠かせない存在がヤクザです。『JM』のたけしです)。

しかし、このヤクザの描写には気合が入っていて、作中で亡くなる親分は寺田農、その娘がYouというキャスティング。
寺田農は4月に亡くなっているので、その前に撮影されたようです。
さすがの迫力でした。
Youも、声はともかく見た目の怖さが良かったです。
他の子分に後継ぎの座を奪われてアセって深みにはまっていく様はよく表現されてました。

ヒロインのもとに送られてくるホームボットのサニーとヒロインの難しい関係、それを開発したらしき亡き夫マサ(西島秀俊)の思いが交錯していきます。
ヤクザとロボット研究施設の両方が普通に出てくるこの感じ、非常に気に入りました。
ロボットと人間の関係を問うSF要素もかなり掘り下げがあり、全10話の中での8話と9話にはかなり驚かされます。

ヒロインのスージーを演じるラシダ・ジョーンズはクインシー・ジョーンズの娘だそうです。
同じApple TV+の『サイロ』に出てたのは気づかなかったな。
日本語も学ばず日本で暮らし、家族を亡くして呑んだくれて迷走する主婦の役を生々しく演じてます。
さらにマサの母親、ジュディ・オングが京都弁と英語の見事なバイリンガルで複雑な役をこなすし、そこに絡む國村隼もさすがの渋さでした。
シブい英語のナレーションが流れて、英国人の俳優さん出てたっけと思ったら國村隼だったので驚きましたね。
普及しているモバイルデバイスは優れた翻訳機という設定で、外国人同士が母語を話していても自然に会話できることになっているのですが、俳優の英語力は映像に反映しますので、そこも面白いです。
西島秀俊ファンは、出番が意外と少なくて残念かもしれないですが、8話では彼を堪能できることでしょう。

でも俳優の中で印象的だったのは、ヒロインを助けることになる日本料理屋の店員、ミクシーを演じるアニー・ザ・クラムジーです。
本職はミュージシャンらしいのですが、今回しっかりしたサポート役でありながら感情の豊かさを見せる重要な役柄で、とても魅力的なキャラクターを構築しました。
彼女が『好きよ愛して』を歌っている動画を見つけました。
最高です。
https://youtu.be/r4xLjoWyklY?si=-WwasH_aXNz5J0sP

作中のホームボットはローラー走行と思しき移動方法なので、R2-D2より階段の昇降が無理そうだなと思ったり、そのままベッドに入ったりするけど入浴っていうか清掃する必要あるんじゃないって思ったり、そのあたりは疑問が残ったりはします。
でも、顔面がディスプレイになっててグラフィックで感情表現したり、柔らかそうな手で料理している描写に説得力があったり(でも手を洗ってるのか気になるw)、家庭用ロボットのディテールにはそれらしいところも多かったです。

そして上記した、8話と9話の驚きの展開と掘り下げ……
最終回はクリフハンガーというわけではないですがまだまだ続きがありそうだし掘り下げ余地が大いに残っているので、これはぜひとも第2シーズンを作ってもらい、現代的なAI考察を示す一大シリーズとなってもらいたいと願う次第です。

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