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【SF】2025オールタイム・ベストSF応募(海外短篇・海外作家・編)
https://www.hayakawabooks.com/n/n1761af76b5bf
SFマガジンのオールタイム・ベストの海外短篇では以下に投票しました。
1. 「鏖戦」グレッグ・ベア
2. 「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」テッド・チャン
3. 「クローム襲撃」ウィリアム・ギブスン
4. 「ミラーグラスのモーツァルト」ブルース・スターリング&ルイス・シャイナー
5.「接続された女」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
サイバーパンク色が強い結果となりました。
ベア「鏖戦」は最近、「凍月」とのカップリングでハードカバーが出ましたが、SFマガジン掲載時に読んで、『80年代SF傑作選』に収録された時も読んで、今回新たに出版された書籍でも読みました。
何度読んでもよくわからないのですが、とにかくカッコいい。
当時はサイバーパンクの装飾的な文体の延長線上かなという感じもあったのですが、今読むと絢爛豪華ながら実にずっしりした小説で、オールタイム・ベスト作品だと感じました。
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は論文調のタイトルと裏腹に、AIバーチャルペットを育成する優しい物語で、それでありながらAIと人間の関係に対する洞察の優れたチャンの名作です。
人類はこれを目指してAIを育成すれば良い、というのは少々オプティミスティックかもしれませんが、進むべき方向性を示しているのは確かです。
「クローム襲撃」は、長篇部門で『ニューロマンサー』に入れられなかったのでこちらに。
『ニューロマンサー』の一番美味しいところを凝縮していて、サイバーパンクの最もコアで原型的な作品です。
主人公がムダに女々しい、ハードボイルド感もなんか良いです。
「ミラーグラスのモーツァルト」もサイバーパンクの重要作です。
ファルコの「ロック・ミー・アマデウス」そのまんまで、おそらくシンクロニシティ(ファルコの方が後のはず)ということでしょうが、モーツァルトの80年代におけるポップアイコン性が強く感じられます。
小説としてはタイムマシン大乱戦といった感じになって終わりますが、搾取と文化汚染による植民地主義の批判になっていて、侮れません。
「接続された女」は「サイバーパンク以前のサイバーパンク」シリーズ(そんなシリーズはないですが)のひとつ。
これはもう、バーチャルYouTuberがバーチャルではなく文字通り受肉した現代そのものが描かれており、かつ強烈な恋愛ものでもあるという名作ですね。
それ以外の候補も、まあ似たようなものです。
「あなたの人生の物語」テッド・チャン
「理解」テッド・チャン
「ルミナス」グレッグ・イーガン
「愛はさだめ、さだめは死」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
「残虐行為展覧会」J・G・バラード
「変種第二号」フィリップ・K・ディック
テッド・チャンは特に評価の高い2作ですが、「バビロンの塔」「地獄とは神の不在なり」「七十二文字」など、宇宙の基本設定が違う作品の系統なども好きで、どれも最高なんですよね。
「商人と錬金術師の門」の決定論と「不安は自由のめまい」の量子論と、全然違う宇宙観なのにいずれもそこにアイディアを入れて完成度高く小説にするのもスゴイ。
チャンと並び称される現代最高のSF作家イーガンだと、なんといっても「ルミナス」ですね。
数学体系が異種知性の存在を示唆する、って驚きのアイディアが短くまとめられているカッコ良さ。
「愛はさだめ、さだめは死」のシュルレアリスム詩のようなセンス、「残虐行為展覧会」の難解な濃縮ぶりも捨てがたかったです。
ディックは自慢の蔵書「ザ・ベスト・オブ・P.K.ディック」でいっぱい読んだけど、コレっていうのは「変種第二号」ですかねー。
映画化作品『スクリーマーズ』も結構良かったんです。
妄想を書きつけただけみたいな「電気蟻」も、それが哲学の具現化に感じられるヘンテコさで魅力でしたが、思えば『マトリックス』の元ネタのひとつなんでしょうね。
そんなわけで海外作家は以下です。
テッド・チャン
グレッグ・ベア
ウィリアム・ギブスン
J・G・バラード
アンディ・ウィアー
ほかは以下。
ルーディ・ラッカー
スティーヴン・バクスター
グレッグ・イーガン
ジョン・スコルジー
ラッカーとバクスターのことを最近皆さん忘れてないですか……って思いました。
ジョン・スコルジーは『老人と宇宙』シリーズと『怪獣保護協会』しか読んでいないのですが、アンディ・ウィアーと並ぶSFファン出身のSF作家という感じで親近感があるのが良いですね。
逆にイーガンは、親近感が全然持てないけどスゴイ、という感じです。
こうしてみると難解なものを好んでいるような気がしましたが、よくわからないけどカッコイイというのが好きなので、べつにわかったふりをしているつもりはありません。
短篇ならなんとか読み通せるし、再読もしやすいですからネ。
なお一般の方におすすめしやすいのは「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」「接続された女」あたりかと思います。
チャンは全般的に、SFに慣れてなくても読めるんじゃないかなーと思うんですが、どうなんでしょう。