雑談
『雑談力が上がる話し方』という本をご存じですか。
明治大学の齋藤孝先生の本です。
私は、雑談が苦手です。
そこで、この本を読み「そうか、オチはなくていいのか。ほんの短い時間の会話を楽しめばいいのか」などと一人納得して実践してみたことがあります。
小さなスーパーにて
場所はいつも利用している近所のスーパー。私は食パンを持ってレジに並んでいました。そして、私の順番がやってきました。
勇気を出して「あれ、お痩せになりましか?」とレジを打つ女性に声をかけました。
レジの女性は「あら、ロクなものが食べられないんです。食べさせてください」と応じます。
私はとっさに食パンに絡めて「じゃ、サンドイッチでよろしければ」と精一杯の機転を働かせて言うと「ありがとうございます」と笑います。
雑談力は私よりもレジの女性の方が数段上でした。感服しました。
さて、このスーパーは地元の小さなスーパーですが、隣には大手チェーンのスーパーもあります。
私はここで思いました。
“隣のスーパーで同じように声をかけてもこれほど楽しい会話にはならないのではないか。”
雑談は不要なのか
例えばコールセンターでお客さまと雑談している対応者がいたら、と私は想像します。
教育に力を入れれば入れるほど、誰もが同じ対応ができることを目標にします。
同時に、効率を求めますから、業務に不要な会話で時間を取られることを基本的には良しとしません。
もちろん、業務と関係ない話であっても、お客さまから話してきたことであれば、多少は合わせます。しかし、それで盛り上がっている対応者がいたら、指導の対象になることでしょう。
さらに、もしこちらから雑談を話し掛けたとしたら、お客さまによってはなれなれしいとか失礼だと言って怒り出す人もいるかもしれません。そんなリスクを犯して業務に関係のない満足度を高める必要があるでしょうか。
会社が大きくなればなるほど、この傾向は強まるでしょう。
なるほど業務に関係のない満足度を提供していた小さなスーパーはもうすでになく、隣の大手チェーンスーパーは残りました。今ではセミセルフレジやセルフレジが増え、人と接触する時間も機会も減りました。
コールセンターも、つぶれるほうに回りたくはありません。大手のコールセンターであれば、通話時間、保留時間、後処理時間まで秒単位で計測され、平均からどれだけ離れているかは一目瞭然です。また全通話録音が基本で、録音された通話音声を文字化する機能を持っているところもあります。何を話していたかはすぐにチェック可能です。
かくして、たとえば独り暮らしの人が何気ない会話を楽しむためには、別のサービスを対価を払って利用しなければならないのでしょう。
それは、少しさみしいことのような気がします。
では、また。