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【TV】機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム

これは評価が難しい……
好きな路線であるだけに厳しい意見を述べることになりますが、基本的にマニア的な視点での独り言と思っていただければ。

キャラクターを含めたフォトリアルな3DCGでガンダムの外伝を描くという路線は、MS Iglooというシリーズが2000年代にありました。
ミリタリーもの、メカものとして「リアル」なガンダムの極北を目指そうとの方向性で、私も大好きなモチーフでした。
しかし、ひととおり観たのですが、こういうものをうまく作るには技術と予算がまだまだ必要で十分ではないと思わざるを得ませんでした。

その問題は、技術も予算も成熟したかに見える2024年の本作においても言えてしまっていました。
人間ドラマは人間に演じさせろって思ってしまいましたね。
じゃあアニメはどうなのって話なんですが、ファーストガンダムには、監督による優れた画面設計と編集、安彦良和による素晴らしい作画、声優陣(と、音響監督、それとおそらく富野監督)の素晴らしい演技によって、人間ドラマがここにあると感じさせる素晴らしさがありました。
絵が全然動いていないのに、そのことにも意味があると思える演出が行われていて説得力がありました。

その点、MS Iglooも本作も、動かなくていいところで人物がフラフラ動いたり(セル画みたいに微動だにしなかったら変なのはわかるんですが)、視線での演技がもっとあるべきと思ってもなんとなく目が死んでいたりと、人間の演技がどうしても不十分に感じられます。
主人公のソラリ大尉はそんなことなくて、十分生きているように見えたのですが、それ以外のキャラクターはなんとなく、CGで作ったフィギュアだったんですよね。
ピクサーだと、キャラクターごとに別のアニメーターが動作をつけていて「演技」を成立させているらしいのですが、本作はどうなのでしょう。
そのへんの制作体制は知らないのですが、全体に演技力不足との感覚が拭えないです。
そうすると物語の説得力があるんだかないんだかよくわからないままに話を眺めることとなってしまいます。

MS Iglooでは、白人の容姿を持ち米国人のような仕草をするキャラクターが日本語を喋っていて、唇の動きもそれに合わせているのですごく違和感があったのですが(宇宙世紀では日本語が一般化しているのではと思いつつも)、本作では英語で制作されていたようで、そういう問題はありませんでした。
私は英語音声、日本語字幕で鑑賞しました。

メカ関連については、もうスピンオフを作るたびに「一年戦争の時は実はこういうモビルスーツもありました」ってどんどんバリエーションを増やしていて、ファーストガンダムの基本設定と物語を破壊しているんじゃないかと思える状況が続いていますので、そこに文句を言ってもしょうがないとは思うものの……
ガンダムとジムは全体にまるっこくて、連邦のモビルスーツらしさに欠けるなって思いました。
メカについては演出にも問題あるように思いましたね。
モビルスーツ、特にガンダムとジムの仕草が人間みたいで、サイコミュを搭載しているとかで操縦系統がザクと違うっていうのであればそれもアリかもですが、多分そうではないのではないかと。
ニュータイプの操縦ってことで、後ろを見ないで撃てるとかそういうのがいいんじゃないかと思うんですよね。
ビームサーベルがスター・ウォーズのライトセイバーと全然違う感じなのは良かったです。

あとこれはガンダムでいうのは無粋なんでしょうかね、敵同士が無線で会話する異常さは。
ファーストではそんな描写はなくて、ニュータイプ同士ならテレパシー的にコミュニケーションができていて、Zガンダムでは「モビルスーツの装甲が触れ合っていると会話できる」とかの不思議な設定はあったものの、敵同士ではお互いのことがわからないっていうのは結構重要だったと思うんですよね。
だってシャアとアムロってお互いのことを知らずに戦闘を繰り返して、あるときその実像を知ることになるのってドラマ上の重要なポイントでしたからね。
本作にもその要素があっただけに、相手のことを知ったらいきなり無線通信できるようになってるように見えたのは、イマイチ納得できなかったです。

不満も多いですが、3DCGが描く引き絵の美しさは素晴らしく、どれだけ手間と費用をかけたのだろうと驚かされることも多かったです。
牛がいる牧場にザクタンクが入ってくるところや、路上をいく装甲車など、素晴らしかったですね。
人間以外の描写はもはや十分以上にそれらしくて、リアリティも美しさも感じられました。

戦争の大きな状況とソラリ大尉の個人的な問題との関係は、わかるところもあるし、でも結局個人の問題に集約してしまうのってどうなんだろと思ったりもしました。
ラストの彼女の姿には、わかるけど、これって自然な結論なのかなあと思いましたね。
ほかのキャラクターにはそうした掘り下げはあまりありませんでした。
これは、24分かける6話という短さゆえに難しかったのでしょうが、ものを考えている人物がソラリひとりに見えてしまうことで、大状況と個人の間に乖離があるようにも見えました。
途中から出てくる基地の少佐(ヒゲの人)あたり、描きがいのある人物なんですが、脚本の都合で動いてるように見えてしまいましたね。
実際、俳優の演技力でそこに深みを持たせることが映画ではよくあるのですが、本作だと演技力がそこまでないので、よくわからない人だなあと思っているうちに終わってしまいました。

実写映画を作る予定があるそうなので、そのときは良い俳優にがんばってもらえると思い、期待して待とうと思います。

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